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技術解説15分で読めます2026-07-27

病院は木造で建てられる?19床の壁と、木造で成立する医療施設の範囲

病院は木造で建てられる?19床の壁と、木造で成立する医療施設の範囲

※ 画像はイメージです

はじめに — 「病院 木造」で最初に確認すべきこと

「病院を木造で建てられますか」という相談は増えています。ただ、この質問には建てようとしているものが医療法上の「病院」なのか「診療所」なのかで、答えがまったく変わるという前提があります。

医療法では、入院用のベッドが19床以下なら「診療所」、20床以上なら「病院」と区分されます。名称の違いに見えますが、建築の側から見ると要求される水準が段違いです。

区分病床数建築上の要求
無床診療所(クリニック)0床一般的な非住宅と同等。木造の実例が豊富
有床診療所1〜19床就寝を伴うため防火・避難の要求が上がる。木造の実例あり
病院20床以上医療法の施設基準が全面適用。規模・設備・防災の要求が大きく上がる

結論から言うと、木造が現実的に成立するのは有床診療所(19床以下)までと、介護医療院・回復期を中心とした一部の施設です。20床以上の急性期病院を木造で建てるのは、不可能ではないものの一般的な選択肢とは言えません。

本記事では、その線引きの理由と、それぞれの区分で費用がどう変わるかを整理します。無床クリニックの建設費そのものは 木造クリニックの建設費と坪単価 にまとめています。

なぜ20床を超えると木造が難しくなるのか

理由は4つあります。いずれも「木造だから建てられない」のではなく、木造にする経済的な意味が薄れるという性質のものです。

1. 規模が大きく、耐火要求が最上位に上がる

20床以上の病院は延床が大きくなり、階数も増えます。就寝を伴う用途で規模が上がるほど耐火性能の要求は厳しくなり、木造で満たすには被覆量が増えます。被覆が増えるほど木造のコストメリットは目減りしていきます。

耐火要求の判定は 非住宅木造の耐火基準を完全ガイド の早見表で確認できます。

2. 大スパンと設備スペースが必要になる

手術室、画像診断(CT・MRI)、リハビリ室といった諸室は、柱のない広い空間と重量物の搭載を前提とします。MRIは磁気シールドと重量対策が必要で、床の要求性能が住宅系とはまったく違います。

木造で無柱スパンを飛ばせる範囲はおおむね15mまでで、これを超えると架構コストが急増します(木造の大スパンの限界)。病院はこの限界を超える要求が出やすい用途です。

3. 設備配管が躯体計画を支配する

病院は医療ガス、給排水、空調、非常電源が高密度で走ります。天井懐と縦シャフトを大きく取る必要があり、構造よりも設備が平面と断面を決めます。この条件下では、設備の自由度が高いRC造・S造が選ばれやすくなります。

4. 建て替え計画との相性

既存病院の建て替えは、診療を続けながら段階的に施工することが多く、工区分割と長期の工程管理が前提になります。木造の強みである工期の短さが、そもそも生かしにくい条件です。

では、どこまでなら木造で成立するのか

逆に、次の条件に当てはまる医療・療養系施設は木造の適性が高い領域です。

施設木造適性理由
無床クリニック(内科・整形・小児科等)高い平屋〜2階建て、スパン要求が小さい。実例が最も多い
有床診療所(1〜19床)高い就寝用途だが規模が小さく、準耐火で成立させやすい
介護医療院・療養系高い生活の場としての質が重視され、木質空間の価値が出る
回復期リハビリ主体の施設中程度大型画像診断装置が少なければ成立する
透析クリニック中程度ベッド数は多いが就寝ではない。設備荷重と給水量の検討が必要
急性期病院(20床以上)低い上記4つの理由により、木造の経済合理性が出にくい

歯科は診療科の中でも設備条件が特殊なため、木造歯科医院の建設費と坪単価 に分けて解説しています。複数科をテナント型で集約する場合は 木造メディカルモールの建設費と坪単価 を参照してください。

