非住宅の建設資金の調達方法|融資・補助金・リースを比較
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非住宅の建物を建てる資金は、自己資金に加えて「金融機関の融資」が中心で、条件が合えば「国や自治体の補助金」、初期負担を抑えたい場合は「リース」や「テナントの建設協力金」を組み合わせます。 住宅ローンは使えないため、事業用の融資として、建物が生む収入や本業の収益で返済できるかが審査されます。
補助金は後払いで、交付決定の前に着工できないものが多いため、つなぎの資金と工程を最初に組み立てることが重要です。本記事では、調達方法ごとの特徴と、資金計画で確認する点を整理します。
この記事の数値について: 日本政策金融公庫の融資条件は同公庫のWebサイト、補助金は当サイトの 非住宅木造の補助金2026(国土交通省・林野庁の公表資料に基づく)、リースの税務は国税庁の公表資料によります(2026年10月時点)。金利・審査期間・自己資金の割合は金融機関や案件で異なるため、本記事では数値を示しません。最新の条件は各金融機関・所管省庁に確認してください。
【比較表】非住宅の建設資金の調達方法
| 方法 | 資金の性格 | 主な特徴 | 注意点 | 向く施主 |
|---|---|---|---|---|
| 民間金融機関の融資 | 借入(返済が必要) | 案件ごとに条件を交渉する | 担保・事業計画・本業の財務を審査される | 取引銀行との関係があり、長期保有する法人 |
| 日本政策金融公庫 | 借入 | 中小企業・小規模事業者向けの政府系の融資 | 制度ごとに限度額・期間が決まっている | 中小企業・創業間もない事業者 |
| 信用保証協会付き融資・制度融資 | 借入(保証付き) | 保証協会の保証で金融機関から借りやすくなる。自治体の制度融資は利子補給等がある場合も | 保証料がかかる。条件は協会・自治体ごとに異なる | 担保・実績が少ない中小企業 |
| 補助金 | 給付(返済不要) | 建設費の一部を補助 | 後払い。交付決定前の着工不可が多い。要件が細かい | 制度の規模・用途要件に合う建物 |
| リース | 使用料の支払い | 初期負担を抑えられる | 総支払額は割高になりやすい。税務・会計の扱いに注意 | 手元資金を本業に回したい法人 |
| テナントの建設協力金 | 預り金(契約に従い返還) | 借り手の資金で建てる | 借り手の撤退リスク。契約設計が重要 | 店舗用地を持つ地主 |
金融機関の融資
日本政策金融公庫(国民生活事業)の一般貸付
政府系の日本政策金融公庫には複数の融資制度があります。代表的な「一般貸付」(国民生活事業)の条件は次のとおりです。
| 区分 | 融資限度額 | 返済期間(うち据置期間) |
|---|---|---|
| 設備資金 | 4,800万円 | 10年以内(2年以内) |
| 特定設備資金 | 7,200万円 | 20年以内(2年以内) |
| 運転資金 | 4,800万円 | 5年以内(特に必要な場合7年以内)(1年以内) |
利率は返済期間や担保の有無によって異なります。中小企業事業など他の事業・制度もあるため、自社がどれに当たるかは公庫に相談してください。
信用保証協会付き融資・自治体の制度融資
信用保証協会が保証することで、民間金融機関から借りやすくなる仕組みです。保証料がかかります。都道府県・市町村の制度融資は、保証料や利子の一部を自治体が負担するものもありますが、対象・条件は自治体ごとに異なります。
審査で見られること
- 返済の原資: 賃貸用なら賃料収入、自社利用なら本業の利益から返済できるか。賃貸用では、営業純利益(NOI:賃料収入から運営費を引いた額)を年間の元利返済額で割ったDSCR(返済余裕率)が使われます。
- 計算例(仮の値): NOI 600万円 ÷ 年間返済額 480万円 = DSCR 1.25
- 基準は金融機関ごとに異なります。指標の使い方は 木造非住宅の事業計画とROIの考え方 を参照してください。
- 自己資金と担保: 土地を担保にできるか、自己資金をどれだけ入れるか。
- 建築費の妥当性: 構造別の比較を添えると、なぜその金額なのかを説明しやすくなります(木造・鉄骨造・RC造の坪単価比較)。
