非住宅の建物にかかる税金まとめ|取得・保有・売却の税率一覧
※ 画像はイメージです
非住宅の建物にかかる主な税金は、取得時の「不動産取得税・登録免許税・印紙税・消費税」、保有中の「固定資産税・都市計画税・償却資産税」、売却・相続時の「譲渡所得への課税・相続税」です。 住宅と違い、事務所・店舗・倉庫などの家屋の不動産取得税は軽減税率(3%)の対象外で、標準税率の4%がかかります。
木造かどうかで税率そのものは変わりませんが、減価償却の耐用年数が短い(事務所用で木造24年、RC造50年)ため、費用に計上する時期が早まる点が構造による大きな違いです。本記事では、税目ごとの税率と、建物4,000万円の計算例を整理します。
この記事の数値について: 税率・期限は2026年10月時点で国税庁・総務省・都道府県の公表資料により確認した値です。軽減措置には期限があり、税制改正で変わります。計算例の評価額は計算用の仮の値です。実際の税額は税理士・都道府県税事務所・市町村に確認してください。
【早見表】非住宅の建物にかかる税金
| 時期 | 税金 | 課税の基準 | 税率など |
|---|---|---|---|
| 取得時 | 不動産取得税(都道府県) | 固定資産税評価額など | 住宅以外の家屋 4%/土地 3%(令和9年3月31日までの取得) |
| 取得時 | 登録免許税(国) | 不動産の価額 | 建物の所有権保存登記 0.4%、売買による移転登記 2%(土地の売買は令和11年3月31日まで1.5%) |
| 取得時 | 印紙税(国) | 工事請負契約書・売買契約書の記載金額 | 建設工事請負契約書は軽減措置あり(令和9年3月31日まで) |
| 取得時 | 消費税(国・地方) | 建築費(建物部分) | 10%。土地の譲渡は非課税 |
| 保有中 | 固定資産税(市町村) | 1月1日現在の固定資産税評価額 | 標準税率1.4% |
| 保有中 | 都市計画税(市町村) | 同上(市街化区域内) | 上限0.3% |
| 保有中 | 償却資産税(固定資産税の一部) | 事業用の設備など | 標準税率1.4%(課税標準額が免税点150万円未満なら課税されない。令和9年度分以後は180万円) |
| 保有中 | 法人税・所得税 | 減価償却費を経費に計上 | 耐用年数は構造・用途で決まる |
| 売却時 | 譲渡所得への課税 | 譲渡益 | 個人の長期譲渡所得は所得税15%+復興特別所得税+住民税5% |
| 相続時 | 相続税 | 相続税評価額 | 賃貸用なら貸家・貸家建付地として評価が下がる |
取得時にかかる税金
不動産取得税
土地や家屋を取得したときに一度だけかかる都道府県の税です。税率は標準4%ですが、令和9年3月31日までの取得については土地と住宅が3%に軽減されています。住宅以外の家屋(事務所・店舗・倉庫など)は軽減の対象外で4%です。 また、同じ期限まで、宅地評価土地は課税標準が価格の2分の1になります。
新築の家屋は、建築費そのものではなく、都道府県が評価した価格(固定資産税評価額に相当)に税率を掛けます。
登録免許税
新築した建物の所有権保存登記は不動産の価額の0.4%、売買による所有権移転登記は2%です。土地の売買による移転登記は、令和11年3月31日までは1.5%に軽減されています。借入で抵当権を設定する場合は、その登記にも登録免許税がかかります。
印紙税(建設工事の請負契約書)
建設工事の請負契約書には印紙税がかかります。平成26年4月1日から令和9年3月31日までに作成される、契約金額100万円超の建設工事請負契約書には軽減措置があります。
| 契約金額 | 軽減後の税額 |
|---|---|
| 1,000万円超 5,000万円以下 | 1万円 |
| 5,000万円超 1億円以下 | 3万円 |
| 1億円超 5億円以下 | 6万円 |
消費税
建築費には消費税(10%)がかかります。課税事業者は、課税売上げに対応する分を仕入税額控除できます。ただし、住宅の貸付けは非課税で、居住用賃貸建物(税抜1,000万円以上)の取得は、令和2年10月1日以後、原則として仕入税額控除ができません(消費税法30条10項)。介護施設や賃貸住宅の扱いは 介護施設の建設で消費税は還付される? を参照してください。
保有中にかかる税金
固定資産税・都市計画税
