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非住宅木造の市場は、民間の推計で2024年度見込み約8,800億円から、2030年度には約1兆1,400億円(2023年度比129.7%)に広がると予測されています。 一方、着工床面積に占める木造の割合は、低層住宅以外では6.2%(2024年、林野庁)にとどまり、新設住宅着工戸数は2025年に740,667戸(前年比6.5%減)と減少が続いています。
政策面では、木材利用促進法の対象が2021年10月に民間を含む建築物一般へ広がり、2025年4月には建築基準法(4号特例の縮小)と建築物省エネ法(全ての新築で省エネ基準への適合義務)が改正されました。本記事では、2026年に工務店経営者が押さえておきたい外部環境を、出典つきで1本にまとめます。
この記事の数値について: 市場規模は矢野経済研究所の民間推計、木造率は林野庁「森林・林業白書」、住宅着工は国土交通省「建築着工統計調査」、補助制度は国土交通省・林野庁の公表資料(2026年10月1日時点)によります。補助制度・基準は年度で変わるため、最新の公表資料で確認してください。
【早見表】2026年に押さえる外部環境
| 区分 | 項目 | 内容 | 出典 |
|---|---|---|---|
| 市場 | 非住宅木造の市場規模 | 2023年度実績8,788億円/2024年度見込8,800億円/2030年度予測1兆1,400億円 | 矢野経済研究所(民間の推計) |
| 市場 | 低層住宅以外の木造率 | 6.2%(2024年、床面積ベース) | 林野庁 令和6年度 森林・林業白書 |
| 市場 | 新設住宅着工戸数 | 740,667戸(2025年、前年比6.5%減) | 国土交通省 建築着工統計調査(令和7年計) |
| 法制度 | 4号特例の縮小 | 2025年4月1日施行。新2号(階数2以上または延べ200㎡超)は構造・省エネの図書の提出が必要 | 建築基準法第6条 |
| 法制度 | 省エネ基準の適合義務 | 2025年4月以降に着工する全ての新築が対象 | 建築物省エネ法 |
| 政策 | 木材利用促進法 | 2021年10月1日施行の改正で、対象が公共建築物から建築物一般に拡大 | 国土交通省・林野庁 |
| 政策 | ZEB・ZEHの目標 | 2030年度以降に新築される住宅・建築物でZEH・ZEB水準の省エネ性能の確保を目指す | エネルギー基本計画(2021年10月閣議決定) |
| 補助 | 優良木造建築物等整備推進事業(普及枠) | 上限2億円。令和8年度第2回は2026年10月16日17時必着 | 国土交通省 |
1. 市場動向:住宅の減少と非住宅木造の伸びしろ
1-1. 住宅市場は減少が続く
2025年の新設住宅着工戸数は740,667戸(前年比6.5%減)で、3年連続の減少です(国土交通省「建築着工統計調査報告(令和7年計)」)。人口・世帯数の動きから、住宅だけに頼る経営は先細りしやすい環境です。
1-2. 非住宅木造の市場規模
| 年度 | 市場規模 | 区分 |
|---|---|---|
| 2023年度 | 8,788億円 | 実績 |
| 2024年度 | 約8,800億円 | 見込 |
| 2030年度 | 約1兆1,400億円(2023年度比129.7%) | 予測 |
※ 矢野経済研究所の民間の推計です。国土交通省「建築着工統計調査」の産業用建築物(事務所・店舗・工場及び作業場・倉庫・学校の校舎・病院・診療所など)のうち木造のものを対象にしています。
1-3. 木造率はまだ低い
林野庁の白書によると、着工床面積に占める木造の割合は、1〜3階建ての低層住宅では8割を超える一方、低層住宅以外では6.2%(2024年)です。非住宅や中高層の建物は、木造化の余地が大きい分野といえます(白書は低層の非住宅建築物の木造率を15%程度としています)。
1-4. 需要が見込まれる用途
- 介護・福祉施設: 高齢化に伴う整備・建替え(デイサービス・小規模多機能)
- 保育施設: 地域の整備計画に基づく整備(保育園の設計費用と建設費)
- 倉庫・事務所: 中小規模の事業用建物(事務所兼倉庫)
- 共同住宅: 木造アパートの建替え・新築(木造アパートの建築費)
- 店舗: ロードサイド店舗・カフェなど(ドラッグストア)
