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木造アパート経営の失敗パターン|利回り計算の落とし穴と対策

木造アパート経営の失敗パターン|利回り計算の落とし穴と対策

※ 画像はイメージです

木造アパート経営の失敗で多いのは、広告や提案書の「表面利回り」だけで判断し、空室・管理費・修繕費・税金・保険料・ローン返済を差し引いた手残りを確かめないまま建てることです。 表面利回りが高く見えても、経費を引いた実質利回りは大きく下がり、返済後の手残りはさらに小さくなります。

失敗を避けるには、実質利回りと返済後のキャッシュフロー(手元に残る現金)で試算し、空室・家賃下落・金利上昇が起きても返済できるかを確かめます。本記事では、利回りの計算方法、仮の値で作った収支の計算例、見落としやすいコストとリスクを整理します。

この記事の数値について: 計算例の建築費・家賃・経費率・金利はすべて計算用の仮の値で、実績や相場の集計値ではありません。建築費は当サイトの 建築の坪単価一覧 の一般的な目安(共同住宅(賃貸)木造70〜95万円/坪、RC造105〜140万円/坪)の範囲で置いています。税制は国税庁、統計は総務省の公表資料によります。

【早見表】木造アパート経営のよくある失敗と対策

失敗のパターン何が起きるか対策
表面利回りだけで判断経費・返済を引くと手残りがほとんど残らない実質利回りと返済後のキャッシュフローで試算する
満室が続く前提空室・入れ替え期間で収入が減る空室率を置いた計画にする
家賃が下がらない前提築年数とともに家賃が下がり、返済が苦しくなる家賃の下落を見込んだ長期の収支表を作る
修繕費を積み立てない外壁・屋根・設備の更新時に資金が足りない毎年の収入から修繕の資金を確保する
「家賃保証」を過信サブリース賃料が減額される契約の賃料見直し条項と、減額され得ることを確認する
消費税を戻せる前提建築費の消費税が控除できない住宅の貸付けは非課税と理解して資金計画に入れる
減価償却の終わりを考えない経費が減り税負担が増え、手残りが減る返済期間と償却期間のずれを試算する
金利上昇を見込まない変動金利の返済額が増える金利が上がった場合でも返済できるか確認する

表面利回りと実質利回り

指標計算式使い方
表面利回り年間家賃収入(満室)÷ 物件取得価格 × 100広告で使われる入口の指標
実質利回り(年間家賃収入 − 空室損 − 年間経費)÷(物件取得価格 + 取得時の諸費用)× 100投資の判断に使う
返済後のキャッシュフロー営業純利益(NOI)− 年間の元利返済額手元に残る現金。借入がある場合に必ず見る

営業純利益(NOI)は、家賃収入から空室損と運営の経費(管理費・修繕費・税金・保険料など)を引いた額です。

【計算例】木造アパートの収支(すべて仮の値)

前提(仮の値)

  • 木造2階建て・延床100坪・8戸
  • 建築費 8,000万円(坪80万円。目安70〜95万円の範囲)、取得時の諸費用 400万円
  • 家賃 月7.5万円 × 8戸 = 月60万円(年720万円)
  • 空室損 10%、管理委託費 家賃の5%、修繕費の積立 家賃の7%
  • 固定資産税・都市計画税: 建物の評価額を建築費の6割と置き、1.4%+0.3%
  • 火災保険・地震保険: 年22万円
  • 借入 7,500万円・金利1.5%(固定)・30年元利均等返済

年間の収支

項目金額(仮)
家賃収入(満室)720万円
空室損(10%)▲72万円
管理委託費(5%)▲36万円
修繕費の積立(7%)▲50.4万円
固定資産税・都市計画税(8,000万円×0.6×1.7%)▲81.6万円
火災保険・地震保険▲22万円
営業純利益(NOI)458万円
ローン返済(年間)▲約310.6万円
返済後のキャッシュフロー(税引前)約147万円
  • 表面利回り: 720 ÷ 8,000 = 9.0%
  • 実質利回り: 458 ÷(8,000 + 400)= 約5.45%
  • 返済後のキャッシュフローは、ここから所得税・住民税(または法人税)を払った残りです。

表面利回り9.0%でも、手元に残る現金は年約147万円です。空室が20%になると家賃収入はさらに72万円減り、手残りは約75万円まで下がります。空室・家賃下落・金利上昇の組み合わせで、手残りがマイナスにならないかを確かめておきます。

RC造と比べると(すべて仮の値)

同じ延床100坪・8戸をRC造で建てた場合を、同じ経費の置き方で比べます。RC造の家賃は木造より少し高く置いています(月65万円)。

項目木造RC造
建築費(坪単価の目安の範囲で仮置き)8,000万円(坪80万円)1億2,250万円(坪122.5万円)
取得時の諸費用(仮)400万円600万円
家賃収入(満室・年)720万円780万円
経費(空室損を含む)262万円約318.6万円
NOI458万円約461.4万円
表面利回り9.0%約6.37%
実質利回り約5.45%約3.59%