毎年1月1日現在の所有者に、市町村が課税します。固定資産税の標準税率は1.4%、都市計画税は市街化区域内で上限0.3%です。家屋の評価額は「再建築価格(同じ家屋をその時点で新築する場合の建築費)」に経年減点補正率を掛けて求めるため、建築費そのものではなく、建築後の年数に応じて下がっていきます。評価額は3年ごとに見直されます(評価替え)。
償却資産税
事業に使う機械・設備などの償却資産にかかる固定資産税です。税率は1.4%で、課税標準額の合計が免税点(150万円。令和9年度分以後は180万円)未満なら課税されません。建物と一体の設備を「家屋」として課税するか「償却資産」として申告するかは、法人税の区分とは別のルールです(倉庫・工場の固定資産税はいくら?家屋の三要件と償却資産税との違い)。
減価償却(法人税・所得税)
事業用の建物の取得費は、法定耐用年数にわたって毎年の経費にします。建物は定額法です。
| 用途 | 木造 | 鉄筋コンクリート造 |
|---|---|---|
| 事務所用 | 24年 | 50年 |
| 店舗用 | 22年 | 39年 |
| 倉庫用(一般用) | 15年 | 38年 |
耐用年数が短い木造は毎年の償却費が大きくなりますが、経費にできる総額は取得価額までで、税額の総額が減るのではなく時期が早まるものです。詳しくは 非住宅木造の減価償却 を参照してください。
売却・相続時
- 売却(個人): 土地・建物の譲渡所得は他の所得と分けて課税します。譲渡した年の1月1日現在で所有期間が5年を超える長期譲渡所得は、所得税15%・復興特別所得税(所得税額の2.1%)・住民税5%です。5年以下の短期譲渡所得は税率が高くなります。
- 売却(法人): 譲渡益は他の所得と合算して法人税の対象です。建物の売却には消費税もかかります(課税事業者の場合)。
- 相続: 賃貸用の建物は「貸家」、その敷地は「貸家建付地」として、自用より評価が下がります。
| 対象 | 相続税評価の考え方(国税庁) |
|---|---|
| 建物(貸家) | 固定資産税評価額 −(固定資産税評価額 × 借家権割合 × 賃貸割合) |
| 土地(貸家建付地) | 自用地としての価額 −(自用地としての価額 × 借地権割合 × 借家権割合 × 賃貸割合) |
土地活用と相続の関係は 土地活用の選択肢を比較 を参照してください。
【計算例】木造事務所(建築費4,000万円)の税金
以下はすべて計算用の仮の値です。建築費(税抜)4,000万円の木造事務所を新築し、家屋の評価額を仮に建築費の6割(2,400万円)と置きます。実際の評価額は都道府県・市町村が決めます。
| 税金 | 計算 | 金額(仮) |
|---|---|---|
| 印紙税(請負契約書 4,000万円) | 軽減後の税額表による | 1万円 |
| 消費税(建築費) | 4,000万円 × 10% | 400万円 |
| 不動産取得税(家屋) | 2,400万円 × 4% | 96万円 |
| 登録免許税(所有権保存) | 2,400万円 × 0.4% | 9.6万円 |
| 固定資産税(毎年・初年度) | 2,400万円 × 1.4% | 33.6万円 |
| 都市計画税(毎年・市街化区域で上限の場合) | 2,400万円 × 0.3% | 7.2万円 |
| 減価償却費(毎年・木造事務所24年) | 4,000万円 × 0.042 | 168万円 |
同じ4,000万円をRC造(事務所用50年・償却率0.020)で計算すると、毎年の償却費は80万円です。木造は約2倍の額を早い時期に経費にできます。ただし実際にはRC造のほうが建築費が高くなるのが一般的で、構造別の費用は 木造・鉄骨造・RC造の坪単価比較 を参照してください。
【チェックリスト】建てる前に確認すること
- 用途は住宅か住宅以外か(不動産取得税の税率、消費税の控除に影響)
- 取得時の税(不動産取得税・登録免許税・印紙税)を資金計画に入れたか
- 毎年の固定資産税・都市計画税・償却資産税を収支計画に入れたか
- 建物本体と設備を区分できる内訳明細を施工者から受け取れるか
- 補助金を受ける場合、圧縮記帳を使うか(圧縮記帳とは)
- 軽減措置の期限(令和9年3月31日など)に取得・契約の時期が間に合うか
- 税額の試算を税理士に依頼したか
よくある質問(FAQ)
Q. 事務所や倉庫でも不動産取得税は3%ですか? A. いいえ。3%の軽減は土地と住宅が対象で、住宅以外の家屋は4%です(令和9年3月31日までの取得の場合)。
