※ 画像はイメージです
地域材・国産材で非住宅木造を建てるには、基本設計の段階で製材・プレカット業者と「材種・品質(含水率・強度等級)・量」を決め、調達を工程より前倒しで段取りすることが基本です。 地域材は一般流通材より調達に時間がかかり、割高になることもありますが、自治体の木材利用方針や補助制度、施主のPR・ESG(環境・社会・ガバナンス)の説明で価値を生みます。
制度の土台は、2021年10月に施行された「脱炭素社会の実現に資する等のための建築物等における木材の利用の促進に関する法律」(都市(まち)の木造化推進法)です。この法律は、林業・木材産業の事業者に建築用木材の適切かつ安定的な供給に努めるよう求め(6条2項)、都道府県・市町村が地域の木材利用の方針を定められるようにしています(11条・12条)。
地域材・国産材を使う3つのメリット
1. 補助制度の対象になりやすい
地域材・国産材の利用は、国や自治体の木材利用・地域材活用の補助で対象や要件になりやすい項目です。補助は「木造化による掛増し費用や調査設計費」などを対象とする設計が中心で、材料費の割高分を一部相殺できる場合があります。最新の制度は 補助金・助成金まとめ2026 を確認してください。
2. 自治体の方針・公共案件と合う
都道府県・市町村は、地域の建築物での木材利用の方針(公共建築物での木材利用の目標や、建築用木材の安定供給に関する事項)を定められます。公共建築や補助事業では、地域材の利用が評価や要件になることがあるため、公共発注を狙う工務店には差別化の材料になります。
3. 施主・地域へのPR効果
「地元の木で建てた施設」は物語性があり、施主のブランディングや地域貢献の説明に使えます。林野庁の「建築物への木材利用に係る評価ガイダンス」(2024年3月)も、評価項目に「森林資源の活用による地域貢献」や「持続可能な木材の調達」を挙げています。炭素貯蔵量の表示と組み合わせると、ESGの情報開示の材料になります(木造建築のCO2削減効果と炭素貯蔵量の計算方法)。
押さえておく制度|都市の木造化推進法とクリーンウッド法
| 制度 | 中身 | 工務店・施主への意味 |
|---|---|---|
| 都市(まち)の木造化推進法(2021年10月施行) | 公共建築物等木材利用促進法(2010年施行)を改正。対象を建築物一般に拡大 | 民間の非住宅も木材利用促進の対象 |
| 同法 11条・12条(都道府県方針・市町村方針) | 地域の建築物での木材利用の方針を定められる | 自治体の方針に沿う提案がしやすい |
| 同法 15条(建築物木材利用促進協定) | 国・自治体と事業者等が、建築物での木材利用の構想と支援について協定を結べる。国は協定の内容を公表 | 施主(建築主の事業者)が協定を結び、木材利用を対外的に示せる |
| クリーンウッド法(2017年5月施行、改正法は2025年4月施行) | 合法に伐採された木材の流通・利用を進める法律。改正で川上・水際の木材関連事業者の合法性確認が義務化 | 調達する木材の合法性を確認・記録できるようにしておく |
※ クリーンウッド法では、建築・建設事業者も一定の場合は木材関連事業者に当たります。自社の扱いは林野庁の制度ページで確認してください。
制度の詳しい解説は 公共建築物等木材利用促進法の解説 を参照してください。
FSC認証・合法木材という「証明」の使い分け
地域材・国産材を補助やPRに活かすには、「どんな証明を付けるか」を理解しておくと有利です。
| 証明 | 何を示すか | 主に効く場面 |
|---|---|---|
| 合法性の確認(クリーンウッド法) | 違法伐採でない木材であること | 公共調達・補助・企業の調達方針 |
| 産地の証明(地域材であることの証明) | どの地域で伐採・加工された木材か | 自治体の補助・公共発注で地域材の使用量を求められるとき |
| 森林認証(FSC・SGEC/PEFCなど) | 適切に管理された森林の木材であることの第三者認証 | ESG・脱炭素を重視する施主・企業向けのPR |
どこまでの証明が要るかは、狙う補助・発注先・施主のニーズで決まります。公共・補助狙いなら合法性+産地証明、民間のESG訴求なら森林認証、と使い分けます。証明には書類とトレーサビリティ(流通経路の追跡)の整備が要るため、調達段階で製材業者と段取りします。
林業・製材との連携の進め方
地域材を安定して使うには、川上(林業・製材)との連携が欠かせません。
- 製材・プレカット業者との関係構築:必要な材種・寸法・乾燥材を安定して調達する
- 調達リードタイムの把握:地域材は流通量に限りがあるため、早めに段取りする
- 品質の確認:含水率や強度等級が確認された材(JAS=日本農林規格の構造用製材など)を、構造設計の条件に合わせて選ぶ
- トレーサビリティ:補助申請やPR、炭素貯蔵量の表示(国産材の量を分けて表示できる)に使える産地の記録
【工程表】地域材の調達を工程に織り込む
地域材は、流通量・乾燥・プレカットの段取りで、一般流通材より調達に時間がかかります。木造の短工期の利点(工期はなぜ短い?)を活かすには、材の手配を設計と並行で前倒しします。
| 設計・工事の段階 | 地域材について決めること・やること |
|---|---|
| 企画・基本計画 | 地域材を使う部位と量の方針(全量か、見せる部位に重点か)。使いたい補助の要件を確認 |
| 基本設計 | 製材業者に必要な材種・量を伝え、供給できる量と時期を確認 |