用途ごとの需要の強さは地域差が大きいため、自治体の整備計画や地元の着工動向で確かめてください。経営戦略の考え方は 工務店が生き残るための経営戦略 を参照してください。
2. 政策動向:木材利用の促進と脱炭素
2-1. 木材利用促進法(都市の木造化推進法)
2010年に「公共建築物等における木材の利用の促進に関する法律」として施行され、2021年10月1日施行の改正で題名が「脱炭素社会の実現に資する等のための建築物等における木材の利用の促進に関する法律」に改められました。主な変更点は次のとおりです。
- 対象が公共建築物から建築物一般(民間を含む)に拡大
- 国と事業者等が木材利用の協定を結ぶ建築物木材利用促進協定の制度を創設
- 都道府県・市町村は、木材利用の方針を定めることができる
詳しくは 公共建築物と木材利用促進法 を参照してください。
2-2. 脱炭素とライフサイクルカーボン
- 国は2050年カーボンニュートラルを目標としています
- 建物の資材製造・施工などに伴うCO2(エンボディドカーボン)を含め、建物の一生のCO2(ライフサイクルカーボン)を評価する動きが進んでいます
- 木材は炭素を貯蔵するため、林野庁のガイドラインに沿って炭素貯蔵量を表示できます
数値と計算方法は 木造建築のCO2削減効果 で解説しています。
2-3. 省エネ・ZEB
エネルギー基本計画(2021年10月閣議決定)は、2030年度以降に新築される住宅・建築物について、ZEH・ZEB水準の省エネ性能の確保を目指すとしています。2025年4月からは全ての新築で省エネ基準への適合が義務になりました。木造でのZEBの進め方は 木造でZEBは実現できる? を参照してください。
3. 法制度:2025年4月の改正と防火規定
3-1. 2025年4月1日施行の改正
| 改正項目 | 内容 | 工務店への影響 |
|---|---|---|
| 4号特例の縮小 | 新2号(階数2以上または延べ200㎡超)は、構造・省エネの図書の提出が必要に | 小規模な木造の事務所・倉庫でも確認申請の図書が増える |
| 省エネ基準の適合義務 | 全ての新築が対象 | 省エネ計算・仕様基準への対応が必須 |
| 構造計算が必要な規模 | 木造は階数3以上または延べ300㎡超(令和4年改正による) | 300㎡超の木造は構造計算・構造設計者との連携が必要 |
詳しくは 4号特例の縮小はいつから?・木造の構造計算が必要な規模 を参照してください。
3-2. 耐火・準耐火が求められる条件
非住宅で耐火建築物・準耐火建築物が求められるかは、建築基準法の次の3つの条文で判断します。
| 条文 | 判断の軸 | 例 |
|---|---|---|
| 第21条 | 規模(木造等で階数4以上・高さ16m超・延べ3,000㎡超) | 大規模な木造は延焼を防ぐ性能などが必要 |
| 第27条 | 用途(別表第一の特殊建築物)×階・床面積 | 倉庫・病院・児童福祉施設・物販店舗など |
| 第61条 | 地域(防火地域・準防火地域)×階数・延べ面積 | 防火地域では階数3以上または延べ100㎡超で耐火建築物等 |
用途・規模ごとの早見表は 木造の耐火・準耐火の基準、木造で耐火・準耐火をつくる仕組みは メンブレン型耐火構造とは を参照してください。
4. 補助金・税制(令和8年度)
4-1. 主な国の補助制度
| 所管 | 主な制度 | 内容(令和8年度) |
|---|---|---|
| 国土交通省 | 優良木造建築物等整備推進事業(普及枠) | 木造化に係る調査設計計画費の1/2以内+掛増し費用の1/3以内など。上限2億円 |
| 林野庁 | CLT建築実証事業 ほか | 設計費・建築費の3/10以内(特に普及性や先駆性の高いものは1/2以内) |
| 環境省 | 建築物等のZEB化・省CO2化普及加速事業 | ZEB化に資する新築・改修(住宅・工場・倉庫等は対象外) |
| 国土交通省 | サービス付き高齢者向け住宅整備事業 | 住宅の新築は1/3・上限150万円/戸 |
制度の種類と選び方は 非住宅木造の補助金の種類、令和8年度の公募時期と要件は 非住宅木造の補助金2026 を参照してください。
4-2. 税制:法定耐用年数は用途で決まる
減価償却の法定耐用年数は、構造と用途で決まります(減価償却資産の耐用年数等に関する省令 別表第一)。
| 用途 | 木造 | 鉄筋コンクリート造 |
|---|---|---|