Q. 固定資産税は建ててからずっと同じ額ですか? A. いいえ。建物の評価額は経年で下がっていくため、税額も下がる傾向があります。評価額は3年ごとに見直されます。
Q. 木造は税金で有利ですか? A. 税率は構造で変わりません。木造の違いは減価償却の耐用年数が短いことで、経費にする時期が早まります。建築費が低ければ、建築費に比例する消費税なども小さくなります。
Q. 中古の木造を買った場合の減価償却は? A. 法定耐用年数の全部を経過していれば、簡便法で「法定耐用年数×20%」(1年未満切捨て、最低2年)を耐用年数にできます。木造事務所なら24×20%=4.8で4年です。詳しくは 非住宅木造の減価償却 を参照してください。
Q. 誰に相談すればよいですか? A. 税額の計算と特例の適否は税理士、不動産取得税は都道府県税事務所、固定資産税は市町村の資産税課が窓口です。
まとめ
| 時期 | 押さえること |
|---|---|
| 取得時 | 非住宅の家屋の不動産取得税は4%。登録免許税・印紙税・消費税も資金計画に入れる |
| 保有中 | 固定資産税1.4%、都市計画税上限0.3%、償却資産税。評価額は経年で下がる |
| 償却 | 木造は耐用年数が短く、経費にする時期が早い(総額は同じ) |
| 売却・相続 | 個人の長期譲渡は所得税15%+住民税5%など。賃貸用は相続税評価が下がる |
税金まで含めた事業性をご検討中の事業者様は、概算費用の試算からお気軽にご相談ください。資金計画は 非住宅の建設資金の調達方法、火災保険などの保有コストは 非住宅木造の火災保険 も参照してください。
出典・参考
- 愛知県「不動産取得税」(税率・課税標準の特例): https://www.pref.aichi.jp/soshiki/zeimu/0000019347.html
- 国税庁 タックスアンサー No.7191「登録免許税の税額表」: https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/inshi/7191.htm
- 国税庁 タックスアンサー No.7108「不動産の譲渡、建設工事の請負に関する契約書に係る印紙税の軽減措置」: https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/inshi/7108.htm
- 国税庁 タックスアンサー No.6226「住宅の貸付け」: https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/shohi/6226.htm
- 国税庁 消費税法基本通達 第7節 居住用賃貸建物: https://www.nta.go.jp/law/tsutatsu/kihon/shohi/11/08.htm
- 総務省「固定資産税」(税率・免税点・賦課期日・評価の仕組み): https://www.soumu.go.jp/main_sosiki/jichi_zeisei/czaisei/czaisei_seido/149767_08.html
- 総務省「都市計画税」(制限税率0.3%): https://www.soumu.go.jp/main_sosiki/jichi_zeisei/czaisei/czaisei_seido/149767_10.html
- 減価償却資産の耐用年数等に関する省令(e-Gov法令検索)別表第一・別表第八: https://laws.e-gov.go.jp/law/340M50000040015
- 国税庁 タックスアンサー No.3208「長期譲渡所得の税額の計算」: https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/joto/3208.htm
- 国税庁 タックスアンサー No.4614「貸家建付地の評価」: https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/hyoka/4614.htm
- 国税庁 タックスアンサー No.5404「中古資産の耐用年数」: https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/hojin/5404.htm