木造の耐用年数と融資期間
木造の法定耐用年数(税法上の年数)は、事務所用24年・店舗用22年・飲食店用20年・倉庫用(一般用)15年です(耐用年数省令 別表第一)。融資期間や担保評価の考え方は金融機関ごとに異なるため、希望する返済期間で組めるかを早い段階で確認します。法定耐用年数は建物の寿命ではありませんが、減価償却の期間と返済の期間がずれると、償却が終わった後に税負担が増えて手元資金が減ることがあります。
補助金
非住宅の木造で使える国の主な制度は、国土交通省の「優良木造建築物等整備推進事業」(普及枠は上限2億円。調査設計計画費のうち木造化に係る費用の1/2以内+掛増し費用の1/3以内)や、林野庁のCLT(直交集成板)建築実証事業などです。いずれも、耐火・準耐火構造が求められる規模などの要件があり、小規模な建物は対象外になることが多い点に注意してください。制度の一覧と要件は 非住宅木造の補助金2026、種類の整理は 補助金の種類 にまとめています。
資金計画で押さえる点は次のとおりです。
- 交付決定の前に着工しない: 多くの制度で、採択・交付決定より前に実施設計や工事に着手すると対象外になります。
- 後払いになる: 工事の完了・実績報告・精算を経て支払われるため、それまでの建設費は自己資金かつなぎ融資で立て替えます。
- 予算年度の条件: 国の制度は年度内の着手・支払いなどの条件があり、工程と合わせる必要があります。
- 税務の扱い: 法人が受け取った補助金は益金になります。建物を取得した場合は圧縮記帳(法人税法42条)で課税を繰り延べられます(圧縮記帳とは)。
- 財産処分の制限: 補助で取得した建物は、一定期間、売却・転用に承認が必要になります。
リース
リース会社が建物を所有し、施主はリース料を払って使う方法です。初期負担を抑えられる一方、リース会社の利益や金利相当分が含まれるため、総支払額は一般に自分で借りて建てるより大きくなります。
税務上の扱い(法人)
「リース料は全額経費になる」と説明されることがありますが、税法上の「リース取引」に当たる場合は、引渡しの時に売買があったものとされます(国税庁 No.5702)。
- 税法上のリース取引の要件: 中途解約が禁止されている(または解約時に残りのリース料のおおむね全部を払う)、かつ借り手がリース資産の経済的な利益を受け、費用を実質的に負担するもの
- 所有権が移転しないリース取引は、リース期間定額法で償却します
- 借り手が賃借料として経理した金額も、償却費として経理した金額に含まれます
結果として毎年の損金の額がリース料と近くなる場合もありますが、契約内容で扱いが変わるため、契約前に税理士に確認してください。
新リース会計基準
企業会計基準委員会(ASBJ)の企業会計基準第34号「リースに関する会計基準」は、2027年4月1日以後開始する事業年度の期首から適用されます(早期適用も可)。借り手は原則としてリースを貸借対照表に資産・負債として計上するため、「オフバランス(貸借対照表に載せない)にできる」という従来の利点は、適用を受ける会社では小さくなります。自社が適用対象かは会計士・税理士に確認してください。
セール・アンド・リースバック
自社で建てた建物をリース会社に売却し、リース契約で使い続ける方法です。建設資金を回収できますが、資産の種類や取引の事情から実質的に金銭の貸借と認められる場合は、税務上、売買はなかったものとされ、金銭の貸付けがあったものとして扱われます(法人税法64条の2第2項)。
テナントの建設協力金
ロードサイド店舗などで、出店する事業者(テナント)が建設資金の一部を地主に預け、地主がその資金で建物を建てて貸す方式です。預かった資金の返還方法(賃料との相殺など)は契約で定めます。地主は借入を抑えられますが、テナントが途中で撤退した場合の取り決めが重要になります(ドラッグストアの建設費と坪単価)。
【チェックリスト】資金計画で確認すること
- 建築費に加え、設計監理費・外構・諸費用(印紙税・登録免許税・不動産取得税など)を総額に入れたか(非住宅の建物にかかる税金まとめ)
- 消費税を控除・還付できる事業か(住宅の貸付けや介護事業は原則できない。介護施設の建設で消費税は還付される?)
