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医療モール(メディカルモール)の建設費は、建物本体の坪単価で木造90〜115万円、S造(鉄骨造)105〜135万円、RC造(鉄筋コンクリート造)125〜165万円程度が一般的な目安です。 4〜5科+調剤薬局を入れる約160坪なら、木造の本体工事で1.4億〜1.8億円程度になります。
医療モールは複数のクリニックと調剤薬局を1つの建物(または敷地)に集める開発で、多くは地主や開発事業者が建物を建てて医療機関に貸すテナント型です。建設費は利回りに直結するため、必要な延床面積を診療科数から逆算し、総事業費で採算を見ることが大切です。この記事では、坪単価の目安、延床の出し方、利回りの計算例、そして建てる前に確認する法令を整理します。単独のクリニックは クリニックの建設費用と坪単価・木造歯科医院の建設費と坪単価 を参照してください。
※ 本記事の坪単価・工期・区画面積・共用部の比率は、特定の見積実績ではなく一般的な目安です。立地・規模・仕様で大きく変わります。
医療モールの建設費・坪単価の目安
構造別 坪単価の比較(一般的な目安)
| 構造 | 坪単価の目安 | 工期の目安 | 特徴 |
|---|---|---|---|
| 木造(2×4等) | 90〜115万円/坪 | 6〜10ヶ月 | 平屋〜2階建てに向き、コスト・工期を抑えやすい |
| S造(鉄骨) | 105〜135万円/坪 | 8〜12ヶ月 | 大きな開口をつくりやすいがコストは上がる |
| RC造 | 125〜165万円/坪 | 12〜18ヶ月 | 費用・工期とも大きい |
※ 各テナントの内装・医療設備・特殊配管は別途(多くはテナント側の工事)。単独クリニックの目安より、共用の待合・廊下・トイレやEV(エレベーター)の分だけ上がる前提です。
診療科数から延床面積を逆算する
医療モールは「貸す箱」なので、1テナント(1診療科)あたりの区画面積が設計の単位になります。一般的な目安は次のとおりです。
- 1診療科あたり15〜30坪(内科・小児科は小さめ、整形外科・眼科・検査併設は大きめ)
- 調剤薬局は10〜20坪を別区画で確保
- これに共用部(待合・受付・トイレ・EV・廊下)が延床の20〜30%乗るため、「区画面積の合計÷0.7〜0.8」が必要延床の目安
計算例:内科・小児科・整形外科・皮膚科の4科(各25坪)+調剤薬局15坪なら、区画合計は115坪です。共用部を延床の25%とすると、115÷0.75=約153坪となり、下の表の「標準(約160坪)」に近い規模になります。
診療科数別の概算建設費(木造・本体工事、一般的な目安)
| 規模 | テナントの目安 | 延床面積の目安 | 概算建設費 |
|---|---|---|---|
| 小規模 | 2〜3科+薬局 | 約100坪 | 約9,000万〜1.2億円 |
| 標準 | 4〜5科+薬局 | 約160坪 | 約1.4億〜1.8億円 |
| 大規模 | 6科以上+薬局・検査 | 約250坪 | 約2.3億〜2.9億円 |
土地・外構・駐車場は別途です。各テナントの内装・医療設備は多くがテナント側の工事になります。自社の規模での概算は 非住宅木造の建設費 概算の出し方 で試算できます。
表面利回りの計算例
テナント型の医療モールは、「年間賃料収入 ÷ 総事業費」=表面利回りで事業性を評価します。医療テナントの賃料は立地で大きく違うため、ここでは仮の賃料で計算の仕方だけを示します。
前提(仮の数字):延床160坪、賃貸できる面積120坪、月坪1.5万円 → 年間賃料=120坪×1.5万円×12ヶ月=2,160万円
| 構造 | 本体工事費(160坪×上の坪単価) | 表面利回り(本体工事費のみで計算) |
|---|---|---|
| 木造 | 1.44億〜1.84億円 | 約11.7〜15.0% |
| RC造 | 2.00億〜2.64億円 | 約8.2〜10.8% |
実際の総事業費には土地・外構・駐車場・設計費・諸費用が加わるため、利回りは表より下がります。それでも、建物本体の工事費を抑えるほど分母が小さくなり、医療機関に提示する賃料にも余裕が出るという関係は変わりません。必ず個別の事業収支で確認してください。テナント型開発の考え方は 土地活用は木造非住宅が有利? も参照してください。
建てる前に確認する法令・税務
調剤薬局は医療機関から独立させる
保険薬局は、保険医療機関と一体的な構造にしたり、一体的な経営を行ったりしてはならないと定められています(保険薬局及び保険薬剤師療養担当規則第2条の3)。医療モールに調剤薬局を入れる場合は、薬局の出入口や動線をクリニックと分けるなど、構造上の独立性が必要です。区画の配置は、設計の初期に薬局の開設予定者と保健所・厚生局の窓口に確認してください。
各クリニックの開設手続き
医師が診療所を開設したときは、開設後10日以内に都道府県知事へ届出が必要です(医療法第8条)。医療モールでは入居する診療所ごとに手続きが必要になります。待合やトイレを複数の診療所で共用する計画は、保健所との事前相談で可否を確認してから図面を固めます。
建物の耐用年数(貸す側・借りる側)
- 地主・開発事業者(貸す側):貸している建物の耐用年数は、原則として借りている人の用途で判定します(耐用年数の適用等に関する取扱通達1-1-5)。診療所用の建物は「病院用」に含めることができ(同通達2-1-6)、木造の病院用は17年です(耐用年数省令 別表第一)。薬局など2以上の用途に使う建物は、使用目的や使用状況から合理的に判定します(同通達1-1-1)。
