非住宅木造Navi
ホームコラム木材利用促進法とは|公共建築物の木造化と自治体案件
市場動向22分で読めます公開日:最終更新日:

木材利用促進法とは|公共建築物の木造化と自治体案件

木材利用促進法とは|公共建築物の木造化と自治体案件

※ 画像はイメージです

公共建築物等木材利用促進法は、国・自治体が率先して公共建築物に木材を使うことを定めた法律で、2010年(平成22年)に制定されました。 2021年10月1日に施行された改正で、題名が「脱炭素社会の実現に資する等のための建築物等における木材の利用の促進に関する法律」(通称:都市(まち)の木造化推進法)に変わり、対象が公共建築物から民間を含む建築物一般に広がりました。改正では、国・自治体と事業者が結ぶ「建築物木材利用促進協定」の仕組みもつくられています。

国の基本方針(2021年10月)は、公共建築物について、計画時点でコストや技術の面で木造化が困難なものを除き、積極的に木造化を促進するとしています。改正前の基本方針が対象としていた「耐火建築物とすることなどが求められない低層の公共建築物」より広い範囲です。林野庁によると、2024年度(令和6年度)に着工された公共建築物の木造率(床面積ベース)は全体で15.9%、3階建て以下の低層では33.4%でした。

法律の変遷|2010年制定、2021年改正

項目2010年制定時2021年10月1日施行の改正後
題名公共建築物等における木材の利用の促進に関する法律脱炭素社会の実現に資する等のための建築物等における木材の利用の促進に関する法律(都市の木造化推進法)
対象公共建築物建築物一般(民間を含む)
目的公共建築物での木材利用の促進目的に「脱炭素社会の実現に資する」ことを明示。基本理念を新設
基本方針を定める者農林水産大臣・国土交通大臣木材利用促進本部(本部長:農林水産大臣)
新しい仕組み―建築物木材利用促進協定、木材利用促進の日(10月8日)・木材利用促進月間(10月)

出典:林野庁「都市(まち)の木造化推進法」、同法本文。

法律の主な中身|工務店に関係する条文

条文中身工務店・施主への意味
4条・5条(国・地方公共団体の責務)国・自治体は、整備する公共建築物での木材の利用に努めなければならない自治体の施設で木造・木質化の発注が出やすい
6条(事業者の努力)事業者は、事業活動に関し木材の利用の促進に自ら努めるとともに、国・自治体の施策に協力するよう努める民間の施主にも木材利用の努力が求められる
10条(基本方針)木材利用促進本部が基本方針を定め、国が整備する公共建築物の木材利用の目標などを定める国の施設の木造化の範囲・目標の根拠
11条・12条(都道府県方針・市町村方針)都道府県・市町村は、域内の建築物での木材利用の方針と、自ら整備する公共建築物の木材利用の目標を定めることができる狙う自治体の方針・目標を読めば、重点施設がわかる
15条(建築物木材利用促進協定)国・自治体と事業者等が、事業者が建築主の建築物での木材利用の構想と、その達成のための支援について協定を結べる。国は協定の内容を公表する施主の事業者が協定を結び、木材利用を対外的に示せる

出典:脱炭素社会の実現に資する等のための建築物等における木材の利用の促進に関する法律(林野庁掲載の法律本文)。

都道府県方針・市町村方針は「定めることができる」とされた任意の方針で、内容は自治体ごとに異なります。林野庁は都道府県方針の改定状況と市町村方針の策定状況を公表しています。

基本方針が示す「積極的に木造化を促進する公共建築物」

2021年10月の基本方針は、次のように整理しています。

  • 対象:国・自治体が整備する公共建築物のほか、学校、社会福祉施設(老人ホーム・保育所・福祉ホームなど)、病院・診療所、運動施設(体育館・水泳場など)、社会教育施設(図書館・青年の家など)、公共交通機関の旅客施設などの、公共性が高いと認められる建築物
  • 範囲:計画時点でコストや技術の面で木造化が困難なものを除き、積極的に木造化を促進する
  • 混構造:木造と非木造の混構造(部材単位の木造化を含む)が、耐火性能や構造強度の確保、設計の自由度の点で合理的な場合もあるため、その採用も積極的に検討する
  • 対象外:災害時の活動拠点室を持つ施設、刑務所等の収容施設、危険物を扱う施設、博物館の収蔵・展示施設など、機能の面で木造化になじまない、または困難な施設。ただし、判断は施設を構成する建物ごとに行う
  • 木質化:木造化が困難と判断されるものも含め、内装などの木質化を促進する

改正前の基本方針(2010年策定、2017年変更)は、法令で耐火建築物とすることや主要構造部を耐火構造とすることが求められていない低層の公共建築物を、積極的に木造化を促進する対象としていました。「3階以下・3,000㎡以下は原則木造」のような面積の線引きは、基本方針にはありません。

混構造の考え方は 混構造のデメリットとメリット で詳しく扱っています。

公共建築物の木造率の推移

年度公共建築物全体の木造率低層(3階建て以下)の木造率
2010年度(法制定時)8.3%―
2019年度(令和元年度)13.8%―
2023年度(令和5年度)14.8%30.6%
2024年度(令和6年度)15.9%33.4%

出典:林野庁「都市(まち)の木造化推進法」(2010年度・2019年度)、林野庁「公共建築物の木造率について」(2023年度・2024年度。床面積ベース、着工ベース)。2024年度に木造率が最も高かった都道府県は三重県で、全体39.0%、低層72.2%でした。

低層の公共建築物では3分の1が木造になっている一方、全体ではまだ15%台で、伸びる余地があります。民間を含む非住宅全体の木造率は 木造非住宅とは?市場・法規・コスト・課題 で整理しています。

