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市場動向13分で読めます2026-03-10

公共建築物等木材利用促進法の解説 — 自治体発注を狙うには

公共建築物等木材利用促進法の解説 — 自治体発注を狙うには

※ 画像はイメージです

はじめに — 国が「公共建築物は原則木造」と定めた法律がある

「公共建築の仕事は大手ゼネコンのもの」と思い込んでいる工務店経営者は少なくありません。しかし、国は2010年に「公共建築物等における木材の利用の促進に関する法律」を制定し、低層の公共建築物は原則として木造化する方針を打ち出しています。

2021年の改正では対象が「公共建築物」から「建築物一般」に拡大され、民間建築物への波及効果も期待されています。林野庁の資料によると、公共建築物の木造率は2015年の11.7%から2024年には約15.3%まで上昇しており、自治体発注の木造案件は確実に増加傾向にあります。

この法律を理解し、戦略的に動くことで、地域の工務店にも自治体案件を獲得するチャンスが広がります。本記事では、法律の概要から具体的な案件獲得方法まで、実務に役立つポイントを解説します。

法律の概要 — 2010年制定、2021年改正で「建築物一般」に拡大

法律制定の背景

日本の森林蓄積量は約52億立方メートルに達しており、年間成長量は約7,000万立方メートルです。しかし、木材の国内自給率は約40%にとどまり、特に建築分野での木材利用拡大が課題となっていました。

こうした背景から、2010年に「公共建築物等における木材の利用の促進に関する法律」が制定されました。国と地方公共団体が率先して木材を利用し、民間にも波及させることが狙いです。

2021年改正のポイント

2021年の改正では、法律名が「脱炭素社会の実現に資する等のための建築物等における木材の利用の促進に関する法律」に変わり、以下の3点が大きく変更されました。

項目改正前(2010年)改正後(2021年)
対象範囲公共建築物建築物一般(民間含む)
目的木材利用の促進脱炭素社会の実現
民間への措置努力規定建築主の努力義務を明記

改正により、自治体は木材利用促進の方針をより積極的に策定・公表する義務を負うことになりました。これは工務店にとって、自治体の方針を事前に把握しやすくなるメリットがあります。

対象となる建築物 — 低層(3階以下)の公共建築物は原則木造化

法律の基本方針では、低層(3階建て以下)の公共建築物は原則として木造化・木質化を図ることとされています。具体的な対象は以下のとおりです。

木造化の対象となる主な公共建築物

  • 学校(校舎、体育館、給食センター)
  • 社会福祉施設(保育所、老人福祉施設)
  • 公営住宅
  • 公民館・集会所
  • 庁舎(小規模なもの)
  • 図書館・美術館
  • 消防署・警察署(低層部分)

一方、災害時の拠点となる防災施設や、高度な耐火性能が求められる施設については、木造化の対象外とされるケースもあります。ただし、内装の木質化(壁・天井・床への木材使用)は規模や用途を問わず推進されています。

対象規模の目安

階数延床面積木造化の方針
3階以下3,000平米以下原則木造化
3階以下3,000平米超木造化を検討
4階以上問わず内装木質化を推進

自治体ごとの方針の違い — 都道府県の木造化推進計画

法律に基づき、すべての都道府県と多くの市町村が「木材利用促進に関する方針」を策定しています。しかし、その内容や積極性には自治体間で大きな差があります。

先進的な自治体の例

木造化に特に積極的な自治体では、独自の上乗せ基準を設けています。

  • 高知県: 県有施設は原則すべて木造化。木造率は全国トップクラスの約30%
  • 秋田県: 県産材使用を入札条件に加え、地元工務店の参入を後押し
  • 長野県: 信州カラマツ材の活用を推進。「信州木材認証制度」で品質を担保
  • 熊本県: 震災復興を機に木造公共施設の整備を加速

自治体の方針は各自治体のホームページや林務課で確認できます。受注を狙う自治体の方針を事前に読み込み、木造化率の目標値や重点施設を把握しておくことが、案件獲得の第一歩です。

工務店が自治体案件を取るための方法

自治体案件を受注するには、民間住宅とは異なるアプローチが必要です。以下の3つのステップを押さえましょう。

ステップ1: 入札参加資格を取得する

自治体の建築工事を受注するには、「競争入札参加資格」の登録が必須です。多くの自治体では2年に1度の定期受付を行っています。

登録に必要な主な要件は以下のとおりです。

  • 建設業許可(建築一式工事業)
  • 経営事項審査(経審)の総合評定値
  • 技術者の配置(1級建築士または1級建築施工管理技士)
  • 安全衛生管理体制の整備

経審の評点が低い小規模工務店の場合、まずは1,000万円以下の小規模案件から実績を積むのが現実的です。

ステップ2: 木造非住宅の実績をつくる

自治体の総合評価方式の入札では、「過去の木造非住宅の施工実績」が加点要素になることがあります。民間の木造非住宅(店舗、事務所、倉庫など)の実績を意識的に積み上げましょう。

実績として評価されやすい案件の例は以下のとおりです。

  • 延床面積200平米以上の木造非住宅
  • 準耐火構造以上の木造建築
  • 公共施設の改修・増築工事(木質化含む)

ステップ3: JV(共同企業体)を活用する

単独での受注が難しい規模の案件でも、JV(共同企業体)を組むことで参加が可能になります。地元の中堅建設会社や構造設計事務所と連携し、木造の技術力を武器に「構成員」として参加するのが有効です。

JVの出資比率は通常30%以上が求められますが、木造の施工ノウハウを持つ工務店は、主力構成員として歓迎されるケースが増えています。

公共木造案件の実例

全国で実際に建設された公共木造建築物の事例を紹介します。

施設名(例)用途構造延床面積建設費目安
A市立こども園保育施設木造平屋約800平米約3億円
B町公民館集会施設木造2階建て約500平米約2億円
C村診療所医療施設木造平屋約300平米約1.5億円
D市図書館文化施設木造2階建て約1,200平米約5億円
E町庁舎行政施設木造2階建て約600平米約2.5億円

坪単価で見ると、公共木造建築物は80〜120万円/坪程度が相場です。住宅と比べて高いように見えますが、これは消防設備やバリアフリー対応などの公共施設特有の要件が含まれるためです。構造体としての木造のコストは、S造と比較して15〜25%程度低くなるのが一般的です。

まとめ

公共建築物等木材利用促進法は、地域の工務店にとって新たな市場を切り拓く追い風となる法律です。特に2021年の改正により、木造化の対象が広がり、自治体の取り組みも活発化しています。

自治体案件を獲得するためのポイントを整理すると、以下の3点に集約されます。

  1. 自治体の木材利用方針を確認する — 受注を狙う自治体の方針・目標値を把握し、重点施設を見極める
  2. 入札参加資格と実績を準備する — 経審の取得、木造非住宅の施工実績を計画的に積み上げる
  3. JVや協業を活用する — 単独で難しい案件も、連携によって受注の可能性を広げる

国の方針として「原則木造化」が明確に示されている以上、公共木造市場は今後も拡大が見込まれます。いち早く準備を始めた工務店が、この市場の恩恵を最大限に受けることになるでしょう。

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