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ホームコラム非住宅木造の減価償却と節税 — RC造・S造との比較で分かる経営メリット
経営戦略13分で読めます2026-04-08

非住宅木造の減価償却と節税 — RC造・S造との比較で分かる経営メリット

非住宅木造の減価償却と節税 — RC造・S造との比較で分かる経営メリット

※ 画像はイメージです

はじめに — 建物の構造選択は「税金」にも大きく影響する

建物を建てる際、多くの経営者は建設コストや工期に注目します。しかし、建物の構造選択は「税金」にも大きな影響を与えることをご存じでしょうか。

建物は購入時に全額を経費にすることはできず、法定耐用年数にわたって少しずつ経費に計上する「減価償却」を行います。この法定耐用年数は構造によって大きく異なり、木造はRC造の約半分の期間で償却が完了します。

つまり、木造を選ぶだけで毎年の経費計上額が大きくなり、法人税の節税効果が高まるのです。本記事では、構造別の減価償却の違いと、その経営的なインパクトを具体的な数字で解説します。

構造別の法定耐用年数

建物の法定耐用年数は、国税庁が定める「減価償却資産の耐用年数等に関する省令」で規定されています。事業用建物(非住宅)の主な法定耐用年数は以下の通りです。

事務所・店舗用途の場合

構造法定耐用年数定額法の償却率年間償却費(1億円の場合)
木造22年0.046約455万円/年
軽量鉄骨造(3mm超4mm以下)30年0.034約334万円/年
重量鉄骨造(S造)34年0.030約295万円/年
RC造(鉄筋コンクリート)47年0.022約213万円/年

倉庫用途の場合

構造法定耐用年数定額法の償却率
木造15年0.067
S造31年0.033
RC造38年0.027

倉庫用途では木造の耐用年数が15年と短く、より早期に償却が完了します。倉庫や工場を建てる際に木造を選ぶ経営メリットは特に大きいと言えます。

重要な注意点: 法定耐用年数は税務上の概念であり、建物の実際の寿命(物理的耐用年数)とは異なります。適切に維持管理された木造建築は50年以上の使用が可能です。

減価償却シミュレーション

1億円の事務所を各構造で建てた場合の減価償却を比較してみましょう。

前提条件

  • 建物取得価額: 1億円(土地代は含まない)
  • 償却方法: 定額法(2016年4月以降取得の建物)
  • 法人実効税率: 約34%(資本金1億円以下の中小企業)

年間の節税効果比較

項目木造(22年)S造(34年)RC造(47年)
年間償却費455万円295万円213万円
年間節税額(税率34%)155万円100万円72万円
木造との年間差額▲55万円▲83万円
償却完了までの累計節税3,400万円3,400万円3,400万円
22年間の累計節税額3,400万円2,200万円1,584万円

累計の節税総額は同じ(建物価額×税率)ですが、木造は22年で償却が完了するのに対し、RC造は47年かかるという点が重要です。木造なら最初の22年間で毎年155万円の節税効果があり、その分のキャッシュを事業投資に回せるのです。

22年間のキャッシュフロー差

木造とRC造の差額83万円/年を22年間にわたって年利2%で運用した場合、約2,240万円の資産差が生まれます。これは単純な節税額の差(約1,800万円)以上のインパクトです。

木造のメリット — 償却が早い=キャッシュフロー改善

早期償却のキャッシュフロー効果

減価償却費は「現金の支出を伴わない経費」です。建設時に支払いは完了していますが、毎年の決算で経費に計上できるため、その分だけ税金が減り、手元のキャッシュが増えます。

木造の場合、年間455万円の償却費が計上できるということは、その34%にあたる約155万円が毎年手元に残るということです。この資金を設備投資や人材採用、借入金の返済に充てることで、企業の財務体質を強化できます。

具体的なキャッシュフロー比較(年間)

項目木造S造差額
減価償却費455万円295万円+160万円
節税効果155万円100万円+55万円
借入金返済(15年返済の場合)667万円667万円0円
実質キャッシュアウト512万円567万円▲55万円

建設費が同額と仮定した場合、木造の方が年間55万円キャッシュフローが改善します。実際には木造の方が建設費自体も安いケースが多いため、借入金も少なくなり、差はさらに広がります。

建設費の差も加味した総合比較

実際の建設費を加味して比較してみましょう。100坪の事務所を想定します。

項目木造(坪65万円)S造(坪90万円)
建設費6,500万円9,000万円
年間償却費295万円265万円
年間節税額100万円90万円
借入金返済(20年・金利1.5%)376万円521万円
年間キャッシュアウト差+135万円多い

建設費が安い上に節税効果も高いため、年間のキャッシュフローに約135万円の差が生まれます。20年間で約2,700万円の差です。

賃貸物件オーナーにとっての意味

土地オーナーが賃貸事務所や賃貸倉庫を建てるケースでは、減価償却のメリットはさらに大きくなります。

投資回収期間の短縮

項目木造賃貸事務所RC造賃貸事務所
建設費(100坪)6,500万円12,000万円
年間家賃収入960万円1,200万円
年間経費(管理費・修繕等)200万円280万円
年間減価償却費295万円255万円
課税所得465万円665万円
税引後利益307万円439万円
表面利回り14.8%10.0%
投資回収期間(税引前)約8.6年約13.0年

木造の方が建設費が安いため、家賃設定を抑えても高い利回りを確保でき、投資回収期間も約4年短縮されます。

償却後の出口戦略

木造は22年で償却が完了するため、その後は減価償却費が計上できなくなり課税所得が増えます。この時点で以下の選択肢があります。

  • 建替え: 新たに建替えることで再び減価償却が始まる
  • 売却: 簿価がゼロに近いため、売却益のほとんどが利益になるが、長期譲渡所得の税率(約20%)が適用される
  • 継続保有: 修繕費を計上しながら運用を続ける

RC造では47年間償却し続ける必要があるため、こうした柔軟な出口戦略を取りにくいのが実情です。

工務店が施主に提案する際のポイント

税理士との連携

建物構造の選択が税務に大きく影響することを施主に理解してもらうためには、税理士を交えた提案が効果的です。「建設費が安い」だけでなく「税金も安くなる」という二重のメリットを数字で示すことで、説得力が格段に上がります。

提案時に用意すべき資料

  1. 構造別の建設費比較表: 坪単価と総額の比較
  2. 減価償却シミュレーション: 本記事のような年間節税額の比較
  3. キャッシュフロー表: 借入金返済と節税効果を含めた月次・年次のCF
  4. トータルコスト比較: 建設費+ランニングコスト+税金の30年間総額

「耐用年数が短い=寿命が短い」という誤解の解消

施主が最も懸念するのは「木造は22年しかもたないのでは?」という点です。法定耐用年数はあくまで税務上の数字であり、物理的な寿命とは無関係であることを丁寧に説明しましょう。適切な維持管理を行えば、木造建築は50年以上の使用が可能です。

まとめ

非住宅木造建築は、建設コストの安さに加えて、減価償却による節税効果とキャッシュフロー改善という経営面でのメリットがあります。1億円の事務所の場合、木造はRC造に比べて年間約83万円多く節税でき、22年間の累計では約1,800万円の差が生まれます。

工務店にとって、この「税金の話」は施主への強力な提案材料です。建設費の比較だけでなく、減価償却シミュレーションを含めたトータルコスト提案ができれば、S造やRC造を提案する競合他社との差別化に大きく貢献するでしょう。

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