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木造でもZEBは実現できます。 ZEB(ネット・ゼロ・エネルギー・ビル)の区分は、資源エネルギー庁の定義で「基準一次エネルギー消費量から何%減らしたか」だけで決まり、木造・鉄骨造・RC造の区別はありません。最初の目標になるZEB Readyは、太陽光発電などの再生可能エネルギーを除いて、基準一次エネルギー消費量から50%以上削減した建築物です。
木造は構造材が熱を伝えにくく、外皮(外壁・屋根・窓など)の断熱を確保しやすい点で有利です。ただし、非住宅の一次エネルギー消費量は空調・照明などの設備で大きく変わるため、ZEBの達成は構造だけでは決まりません。外皮と設備を組み合わせ、計算で確かめながら設計します。
役割分担:この記事は「どう作るか」=技術編です。補助金の区分・申請は ZEB補助金を木造非住宅で活用する を、省エネ基準の義務化は 2025年 省エネ基準適合義務化と木造非住宅 をご覧ください。
ZEBの4つの区分と定義
環境省のZEB PORTALに掲載されている定義(資源エネルギー庁「ZEBロードマップ検討委員会とりまとめ」平成27年12月、「ZEBロードマップフォローアップ委員会とりまとめ」平成31年3月)は次のとおりです。
| 区分 | 再生可能エネルギーを除いた削減率 | 再生可能エネルギーを含めた削減率 | 定性的な定義 |
|---|---|---|---|
| 『ZEB』 | 50%以上 | 100%以上 | 年間の一次エネルギー消費量が正味ゼロまたはマイナス |
| Nearly ZEB | 50%以上 | 75%以上100%未満 | ZEB Readyの要件を満たしつつ、再生可能エネルギーでゼロに近づけた建築物 |
| ZEB Ready | 50%以上 | (要件なし) | 外皮の高断熱化と高効率な省エネ設備を備えた建築物 |
| ZEB Oriented | 事務所等・学校等・工場等は40%以上、ホテル等・病院等・百貨店等・飲食店等・集会所等は30%以上 | (要件なし) | 延べ面積10,000㎡以上が対象。未評価技術(計算プログラムで評価されていない省エネ技術)の導入も要件 |
- 削減率の対象は、空調・換気・照明・給湯・昇降機の一次エネルギー消費量です。OA機器などの「その他一次エネルギー消費量」は含めません。
- 再生可能エネルギーは敷地内のものに限り、自家消費分に加えて売電分も含めます。
ZEB Orientedは延べ10,000㎡以上の大規模建築物向けの区分です。中小規模の木造非住宅で目標にするのは、ZEB Ready → Nearly ZEB → 『ZEB』の順になります。
省エネ基準(BEI)との関係
非住宅の省エネ基準は、BEI(設計一次エネルギー消費量 ÷ 基準一次エネルギー消費量)で判定します。ZEBの削減率と並べると、目標の距離がわかります。
| 水準 | BEIで表すと | 根拠 |
|---|---|---|
| 省エネ基準(延べ300㎡未満) | 1.0以下 | 2025年4月から適合義務 |
| 省エネ基準(延べ300㎡以上) | 工場等0.75/事務所等・学校等・ホテル等・百貨店等0.80/病院等・飲食店等・集会所等0.85 | 中規模は2026年4月、大規模(2,000㎡以上)は2024年4月から |
| 遅くとも2030年度までに目指す水準(ZEB水準) | 事務所等・学校等・工場等0.60/病院等・ホテル等・百貨店等・飲食店等・集会所等0.70 | エネルギー基本計画(2025年2月閣議決定)等 |
| ZEB Ready | 再生可能エネルギーを除いて50%以上の削減 | ZEBの定義 |
国は、2030年度以降に新築される住宅・建築物について、ZEH・ZEB水準の省エネ性能の確保を目指すとしています。ZEB Readyは、この「ZEB水準」よりさらに一段上の削減です。
木造がZEBに向いている点と、その限界
向いている点
- 構造材が熱を伝えにくい:省エネ計算で使う熱伝導率は、天然木材0.12 W/(m・K)、コンクリート1.6、鋼55です(建築研究所の技術情報)。木材はコンクリートの約13分の1、鋼の約460分の1で、柱・梁が熱橋(熱の通り道)になりにくい構造です。
- 壁の中に断熱材を入れやすい:2×4工法は、寸法型式206(厚さ38mm×幅140mm)などの枠材を使えば壁の中の断熱層を厚くでき、外張りの付加断熱とも組み合わせられます。
- ZEB補助の優先枠に関係することがある:環境省のZEB関連補助では、CLTなどの木材を一定量以上使う計画に優先採択の枠が設けられた年度があります(年度の公募要領で確認。詳しくは 非住宅木造の補助金2026)。
限界(構造だけでは決まらない)
- 非住宅のBEIには、照明・換気・給湯・昇降機も入ります。照明や空調の負荷が大きい用途では、外皮の断熱だけで50%削減に届くことはまれで、高効率の設備と制御が必要です。
- 『ZEB』・Nearly ZEBは敷地内の再生可能エネルギーが要件です。階数が多く屋根面積が小さい建物ほど、太陽光発電で賄える割合が小さくなります。
- 鉄骨の梁や接合金物を併用する部分は熱橋になるため、納まりの確認が必要です。
ZEB Readyまでの設計手順
| 手順 | やること | ポイント |
|---|---|---|
| 1. 目標を決める | 用途・延べ面積から目標の区分(ZEB Ready/Nearly ZEB/『ZEB』)を決める | 補助金を使うなら、対象の区分と申請時期をこの段階で確認 |
