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市場動向12分で読めます2026-03-29

2025年建築基準法改正の全容 — 4号特例縮小で工務店はどう変わる

2025年建築基準法改正の全容 — 4号特例縮小で工務店はどう変わる

※ 画像はイメージです

はじめに — 2025年4月、建築基準法が大きく変わった

2025年4月、建築基準法の大幅な改正が施行されました。中でも業界に大きなインパクトを与えたのが、いわゆる**「4号特例」の縮小**です。

この改正により、これまで構造計算や省エネ計算の審査が免除されていた小規模住宅にも、新たに審査が求められるようになりました。住宅を主力とする工務店にとっては、業務フローの見直しが必要な大きな転換点です。

一方で、この改正は**非住宅木造に取り組む工務店にとっては「追い風」**でもあります。本記事では、改正の内容をわかりやすく整理し、工務店経営への影響と対応策を解説します。

4号特例とは何だったのか

4号特例とは、建築基準法第6条第1項第4号に該当する建築物(いわゆる「4号建築物」)について、建築確認申請時に構造関係の審査を省略できる制度でした。

具体的には、以下の条件を満たす建築物が対象でした。

  • 木造2階建て以下
  • 延べ面積500m2以下
  • 高さ13m以下、軒の高さ9m以下

日本の住宅の大多数がこの条件に該当するため、実質的に一般的な木造住宅は構造計算書の提出なしで建築確認が下りていたのです。

この制度は、住宅建設の迅速化・コスト削減に貢献した一方で、「構造計算をしなくても建てられる」という誤解を生み、品質面での懸念が指摘されてきました。2016年の熊本地震で、新耐震基準の木造住宅でも倒壊事例が発生したことが、改正議論を加速させた要因の一つです。

改正の内容 — 新2号・新3号建築物の分類

改正後は、旧4号建築物が**「新2号建築物」と「新3号建築物」**に再分類されました。

分類対象となる建築物構造関係の審査省エネ基準適合
新2号建築物木造2階建て以上、または200m2超必要(構造計算書の提出)必要
新3号建築物木造平屋かつ200m2以下従来通り省略可能必要

つまり、2階建て以上の木造住宅や200m2を超える木造建築物は、すべて構造計算書の提出が必要になりました。

具体的に何が変わったのか

改正前後の変化を整理すると、以下のようになります。

項目改正前(4号特例あり)改正後(新2号)
構造計算書提出不要提出必要
省エネ計算提出不要提出必要
確認申請の図書簡略化詳細な図面が必要
審査期間短い従来より長くなる
中間検査地域により省略可原則必要

工務店への具体的な影響

この改正は、住宅を主力とする工務店に以下のような影響を与えます。

構造計算コストの増加

これまで構造計算を行わずに済んでいた2階建て住宅でも、構造計算が必要になりました。外注する場合の費用は1棟あたり20〜40万円が相場です。年間30棟の住宅を手がける工務店であれば、年間600〜1,200万円の新たなコストが発生する計算になります。

確認申請の手間と期間の増加

構造計算書や省エネ計算書を添付することで、申請図書のボリュームは従来の2〜3倍に増加します。審査期間も従来の2〜3週間から4〜6週間に延びる傾向があり、工期全体の見直しが必要です。

人材確保の課題

構造計算を内製化する場合、構造設計ができる人材の確保が必要です。しかし、構造設計技術者は全国的に不足しており、採用は容易ではありません。外注先の確保も競争が激化しています。

施主への説明と価格転嫁

構造計算費用を住宅価格に転嫁する場合、施主への丁寧な説明が必要です。「なぜ今まで不要だったものが必要になったのか」を明確に説明できるかが、受注に影響します。

非住宅木造にとっては追い風

ここからが重要なポイントです。この改正は、非住宅木造に取り組む工務店にとっては明確な追い風です。その理由を3つ挙げます。

理由1: 住宅と非住宅の「構造計算のハードル差」が縮まった

改正前、住宅は構造計算不要、非住宅は構造計算必要という大きな差がありました。この差が「非住宅は面倒だ」という心理的障壁の一因でした。しかし改正後は、住宅でも構造計算が必要になったため、非住宅への参入ハードルは相対的に下がったと言えます。

理由2: 構造計算の体制整備が非住宅に転用できる

住宅の構造計算に対応するために整備した体制(外注先の確保、社内の知識向上)は、そのまま非住宅木造の構造計算にも活用できます。つまり、住宅の法対応コストを非住宅の新規事業にも活かせるのです。

理由3: 住宅の利益率低下を非住宅で補える

構造計算コストの増加により、住宅の利益率は低下します。国土交通省の試算によると、1棟あたり30〜50万円のコスト増が見込まれています。一方、非住宅木造は住宅と比較して受注単価が2〜5倍であり、利益額の絶対値を確保しやすい分野です。住宅の利益率低下を、非住宅の受注で補うという経営戦略は合理的です。

工務店が今すぐ取るべき対応

法改正への対応として、以下の5つを優先的に進めることをおすすめします。

  1. 構造計算の外注先を複数確保する — 繁忙期に依頼が集中するため、最低2〜3社のパートナーを確保しましょう
  2. 省エネ計算ソフトの導入・習熟 — 省エネ基準適合の計算は内製化が効率的です。主要ソフトの費用は年間10〜30万円程度
  3. 確認申請のスケジュールを見直す — 審査期間の延長を織り込んだ工程計画を策定しましょう
  4. 施主向けの説明資料を作成する — 構造計算が義務化された背景と、建物の安全性向上につながるメリットを説明する資料を準備
  5. 非住宅木造の受注体制を整備する — 構造計算体制を活かして、非住宅分野への参入・拡大を検討しましょう

まとめ

2025年4月の建築基準法改正は、工務店にとって負担増であることは間違いありません。しかし、視点を変えれば、この改正は非住宅木造への参入を後押しする転換点でもあります。

  • 4号特例の縮小により、2階建て以上の木造住宅にも構造計算が必要になった
  • 工務店には構造計算コスト(1棟20〜40万円)、申請期間の延長、人材確保といった対応が求められる
  • 一方で、住宅と非住宅の構造計算ハードル差が縮まり、非住宅木造への参入障壁は相対的に低下した
  • 構造計算の体制整備は、非住宅木造の受注にそのまま転用できる

変化をコストとしてだけ捉えるか、新たな事業機会として活用するか。その判断が、今後の工務店経営を大きく左右するのではないでしょうか。

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