建築物木材利用促進協定|民間の施主にも使える仕組み

建築物木材利用促進協定は、国または自治体と、事業者・事業者団体が、建築物での木材利用の構想と、その達成のための国・自治体の支援(情報提供など)を定めて結ぶ協定です(法15条)。国は協定の内容をインターネットなどで公表し、協定に基づく取組の評価・公表や、必要な支援を行うとされています。

林野庁は、国と結ばれた協定と、自治体と結ばれた協定の一覧を公表しています。施主の事業者に木材利用の方針がある場合、協定の締結を提案材料にできます。地域材・国産材の使い方と証明の仕組みは 地域材・国産材で非住宅木造を建てる を参照してください。

工務店が自治体の木造案件に参加する手順

ステップ1:自治体の方針と発注予定を読む

都道府県方針・市町村方針には、自治体が整備する公共建築物の木材利用の目標が書かれています。あわせて、自治体の発注見通し(公表されている工事の予定)を確認し、木造・木質化の対象になりそうな施設を把握します。

ステップ2:経営事項審査と入札参加資格

国・自治体などが発注する公共工事を直接請け負うには、経営事項審査(経審)を受けている必要があります。対象は1件の請負代金が500万円以上(建築一式工事は1,500万円以上)の工事で、経審の有効期間は審査基準日から1年7か月です(国土交通省 関東地方整備局)。そのうえで、発注者ごとに競争入札参加資格の審査を受けて登録します。受付の時期・有効期間・等級(格付け)の決め方は発注者ごとに違うため、狙う自治体の要領で確認してください。

ステップ3:実績と技術者をそろえる

総合評価方式の入札では、同種・類似工事の施工実績や配置予定の技術者が評価項目になることがあります。評価項目と、どの工事を「同種・類似」と認めるかは入札公告ごとに決まります。民間の木造非住宅(事務所・店舗・福祉施設など)の実績を記録しておくと、参加の条件を満たしやすくなります。

ステップ4:共同企業体(JV)や協業を検討する

単独では参加が難しい規模でも、共同企業体(JV)の構成員として参加できる場合があります。国土交通省の共同企業体運用準則は、出資比率の最小限度の基準を、2社の場合30%以上、3社の場合20%以上としています(発注機関が運用基準で定める)。構成員の資格・組合せの条件は発注者の要領で確認します。

【チェックリスト】自治体の木造案件を狙う前に確認する10項目

  • 狙う都道府県・市町村の木材利用方針と、公共建築物の木材利用の目標を読んだ
  • 自治体の発注見通しで、木造化・木質化の対象になりそうな施設を把握した
  • 建設業許可の業種(建築一式工事など)が、狙う工事に合っている
  • 経営事項審査を受け、有効期間(審査基準日から1年7か月)が切れないよう毎年更新する体制がある
  • 発注者ごとの競争入札参加資格の受付時期と、等級の決め方を確認した
  • 配置できる主任技術者・監理技術者の資格と人数を把握した
  • 民間の木造非住宅の実績(用途・構造・規模・竣工年)を一覧にしている
  • 準耐火構造など、公共施設で求められやすい防耐火の設計・施工の経験がある
  • JVや設計事務所・構造設計者との協業の相手を決めている
  • 地域材の指定がある場合に、産地・合法性の証明を出せる調達先がある

よくある質問(FAQ)

Q. 公共建築物等木材利用促進法は今も有効ですか。 A. 有効です。2021年10月1日施行の改正で題名が「脱炭素社会の実現に資する等のための建築物等における木材の利用の促進に関する法律」に変わり、法律番号(平成22年法律第36号)は同じまま、対象が建築物一般に広がりました。

Q. 民間の建物にも木材利用の義務がありますか。 A. 義務ではなく努力です。法6条は、事業者が事業活動に関し木材の利用の促進に自ら努めることなどを定めています。民間の建築主は、国・自治体と建築物木材利用促進協定を結び、木材利用の構想を示すこともできます。

Q. 公共建築物は必ず木造になりますか。 A. なりません。基本方針は、コストや技術の面で木造化が困難なものや、機能の面で木造化になじまない施設を除いて、積極的に木造化を促進するとしています。木造化しない場合も、内装などの木質化が促進されます。

Q. 小さな工務店でも自治体の木造案件に参加できますか。 A. 参加の条件を満たせば可能です。経営事項審査と入札参加資格の登録が前提で、規模の大きい案件はJVの構成員として参加する方法もあります。条件は発注者・案件ごとに違うため、入札公告で確認してください。

まとめ

  • 公共建築物等木材利用促進法(2010年)は、2021年10月1日施行の改正で都市の木造化推進法になり、対象が建築物一般に拡大
  • 国の基本方針は、コスト・技術の面で困難なものを除き、公共建築物の木造化を積極的に促進。混構造の採用も検討対象
  • 公共建築物の木造率は2024年度に全体15.9%、低層33.4%(林野庁)
  • 自治体案件は、方針の確認 → 経審・入札参加資格 → 実績と技術者 → JV・協業の順で準備する

※ 本記事は一般的な制度の説明です。入札の条件は発注者の要領・入札公告で、制度の最新情報は林野庁・国土交通省の公表資料で確認してください。

出典・参考

ご相談イラスト

お困りのことはありませんか?

非住宅木造の設計・施工・参入についてお気軽にご相談ください。専門スタッフが過去事例をもとにアドバイスさせていただきます。

お問い合わせ
非住宅木造 参入セミナー(無料オンライン)無料で申し込む