| 実施設計 | 含水率・強度等級・寸法を確定し、構造設計の条件と合わせる。必要な証明書類を決める |
| 発注・着工前 | 乾燥・プレカットの納期を逆算して発注。合法性・産地の書類を受け取る段取り |
| 竣工後 | 材積の記録を整理し、炭素貯蔵量の算定・表示や補助の実績報告に使う |
地域材の段取りが遅れると、せっかくの短工期がここで止まります。
コストへの影響と判断軸
地域材は、流通量や規格の都合で、一般流通材(外材・大量流通の国産材)より割高になることがあります。差の大きさは樹種・規格・量・地域で変わるため、製材業者の見積で確認します。一方で補助で一部を相殺できることもあるため、「材料単価」だけでなく「補助込みのトータルコスト」で判断します。
| 項目 | 一般流通材 | 地域材・国産材 |
|---|---|---|
| 構造材の単価 | 基準 | 割高になることがある(規格化された量産材ほど差が小さい傾向) |
| 調達リードタイム | 短い | 長め(流通量・乾燥・プレカットの段取り) |
| 補助制度 | 対象外が多い | 木材利用・地域材活用の補助の対象になりやすい |
| PR・ESGの説明 | 限定的 | 地域貢献・持続可能な調達として説明しやすい |
補助は「木造化による掛増し費用や調査設計費」を対象とする設計が中心で、「建設費の○割が返る」という単純化は誤りです(補助金まとめ2026・補助金の種類まとめ)。自社案件の概算は 非住宅木造の建設費 概算の出し方 で試算できます。
- 全部を地域材にこだわらず、効く部位・見せる部位に重点活用する判断も有効(割高分を抑えつつPR効果は確保)
- 調達リスクを見込んだ工程計画にする(上の工程表)
地域材・林業連携に関するよくある質問(FAQ)
Q. 地域材は一般の木材よりどのくらい高いですか? A. 流通量・規格の都合で割高になることがありますが、差の大きさは樹種・規格・量・地域で変わります。規格化された量産材ほど差は小さい傾向です。製材業者の見積で確認し、木材利用・地域材活用の補助も含めた「トータルコスト」で判断します。
Q. 補助金で地域材の割高分は全部返ってきますか? A. いいえ。補助は主に「木造化による掛増し費用や調査設計費」を対象とする設計が中心で、「建設費の○割が返る」という単純な話ではありません。割高分を一部相殺するイメージです。具体的な制度は 補助金の種類まとめ・補助金まとめ2026 を参照してください。
Q. 公共案件で地域材は有利になりますか? A. なりやすいです。都道府県・市町村は都市の木造化推進法に基づいて木材利用の方針を定めることができ、公共建築や補助事業で地域材の利用が評価や要件になることがあります。案件ごとに発注者の仕様書で確認してください。
Q. 地域材は品質(強度・乾燥)が心配です。構造材に使えますか? A. 含水率・強度等級が確認された製材・集成材であれば構造材として使えます。重要なのは「地域産であること」だけでなく「構造設計の条件を満たすこと」で、製材業者と材種・等級・乾燥を確認して調達します。
Q. 合法木材の確認は工務店にも関係がありますか? A. 関係があります。クリーンウッド法は2025年4月施行の改正で、川上・水際の木材関連事業者の合法性確認を義務化しました。建築・建設事業者も一定の場合は木材関連事業者に当たるため、仕入れ先から合法性の情報を受け取り、記録しておくと安心です。
Q. 全部を地域材にしないと意味がないですか? A. いいえ。割高分を抑えつつPR効果を得るには、現しの内装や正面など「見せる部位・効く部位」に重点的に使う判断が有効です。補助の要件に使用量の基準がある場合は、それを満たす範囲で計画します。
Q. 地域材を使うと工期は延びますか? A. 段取り次第です。地域材は調達に時間がかかるため、設計と並行して早めに材を手配しないと工期のボトルネックになります。前倒しで段取りすれば、木造本来の短工期を保てます。
まとめ
- 地域材・国産材は補助・自治体の方針・PR/ESGで価値を生む
- 制度の土台は都市の木造化推進法(自治体の木材利用方針、建築物木材利用促進協定)とクリーンウッド法(合法性の確認)
- 安定活用には林業・製材との連携と、設計と並行した調達の前倒しが不可欠
- コストは補助込みのトータルで判断し、全量にこだわらず重点活用も現実的
「地元の木で建てる」は、補助・受注・ブランディングの三方よしになり得ます。地域材活用をご検討中の工務店・自治体・施主様は、調達と補助を含めてお気軽にご相談ください。
出典・参考
- 脱炭素社会の実現に資する等のための建築物等における木材の利用の促進に関する法律(6条・11条・12条・15条)(e-Gov法令検索): https://laws.e-gov.go.jp/law/422AC0000000036
- 林野庁「クリーンウッド法の制度」: https://www.rinya.maff.go.jp/j/riyou/goho/summary/summary.html
- 林野庁「建築物への木材利用に係る評価ガイダンス」(2024年3月、2024年12月一部改訂): https://www.rinya.maff.go.jp/j/mokusan/attach/pdf/esg_architecture-15.pdf
- 林野庁「建築物に利用した木材に係る炭素貯蔵量の表示に関するガイドライン」(令和3年10月1日): https://www.rinya.maff.go.jp/j/mokusan/mieruka.html