- テナント(借りる側):借りた区画に行う内装などの造作は、建物の耐用年数や造作の種類・用途などから合理的に見積もった耐用年数で償却します(同通達1-1-3)。
どの区分を適用するかは、顧問税理士に確認してください。税の全体像は 木造非住宅にかかる税金まとめ・非住宅木造の減価償却と節税 も参照してください。
防火・避難
入居する診療所が無床(入院用のベッドがない)であれば、診療所は建築基準法の特殊建築物(別表第一)に当たりません。一方で、入院用のベッドを持つ診療所が入る場合は特殊建築物になり、耐火の要求が上がります。規模ごとの要否は 非住宅木造の耐火基準を完全ガイド・消防設備・避難規定 で確認してください。
集患を最大化する診療科ミックスの考え方
医療モールの価値は「箱を建てる」ことよりどの診療科を組み合わせるかで決まります。
- 核(アンカー)になる科を置く:来院頻度の高い内科をモール全体の集患の土台にし、ファミリー層を呼ぶ小児科・耳鼻科、シニア層を呼ぶ整形外科・眼科を組み合わせると、客層が広がります。
- 競合しない科を集める:同じ科を2つ入れるとテナント同士が食い合います。
- 調剤薬局は1区画を確保:処方箋が集まる薬局は、モールの利便性の核になります(構造上の独立性は上記のとおり)。
- 将来の入れ替えを想定:区画を標準化し、診療科が変わっても転用しやすい計画にしておくと、長期の空室リスクを下げられます。
設計のチェックリスト
| 項目 | 確認すること |
|---|---|
| 区画計画 | 1科15〜30坪を基本に、区画を標準化して入れ替えに対応できるか |
| 薬局 | 出入口・動線を診療所と分け、構造上の独立性を確保しているか |
| 共用部 | 待合・受付・トイレを共用する場合、保健所と事前に相談したか |
| 給排水・電源 | 各区画に配管・電源の余裕を持たせたか(透析・歯科は別途検討) |
| 駐車場 | 複数科利用のピーク時(午前診療帯)の台数と出入口の動線 |
| 引き渡し条件 | スケルトン渡しか一部設備付きか、テナントとの負担区分 |
木造で待合などの大きな空間をつくる場合の考え方は 木造の柱スパンは何mまで? を参照してください。
医療モールのよくある質問(FAQ)
Q. テナント(各クリニック)の内装・医療設備の費用は誰が負担しますか? A. 多くのテナント型開発では、建物本体(躯体・共用部・基本設備)を地主・開発側が、各区画の内装・医療設備・特殊配管をテナント側が負担します。区画の引き渡し条件(スケルトン渡しか一部設備付きか)で賃料と初期負担の配分が変わるため、募集条件として明確にします。
Q. 開業医はモールに「入居」するだけで、建物は所有しないのですか? A. テナント型では開業医は賃借人で、建物は地主・開発事業者が所有します。開業医は初期投資を抑えて開業でき、地主は賃料を得るという役割分担です。医療法人が自らモールを所有・運営するパターンもあります。
Q. 木造で複数科の配管・電源・大きな待合を作れますか? A. 作れます。各テナントの給排水・電源は木造の壁・床に納められ、共用の待合は集成材の梁やトラスで開放的な空間を確保できます。区画ごとに配管の余裕を持たせておけば、診療科の入れ替えにも対応しやすくなります。
Q. 診療科が抜けて空室になるリスクが心配です。 A. テナント型開発の主なリスクは空室です。競合しない科の組み合わせ、転用しやすい標準区画、来院頻度の高い核の科の配置で、空室・入れ替えに強い設計にします。建設費を抑えておくと、空室期があっても収支が耐えやすくなります。
Q. 駐車場はどのくらい必要ですか? A. 医療モールは車での来院が多く、診療科数と立地に応じた台数が集患を左右します。ピーク時(午前診療帯)の混雑を見込んだ台数と、出入口の動線を敷地計画で確保します。自治体の条例や開発の条件で台数が決まる場合もあるため、敷地選定の段階で確認してください。
まとめ
| 項目 | 医療モールのポイント |
|---|---|
| 建設費 | 本体の坪単価は木造90〜115万円/坪が一般的な目安。160坪で1.4億〜1.8億円程度 |
| 延床の出し方 | 区画面積の合計÷0.7〜0.8(共用部20〜30%)が目安 |
| 利回り | 年間賃料÷総事業費。本体工事費を抑えるほど改善する |
| 薬局 | 保険医療機関と一体的な構造にしない(療養担当規則第2条の3) |
| 耐用年数 | 貸す側は借り手の用途で判定(通達1-1-5)。診療所は病院用に含めることができ、木造17年 |
医療モールの開発をご検討中の地主・医療法人・開発事業者様は、概算費用の試算からお気軽にご相談ください。
出典・参考
- 保険薬局及び保険薬剤師療養担当規則(e-Gov法令検索):第2条の3(保険医療機関と一体的な構造・経営の禁止)
- 医療法(e-Gov法令検索):第1条の5(病院・診療所の定義)、第8条(診療所の開設届)
- 建築基準法(e-Gov法令検索):別表第一(特殊建築物)
- 減価償却資産の耐用年数等に関する省令(e-Gov法令検索):別表第一(建物)
- 国税庁 耐用年数の適用等に関する取扱通達 第1章第1節 通則(1-1-1、1-1-3、1-1-5)
- 国税庁 耐用年数の適用等に関する取扱通達 第2章第1節 建物(2-1-6 診療所用・助産所用の建物)
- 坪単価・工期・区画面積・共用部の比率、利回り計算の賃料:公的な統計ではなく、一般的な目安・仮の数字(民間の情報)です

