非住宅木造の減価償却|耐用年数と節税効果をRC造・S造と比較
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非住宅の木造建物は、法定耐用年数が事務所用24年・店舗用22年・倉庫用(一般用)15年で、鉄筋コンクリート造(事務所用50年など)の半分以下です。 建物は定額法で償却するため、同じ取得価額なら木造は毎年の減価償却費(建物の取得費を耐用年数に分けて毎年の経費にする額)が大きくなり、早い時期に課税所得を圧縮できます。
ただし、償却期間の合計で経費にできる額は構造に関係なく取得価額までです。木造の利点は「税金の総額が減る」ことではなく、「経費にする時期が早まり、手元資金が早く残る」ことにあります。本記事では、耐用年数と償却費の計算例、中古建物の簡便法、償却後の注意点を整理します。
この記事の数値について: 耐用年数と償却率は「減価償却資産の耐用年数等に関する省令」(別表第一・別表第八)、償却方法と中古資産の扱いは国税庁の公表資料によります。計算例の税率・建築費は計算用の仮の値です。実際の税額・処理は税理士に確認してください。
【早見表】非住宅の主な用途の法定耐用年数
建物の法定耐用年数は「構造」と「用途」の組み合わせで決まります(耐用年数省令 別表第一)。
| 用途 | 木造 | 金属造(骨格材4mm超) | 鉄筋コンクリート造 |
|---|---|---|---|
| 事務所用 | 24年 | 38年 | 50年 |
| 店舗用 | 22年 | 34年 | 39年 |
| 飲食店用 | 20年 | ― | ― |
| 病院用 | 17年 | ― | 39年 |
| 工場用・倉庫用(一般用) | 15年 | 31年 | 38年 |
| 住宅用(賃貸アパート等) | 22年 | 34年 | 47年 |
※ 鉄骨造(金属造)は骨格材の肉厚で年数が変わります。事務所用なら4mm超38年、3mm超4mm以下30年、3mm以下22年です。表の「―」は本記事で扱わない区分で、別表第一で確認してください。
構造・用途ごとの全体の一覧、建物附属設備として区分したときの年数は 建物の減価償却|構造・用途別の耐用年数と木造が有利な理由 にまとめています。
建物の償却方法と償却率
- 建物は定額法: 平成10年4月1日以後に取得した建物の償却方法は定額法(旧定額法)に限られます。
- 建物附属設備・構築物も定額法: 平成28年4月1日以後に取得したものは定額法です。
- 定額法の年間償却費 = 取得価額 × 定額法の償却率(耐用年数ごとに別表第八で決まる)。
| 耐用年数 | 定額法の償却率 | 該当する主な例 |
|---|---|---|
| 15年 | 0.067 | 木造の倉庫・工場(一般用) |
| 22年 | 0.046 | 木造の店舗・住宅 |
| 24年 | 0.042 | 木造の事務所 |
| 31年 | 0.033 | 金属造(4mm超)の倉庫 |
| 38年 | 0.027 | 金属造(4mm超)の事務所、RC造の倉庫 |
| 47年 | 0.022 | RC造の住宅 |
| 50年 | 0.020 | RC造の事務所 |
【計算例1】取得価額1億円の事務所を構造だけ変えた場合
以下は計算用の仮の値です。建物の取得価額を1億円、税率を仮に30%と置きます(実際の実効税率は法人の規模・所得・地域で変わります)。
| 項目 | 木造(24年) | 金属造4mm超(38年) | RC造(50年) |
|---|---|---|---|
| 年間の減価償却費 | 420万円 | 270万円 | 200万円 |
| 償却費による税の減少(年・仮の税率30%) | 126万円 | 81万円 | 60万円 |
| 24年目までに経費にした累計 | 約1億円(ほぼ全額) | 約6,480万円 | 約4,800万円 |
| 経費にできる総額 | 1億円 | 1億円 | 1億円 |
※ 最終年は備忘価額1円を残して償却します。
税率が一定なら、償却による税の減少額の総額はどの構造でも同じ(この例では1億円×30%=3,000万円)です。違いは時期で、木造は24年でほぼ全額を経費にできるのに対し、RC造は50年かかります。早く税負担が軽くなるぶん、借入の返済や次の投資に回せる資金が早く手元に残ります。
【計算例2】坪単価の目安を入れて比べた場合
実際には構造によって建築費そのものが違います。延床100坪の事務所を、当サイトの 建築の坪単価一覧 の目安の幅の中央で比べます(一般的な目安で、実績の集計値ではありません)。
| 項目 | 木造 | S造(金属造4mm超と仮定) | RC造 |
|---|---|---|---|
| 坪単価の目安(幅の中央) | 77.5万円 | 95万円 | 115万円 |
| 建物本体工事費(仮) | 7,750万円 | 9,500万円 | 1億1,500万円 |
| 耐用年数(事務所用) | 24年 | 38年 | 50年 |
| 年間の減価償却費 | 約326万円 | 約257万円 | 230万円 |
建築費が低いうえに償却が早いため、木造は借入額が小さく、毎年の経費は大きい組み合わせになりやすいといえます。ただし、この例は工事費の全額を建物本体として計算しています。実際には電気・給排水などの設備を建物附属設備として区分できれば、その部分はより短い年数で償却します。区分には工事区分ごとの内訳明細が必要です。
中古の木造建物を取得したとき(簡便法)
中古の建物は、残りの使用可能期間を見積もるのが原則ですが、見積もりが難しい場合は簡便法で耐用年数を決められます(国税庁 No.5404)。