この置き方では、家賃が少し高くても、建築費の差を埋めるほどではありません。ただし、RC造は法定耐用年数が長く、立地によっては家賃を高く設定できるなど、条件で結果は変わります。自分の立地の家賃相場と見積で試算し直すことが前提です。構造別の建築費は 木造アパートの建築費と坪単価 を参照してください。

見落としやすいコストとリスク

空室

令和5年住宅・土地統計調査では、全国の空き家は900万2千戸、空き家率(総住宅数に占める空き家の割合)は13.8%で、いずれも過去最高でした。これは賃貸住宅だけの空室率ではありませんが、住宅が余っている地域が多いことを示しています。新築時は満室でも、築年数とともに空室と家賃下落が進む前提で計画します。

修繕費

外壁・屋根・防水・給排水設備などは、年数とともに更新が必要になります。費用と時期は建物の仕様で大きく変わるため、施工者に長期の修繕計画を出してもらい、毎年の収入から資金を確保します(木造の非住宅は何年もつ?耐久性・メンテナンス・LCC)。

サブリース(家賃保証)の減額

サブリース業者が一括で借り上げる契約でも、借地借家法32条に基づき、契約の条件にかかわらず家賃が減額され得ます。賃貸住宅管理業法のもとで、サブリース業者には、「家賃保証」などの文言を広告で使う場合は家賃が減額され得ることなどを表示し、契約前にはオーナーに書面で説明することが求められています(サブリース規制は令和2年12月15日施行)。「30年家賃保証」といった言葉だけで判断せず、賃料見直しの条項と解約条件を確認してください。

消費税

住宅の貸付けは消費税が非課税です(貸付期間が1か月未満の場合などを除く)。そのため、居住用賃貸建物(税抜1,000万円以上)の取得にかかる消費税は、令和2年10月1日以後、原則として仕入税額控除ができません(消費税法30条10項)。建築費の消費税は戻らない前提で資金計画を組みます。

減価償却が終わった後

木造の住宅用の法定耐用年数は22年(RC造は47年)です。毎年の償却費が大きいぶん早い時期の税負担は軽くなりますが、償却が終わると経費が減り、税負担が増えます。借入の返済が30年続く計画では、償却が終わった後に「帳簿上は利益が出ているのに手元の現金が減る」状態になり得るため、返済期間と償却期間のずれを試算します(非住宅木造の減価償却)。

【チェックリスト】建てる前に確認すること

  • 周辺の家賃相場と空室の状況を、複数の管理会社に確認したか
  • 表面利回りではなく、実質利回りと返済後のキャッシュフローで試算したか
  • 空室率・家賃下落・金利上昇を入れた長期の収支表があるか
  • 修繕の時期と費用を施工者に確認し、資金を確保する計画があるか
  • 固定資産税・都市計画税・保険料を経費に入れたか
  • サブリースを使う場合、賃料見直しの条項と解約条件を読んだか
  • 建築費の消費税が控除できないことを資金計画に入れたか
  • 償却が終わった後の税負担と手残りを税理士と試算したか

工務店が土地オーナーに説明するときのポイント

  1. 表面利回りだけで説明しない: 実質利回りと返済後のキャッシュフローを並べて示すと、信頼につながります。
  2. 長期の収支表を出す: 修繕・家賃下落・償却の終わりまで含めた表を、オーナーの税理士と一緒に確認します。
  3. 構造の比較は条件をそろえて示す: 建築費の目安・家賃・経費の置き方をそろえ、どこが違うかを説明します。

事業計画書の組み立て方は 木造非住宅の事業計画とROIの考え方、土地活用の選択肢は 土地活用の選択肢を比較 を参照してください。

よくある質問(FAQ)

Q. 表面利回りが何%なら安心ですか? A. 表面利回りだけでは判断できません。同じ表面利回りでも、空室・経費・借入条件で手残りは大きく変わります。実質利回りと返済後のキャッシュフローで判断してください。

Q. 木造アパートはRC造より有利ですか? A. 建築費の目安が低いため、同じ家賃なら利回りは高くなりやすい一方、家賃設定や立地、法定耐用年数の違いで結果は変わります。条件をそろえて試算してください。

Q. 家賃保証があれば空室の心配はいりませんか? A. サブリースの賃料も、借地借家法に基づき減額され得ます。契約前に賃料見直しの条件を確認してください。

まとめ

観点ポイント
指標表面利回りではなく、実質利回りと返済後のキャッシュフロー
経費空室・管理費・修繕・固定資産税・保険料を入れる
リスク家賃下落・金利上昇・サブリース減額を見込む
税建築費の消費税は原則控除できない。償却後の税負担に注意

木造アパートの計画をご検討中のオーナー様・事業者様は、建築費の概算と収支の試算からお気軽にご相談ください。

出典・参考

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