| 事務所用 | 24年 | 50年 |
| 店舗用・住宅用 | 22年 | 店舗用39年・住宅用47年 |
木造は耐用年数が短い分、毎年の減価償却費が大きくなりますが、税額が減るのではなく費用に計上する時期が早まるものです。詳しくは 非住宅木造の減価償却 と税理士に確認してください。
5. 2027年に向けて注視する点
追い風
- 木材利用促進法による、公共・民間の建築物での木材利用の方針づくり
- 省エネ・ライフサイクルカーボンの評価の広がり(木材の炭素貯蔵の表示)
- 高齢者施設・保育施設などの整備需要
逆風
- 木材・資材価格の変動
- 大工・技能者の高齢化と人手不足
- 金利の動きによる融資条件の変化(木造非住宅の資金調達ガイド)
- 確認申請の図書・審査の負担増(4号特例の縮小)
【チェックリスト】自社の非住宅参入を点検する
- 参入する用途・規模を決めたか(構造計算・耐火規定がかかる規模かを把握)
- 構造設計者・設計事務所との連携体制があるか(設計事務所の費用と連携)
- 新2号の確認申請(構造・省エネの図書)に対応できるか
- 省エネ計算(または仕様基準)に対応できるか
- 補助制度の公募時期を把握し、着工時期と合わせて提案できるか
- 地元の自治体の木材利用方針・整備計画を確認したか
参入の進め方は 工務店の非住宅参入 完全ロードマップ を参照してください。
まとめ
| 軸 | 状況(2026年) |
|---|---|
| 市場 | 住宅着工は減少。非住宅木造は2030年度に約1.14兆円の予測(民間推計) |
| 木造率 | 低層住宅以外は6.2%で伸びしろが大きい |
| 政策 | 木材利用促進法の対象が建築物一般に拡大、ZEB・脱炭素の評価が進む |
| 法制度 | 2025年4月に4号特例の縮小・省エネ基準の適合義務 |
| 補助 | 令和8年度も木造化・ZEB・用途別の整備補助あり(要件・公募時期に注意) |
非住宅木造への参入をご検討中の工務店経営者様は、お気軽にご相談ください。
出典・参考
- 株式会社矢野経済研究所「非住宅木造市場に関する調査を実施(2024年)」(民間の調査): https://www.yano.co.jp/press-release/show/press_id/3656
- 林野庁「令和6年度 森林・林業白書」第1部 第3章 第2節 木材利用の動向(着工建築物の木造率): https://www.rinya.maff.go.jp/j/kikaku/hakusyo/r6hakusyo_h/all/chap3_2_2.html
- 国土交通省「建築着工統計調査報告(令和7年計)」: https://www.mlit.go.jp/report/press/content/kencha25.pdf
- 国土交通省「脱炭素社会の実現に資する等のための建築物等における木材の利用の促進に関する法律」: https://www.mlit.go.jp/jutakukentiku/house/mokuzou.mokusoku.html
- 国土交通省「建築確認・検査の対象となる建築物の規模等の見直し」: https://www.mlit.go.jp/jutakukentiku/build/r4kaisei_kijunhou0001.html
- 国土交通省 社会資本整備審議会「今後の住宅・建築物の省エネルギー対策のあり方(第三次報告)」(エネルギー基本計画の目標の記載): https://www.mlit.go.jp/policy/shingikai/content/001487466.pdf
- 林野庁「建築物の木造化・木質化に活用可能な補助事業・制度等一覧(令和8年度予算・令和7年度補正)」: https://www.rinya.maff.go.jp/j/riyou/kidukai/mokuzozigyou.html
- 国土交通省 優良木造建築物等整備推進事業(令和8年度): https://yuryo-mokuzou.mlit.go.jp/08/
- 建築基準法(e-Gov法令検索)第6条・第20条・第21条・第27条・第61条: https://laws.e-gov.go.jp/law/325AC0000000201
- 減価償却資産の耐用年数等に関する省令(e-Gov法令検索)別表第一: https://laws.e-gov.go.jp/law/340M50000040015