- 着工金・中間金・竣工金の支払時期と、融資の実行時期が合っているか
- 補助金を使う場合、交付決定前に着工しない工程になっているか
- 補助金の入金までのつなぎ資金を手配したか
- 返済期間と減価償却の期間のずれで、将来の手元資金が不足しないか
- リースを使う場合、税務・会計の扱いを税理士・会計士に確認したか
工務店が施主の資金調達を支援するときのポイント
- 概算見積を早く出す: 融資の相談や補助金の申請には建設費の根拠が必要です。
- 工程表を資金計画と合わせる: 交付決定の時期、融資の実行時期、支払の時期を一つの表にします。
- 内訳明細を用意する: 補助対象経費の切り分け、建物附属設備の区分、圧縮記帳の計算に使われます。
- 専門家につなぐ: 融資の条件は金融機関、税務は税理士の領域です。工務店は建築の情報提供の範囲で支援します。
自社で建物を持つ法人の検討は 自社ビルの建設費と予算の立て方 も参照してください。
よくある質問(FAQ)
Q. 補助金だけで建てられますか? A. 補助金は建設費の一部で、しかも後払いです。自己資金か融資で全額を立て替える前提で計画します。
Q. 日本政策金融公庫で借りられる上限は? A. 国民生活事業の一般貸付では、設備資金4,800万円、特定設備資金7,200万円が限度です。他の制度・事業もあるため、公庫に確認してください。
Q. リースは借入より得ですか? A. 初期負担は小さくなりますが、総支払額は一般に大きくなります。税法上はリース取引が売買とされる場合が多く、「全額経費」とは限りません。資金繰りと総額の両方で比べます。
まとめ
| 方法 | ポイント |
|---|---|
| 融資 | 返済の原資(NOI・本業の利益)とDSCRで審査。公庫の一般貸付は設備資金4,800万円・10年以内など |
| 補助金 | 交付決定前の着工不可・後払い。つなぎ資金が必要 |
| リース | 初期負担は小さいが総額は大きい。税法上は売買とされる場合がある |
| 建設協力金 | テナントの資金で建てる。撤退時の取り決めが重要 |
非住宅木造の資金計画をご検討中の事業者様は、融資・補助金の相談に使える概算見積の作成からお気軽にご相談ください。
出典・参考
- 日本政策金融公庫「一般貸付」(国民生活事業): https://www.jfc.go.jp/n/finance/search/jiyusij_m.html
- 国税庁 タックスアンサー No.5702「リース取引についての取扱いの概要(平成20年4月1日以後契約分)」: https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/hojin/5702.htm
- 国税庁 法人税基本通達 第12章の5 第1款「金銭の貸借とされるリース取引の判定」: https://www.nta.go.jp/law/tsutatsu/kihon/hojin/12_5/12_5_03_01.htm
- 企業会計基準委員会「企業会計基準第34号 リースに関する会計基準」: https://www.asb-j.jp/jp/accounting_standards_system/details.html?topics_id=157
- 減価償却資産の耐用年数等に関する省令(e-Gov法令検索)別表第一: https://laws.e-gov.go.jp/law/340M50000040015
- 補助金の内容: 当サイト「非住宅木造の補助金2026」(国土交通省・林野庁の公表資料に基づく)