坪単価はどう上がっていくのか

医療施設の坪単価は、無床クリニックを基準に、入院機能が加わるごとに上がっていくと捉えると見通しが立ちます。

区分木造(2×4)の坪単価押し上げ要因
無床クリニック70〜95万円/坪医療用配管、X線室の防護、待合・受付
有床診療所(1〜19床)上記に +15〜25万円/坪病室、ナースステーション、24時間空調、非常電源、給食・洗濯、防火避難の強化
病院(20床以上)個別試算(一般化できない)診療科構成・画像診断装置・手術室の有無で大きく変動

無床クリニックの坪単価は 非住宅建築の坪単価一覧 のクリニック行と同じ基準です。有床化による加算幅は、病室そのものより「病室があることで必要になる設備」で決まります。24時間空調、非常用電源、ナースコール、汚物処理、給食動線が一式で入るためです。

20床以上について坪単価のレンジを提示していないのは、意図的です。診療科の構成、画像診断装置の種類、手術室の有無で総額が倍近く動くため、平均値を出しても計画の役に立たないからです。この規模は、基本構想の段階で個別に積み上げるほかありません。

20床以上で木造化を狙うときの現実解

「病院だが木材を使いたい」というニーズには、全体を木造にする以外の答えがあります。

混構造

1階をRC造とし、上階を木造にする構成です。設備が集中し重量物が載る低層部をRC造で受け、病室が並ぶ上階を木造にすることで、木造のコストメリットと居住性を部分的に取り込めます。考え方は 混構造で木造非住宅を建てる にまとめています。

内装木質化

構造はRC造・S造のまま、内装に木材を使う方法です。建築費への影響を抑えながら、患者・家族が触れる部分の印象を変えられます。木材利用の政策的な後押しもこの範囲を対象に含みます(公共建築物等木材利用促進法の解説)。

別棟を木造にする

外来棟・リハビリ棟・職員寮・院内保育所といった付属施設を木造で建てる方法です。本館の建て替えより着手しやすく、木造の効果を実感しやすい進め方です。職員確保のための寮については 社員寮・社宅の建設費、院内保育所は 木造保育園の建設費と坪単価 が参考になります。

よくある質問(FAQ)

Q. 木造の病院は法律で禁止されていますか。 A. 禁止されていません。医療法にも建築基準法にも「病院は木造不可」という規定はありません。求められるのは用途と規模に応じた耐火性能・避難安全性であり、これを満たせば構造種別は問われません。実務上のハードルは法規ではなく経済性です。

Q. 有床診療所を木造で建てる場合、何が一番の論点になりますか。 A. 就寝を伴うことによる防火・避難の要求です。自力避難が難しい患者がいる前提で、2方向避難とスプリンクラーの要否を早い段階で所轄消防と詰めてください。福祉施設と共通する考え方なので、福祉施設を木造で設計する実務ガイド が参考になります。

Q. 木造だと感染対策で不利になりませんか。 A. 感染対策は仕上げ材と換気計画で決まるもので、構造種別とは切り離して考えます。床・壁は防水性・清掃性のある仕上げを選び、換気は必要換気回数で設計します。躯体が木造であっても、仕上げの仕様は他構造と同じものを選べます。

Q. 減価償却では木造のほうが有利ですか。 A. 法定耐用年数が短い分、年間の償却費が大きくなるため、開業初期の税負担を抑える方向に働きます。ただし耐用年数は税務上の区分であり、建物の物理的な寿命とは別物です(非住宅木造の減価償却と節税)。

Q. まず何から始めればよいですか。 A. 病床数を決めることです。19床以下か20床以上かで、その後の建築計画がまったく別のものになります。病床数が決まっていない段階で図面を描き始めると、確実に描き直しになります。

まとめ

「病院を木造で」という検討は、19床以下(診療所)か20床以上(病院)かを確定させるところから始まります。木造が経済合理性を持つのは有床診療所までと、介護医療院・回復期などの療養系施設です。

20床以上の病院では、全体を木造にするより、混構造・内装木質化・別棟の木造化という部分的な採用のほうが現実的です。木材を使うこと自体は、規模に関係なく実現できます。

計画中の病床数と診療科が決まっているなら、建設費シミュレーターで概算の当たりを取ったうえで、無料相談で構造の成立性を確認するのが確実です。

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