| 状況 | 耐用年数の計算 |
|---|---|
| 法定耐用年数の全部が経過している | 法定耐用年数 × 20% |
| 法定耐用年数の一部が経過している | (法定耐用年数 − 経過年数)+ 経過年数 × 20% |
計算結果の1年未満の端数は切り捨て、2年に満たない場合は2年とします。
| 例 | 計算 | 耐用年数 |
|---|---|---|
| 築10年の木造事務所(法定24年) | (24−10)+10×20%=16 | 16年 |
| 築30年の木造事務所(法定24年を全部経過) | 24×20%=4.8 | 4年 |
| 築25年の木造店舗(法定22年を全部経過) | 22×20%=4.4 | 4年 |
築年数の古い木造ほど短い年数で償却できますが、取得後に行う資本的支出(改修費など)が取得価額の50%を超える場合は簡便法を使えないなどの制限があります。耐用年数は事業に使い始めた年度に決める必要があり、後の年度で変更できません。
償却が終わった後の注意点
- 経費が減り、課税所得が増える: 償却が終わると毎年の償却費がなくなるため、同じ家賃収入・売上でも税負担が増えます。借入の元本返済が続いている場合、手元資金が想定より減ることがあります。
- 売却時の譲渡益: 償却が進むほど帳簿上の価額(取得費)が下がるため、売却時の譲渡益は大きくなります。個人が5年超保有した土地・建物を売った場合の長期譲渡所得は、所得税15%・復興特別所得税(所得税額の2.1%)・住民税5%です(所有期間は譲渡した年の1月1日現在で判定)。法人の場合は他の所得と合算して法人税の対象になります。
- 建替え・大規模改修: 新たな取得や資本的支出は、改めて減価償却の対象になります。
法定耐用年数は税務上の年数で、建物の寿命ではありません。木造の非住宅が実際に何年使えるかは、雨仕舞い・防腐・点検の計画しだいです(木造の非住宅は何年もつ?)。
【チェックリスト】構造を決める前に税理士と確認すること
- 建物の用途は別表第一のどの区分に当たるか(事務所用・店舗用・倉庫用など)
- 鉄骨造と比べる場合、骨格材の肉厚は何mmか(年数が変わる)
- 建物本体と建物附属設備を区分できる内訳明細を、施工者から受け取れるか
- 償却費と借入の元本返済の関係(償却が終わる時期に手元資金が不足しないか)
- 補助金を受ける場合の圧縮記帳の扱い(圧縮記帳とは)
- 中古を取得する場合、簡便法を使えるか(資本的支出の割合)
工務店が施主に説明するときのポイント
- 「節税になる」ではなく「経費にする時期が早い」と説明する: 総額は取得価額までという前提を正しく伝えると、税理士を交えた打合せでも信頼を損ねません。
- 建築費と償却を並べて示す: 計算例2のように、建築費の差と償却費の差を1枚の表にします。具体的な税額は施主の税理士に試算してもらいます。
- 「耐用年数が短い=寿命が短い」という誤解を解く: 法定耐用年数は税務上の年数で、寿命とは別の概念です。
税金全体の整理は 非住宅の建物にかかる税金まとめ、構造別の建築費は 木造・鉄骨造・RC造の坪単価比較 を参照してください。
よくある質問(FAQ)
Q. 木造にすると税金はいくら安くなりますか? A. 税率が一定なら、償却期間全体で減る税額の総額は構造に関係なく「取得価額 × 税率」です。木造は耐用年数が短いため、その減少が早い時期に集中します。具体的な額は税理士に試算してもらってください。
Q. 倉庫を建てる場合も木造が有利ですか? A. 倉庫用(一般用)の耐用年数は木造15年、金属造(4mm超)31年、RC造38年です。償却の早さでは木造が最も早くなります。ただし倉庫の大きさや防火の規制で構造が制約されることがあるため、設計の条件と合わせて判断します。
Q. 個人が賃貸用に建てた場合も同じですか? A. 耐用年数と定額法の考え方は個人の所得税でも同じです。住宅用の賃貸アパートは木造22年・RC造47年です。
まとめ
| 観点 | ポイント |
|---|---|
| 耐用年数 | 木造は事務所用24年・店舗用22年・倉庫用15年。RC造の半分以下 |
| 償却方法 | 建物は定額法(平成10年4月1日以後取得) |
| 税への効き方 | 総額は同じ。経費にする時期が早まる |
| 中古 | 簡便法で短い年数にできる場合がある |
| 償却後 | 経費が減り課税所得が増える。売却時は譲渡益に注意 |
非住宅木造の事業計画をご検討中の事業者様は、構造別の概算費用の比較からお気軽にご相談ください。
出典・参考
- 減価償却資産の耐用年数等に関する省令(e-Gov法令検索)別表第一・別表第八: https://laws.e-gov.go.jp/law/340M50000040015
- 国税庁 タックスアンサー No.2100「減価償却のあらまし」: https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/shotoku/2100.htm
- 国税庁 タックスアンサー No.5404「中古資産の耐用年数」: https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/hojin/5404.htm
- 国税庁 タックスアンサー No.3208「長期譲渡所得の税額の計算」: https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/joto/3208.htm
- 坪単価の目安: 当サイト「建築の坪単価一覧」(一般的な目安。公的統計ではありません)