| 2. 負荷を減らす | 外皮の断熱、窓の性能、日射の遮蔽、自然換気・昼光利用を計画 | 木造の断熱のしやすさが効く段階。PAL*(外周部の年間熱負荷係数)も同時に確認 |
| 3. 設備を高効率にする | 空調・換気(熱交換)・照明(LED・制御)・給湯の機器と制御を選ぶ | 用途ごとに効く設備が違うため、計算で効き方を比べる |
| 4. 計算で確かめる | 標準入力法またはモデル建物法の計算プログラムでBEIと削減率を算定 | 「再生可能エネルギーを除いて50%以上」を確認 |
| 5. 創エネを足す | Nearly ZEB以上を狙う場合、屋根などに太陽光発電を計画 | 敷地内の再生可能エネルギーのみが対象 |
| 6. 表示・認証 | 第三者評価(BELSなど)で省エネ性能とZEBの区分を表示 | 補助金の要件になっている場合がある |
| 7. 運用で確かめる | BEMS(エネルギー管理システム)などで使用量を把握し、設定を見直す | 設計値どおりに使えているかの確認 |
木造で断熱を強める際の基準・仕様の考え方は 非住宅の断熱と省エネ基準 で解説しています。
【チェックリスト】木造でZEBを目指すときの確認事項
- 用途区分と延べ面積から、適用される省エネ基準(BEI)とZEBの目標区分を決めた
- 延べ10,000㎡未満の場合、ZEB Orientedは対象外であることを踏まえて目標を決めた
- 外皮(壁・屋根・床・窓)の仕様を、計算でBEIへの効き方を比べて決めた
- 空調・換気・照明・給湯の機器と制御を、用途の使い方に合わせて選んだ
- 鉄骨・金物を併用する部分の熱橋と、断熱・気密の納まりを確認した
- Nearly ZEB以上を狙う場合、屋根面積から太陽光発電の設置量を検討した
- 補助金を使う場合、公募要領の対象用途・区分・申請時期(原則として着工前)を確認した
- 計算・申請を担当する設計者(ZEBプランナーなど)を決めた
よくある質問
Q. 小さな木造の事務所でもZEB Readyは取れますか。 A. 規模の要件はありません。再生可能エネルギーを除いて基準一次エネルギー消費量から50%以上削減できれば、ZEB Readyです。達成できるかは、用途・設備・外皮の組み合わせで決まるため、計算で確かめます。
Q. ZEB Orientedを目標にできますか。 A. ZEB Orientedは延べ面積10,000㎡以上の建築物が対象です。中小規模の建物では、ZEB Readyから目指します。
Q. ZEBにすると費用はどれくらい増えますか。 A. 外皮・設備・太陽光の仕様と建物の規模で大きく変わるため、一律の金額は示せません。計画ごとに、ZEB仕様と省エネ基準ぎりぎりの仕様の両方で見積を取り、補助金の有無を含めて比べてください。
まとめ
- ZEBの区分は一次エネルギー消費量の削減率で決まり、構造の区別はない。木造でも目指せる
- ZEB Ready=再生可能エネルギーを除いて50%以上削減。Nearly ZEBは再エネを含めて75%以上、『ZEB』は100%以上
- ZEB Orientedは延べ10,000㎡以上が対象
- 木造は外皮の断熱で有利だが、50%削減には高効率設備と制御が必要
- 目標区分 → 外皮 → 設備 → 計算 → 創エネ → 表示の順で進め、補助金は着工前に確認する
※ 本記事は一般的な制度の説明です。個別の計画は、最新の制度・公募要領と設計者・所管行政庁にご確認ください。
出典・参考
- 環境省 ZEB PORTAL「ZEBの定義」 https://www.env.go.jp/earth/zeb/detail/01.html
- 経済産業省 資源エネルギー庁「ZEBロードマップ検討委員会とりまとめ」(平成27年12月) https://www.enecho.meti.go.jp/category/saving_and_new/saving/zeb_report/pdf/report_160212_ja.pdf
- 国土交通省「省エネ基準の概要」 https://www.mlit.go.jp/common/001500252.pdf
- 国土交通省「中規模非住宅建築物 適合義務の省エネ基準が引上げられます!」(2026年4月1日施行。国土交通省 住宅:資料ライブラリー https://www.mlit.go.jp/jutakukentiku/house/04.html 、福井市の掲載版 https://www.city.fukui.lg.jp/kurasi/jutaku/kentikubutu/p072336_d/fil/kokkousyouchirashi.pdf )
- 国土交通省「大規模な非住宅建築物の省エネ基準が変わります」(2024年4月施行) https://www.mlit.go.jp/report/press/content/001519932.pdf
- 環境省 エネ特ポータル「令和8年度予算 及び 令和7年度補正予算 脱炭素化事業一覧」(建築物等のZEB化・省CO2化普及加速事業) https://www.env.go.jp/earth/earth/ondanka/enetoku/2026/
- 建築研究所「平成28年省エネルギー基準に準拠したエネルギー消費性能の評価に関する技術情報(住宅)」第三章第三節(Ver.24、2025年4月) https://www.kenken.go.jp/becc/documents/house/3-3_250401_v24.pdf

