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社員寮の建物本体の坪単価は、一般的な目安で木造75〜100万円、S造(鉄骨造)90〜120万円、RC造(鉄筋コンクリート造)110〜150万円です。 20〜30室・延床約150坪の寮なら、木造で約1.1億〜1.5億円が本体工事の目安になります(家具・家電、外構、土地は別途)。
社員寮は、建築基準法では多くが「寄宿舎」として扱われ、会社が労働者を住まわせる寮には労働基準法の「事業附属寄宿舎規程」の基準もかかります。この記事では、構造別・規模別の費用と、寮を建てる前に押さえる2つの法令を整理します。
構造別の坪単価(社員寮・宿舎)
| 構造 | 坪単価の目安 | 工期の目安 | 特徴 |
|---|---|---|---|
| 木造2×4 | 75〜100万円/坪 | 6〜10ヶ月 | 2階建てまでの寮に向く |
| S造(鉄骨) | 90〜120万円/坪 | 8〜12ヶ月 | 中高層に対応しやすい |
| RC造 | 110〜150万円/坪 | 12〜18ヶ月 | 遮音・耐火に強いが、重く工期が長くなりやすい |
※ 坪単価・工期は一般的な目安で、公的統計や実績の集計値ではありません。共用の水回りを持つ一般的な寮を想定し、家具・家電・外構・消費税は含みません。サイトの 建築の坪単価一覧 に寮の行はなく、近い用途の「共同住宅(賃貸)」は木造70〜95万円です。
幅の真ん中どうしで比べると、木造はS造より約17%、RC造より約33%低い水準です。
【計算例】室数別の概算建設費(木造2×4・本体工事)
| 規模 | 室数の目安 | 延床面積の目安 | 計算 | 概算建設費 |
|---|---|---|---|---|
| 小規模 | 10室前後 | 約80坪 | 80坪 × 75〜100万円 | 約6,000万〜8,000万円 |
| 標準 | 20〜30室 | 約150坪 | 150坪 × 75〜100万円 | 約1.1億〜1.5億円 |
| 大規模 | 50室以上 | 約300坪 | 300坪 × 75〜100万円 | 約2.3億〜3.0億円 |
延床面積は、個室の広さと、共用のキッチン・浴室・食堂・廊下の取り方で大きく変わります。必要な延床は「個室面積 × 室数 + 共用部」で積み上げます。自社の計画での概算は 非住宅木造の建設費 概算の出し方 で試算できます。
建築基準法上の「寄宿舎」の扱い
共用のキッチン・浴室を使う寮は「寄宿舎」、各戸が玄関・水回りを持つ社宅は「共同住宅」として扱われるのが一般的です(最終的な判断は所管行政庁)。どちらも建築基準法 別表第一(二)項の特殊建築物ですが、かかる規定には違いがあります。
| 項目 | 寄宿舎 | 共同住宅 |
|---|---|---|
| 居室の採光 | 寝室は床面積の1/7以上の採光に有効な開口(照明設備などの措置で1/10まで緩和できる場合あり)(法第28条、令第19条) | 居住のための居室は1/7以上(緩和の扱いも同じ)(同) |
| 防火上の壁 | 防火上主要な間仕切壁を準耐火構造とし、小屋裏・天井裏まで達せしめる(令第114条第2項) | 各戸の界壁を準耐火構造とし、小屋裏・天井裏まで達せしめる(令第114条第1項) |
| 遮音 | 建築基準法の遮音の基準はない(設計で目標を決める) | 各戸の界壁に遮音の基準がある(法第30条) |
| 耐火性能 | 3階以上の階を寄宿舎に使う場合や、2階部分の床面積の合計が300㎡以上の場合は、法第27条により主要構造部に所定の耐火性能が必要 | 同じ |
※ 令第114条には、スプリンクラー設備を設けた部分などの除外があります。法第27条には階数3で延べ面積200㎡未満の例外などがあります。
寄宿舎の居室間の遮音は法令で決まっていないため、プライバシーをどこまで確保するかを発注者と設計者で決めて仕様に落とし込みます。詳細は 木造の防音・遮音性能は大丈夫?、耐火の要否は 非住宅木造の耐火基準 を参照してください。
【早見表】事業附属寄宿舎規程の主な基準
会社が労働者を住まわせる「事業の附属寄宿舎」には、労働基準法第96条にもとづく事業附属寄宿舎規程がかかります。下表は、6か月以上寄宿させる寄宿舎(同規程 第2章)の主な建物の基準です。
| 項目 | 基準(事業附属寄宿舎規程) |
|---|---|
| 寝室の階 | 寝室は地下または3階以上に設けない(主要構造部が所定の耐火性能を持つなどの場合を除く)(第9条) |
| 寝室の広さ | 1人あたり居住面積2.5㎡以上(床の間・押入を除く)、1室16人以下(第19条) |
| 寝室の天井・採光 | 天井高2.1m以上、室面積の1/7以上の有効採光面積の窓(第19条) |
| 階段 | 2階以上の寝室に常時15人以上が寄宿する場合は、屋外の安全な場所に通じる階段を2か所以上(第11条) |
| 廊下 | 片廊下で幅1.2m以上。中廊下にするには幅1.6m以上で耐火構造の建物であることなどが条件(第18条) |
| 防火の区画 | 一棟の延べ面積が1,000㎡を超える場合は、防火壁で1,000㎡以内ごとに区画(耐火構造などの場合を除く)(第10条) |
| 食堂 | 常時30人以上を寄宿させる寄宿舎には食堂を設ける(近くに事業場の食堂がある場合を除く)(第24条) |
| 便所 | 男女別。便房の数は寄宿者100人以下なら15人ごとに1個など(第28条) |
| 非常時の設備 | 火災などを速やかに知らせるベル・拡声器などの設備、消火設備(第13条の2・第14条) |
- 木造の寮は「片廊下」で計画するのが基本になります。中廊下は耐火構造の建物であることが条件のためです(第18条)。
- 常時10人以上の労働者を就業させる事業などで附属寄宿舎を設置・移転・変更する場合は、工事着手の14日前までに計画を労働基準監督署長へ届け出ます(労働基準法第96条の2)。寄宿舎規則の作成・届出も必要です(同法第95条)。
- 建設業で工事の完了時期が決まっている事業の寄宿舎には、別の省令(建設業附属寄宿舎規程)が適用されます。
- 一定の条件で所轄労働基準監督署長の許可を受けて基準を修正して適用できる規定もあります(第36条)。寮に当たるかどうかを含め、計画の初期に労働基準監督署で確認してください。
外国人の技能実習生・特定技能の受入れでは、制度ごとに宿泊施設(寝室の広さなど)の基準があります。最新の運用要領で確認してから面積を決めてください。
法定耐用年数(寄宿舎用・住宅用)
減価償却に使う法定耐用年数は、寄宿舎用・住宅用で次のとおりです(減価償却資産の耐用年数等に関する省令 別表第一)。
| 構造 | 法定耐用年数(寄宿舎用・住宅用) |
|---|---|
| 木造・合成樹脂造 | 22年 |
| 金属造(骨格材の肉厚3mm以下) | 19年 |
| 金属造(3mm超4mm以下) | 27年 |
| 金属造(4mm超) | 34年 |
| 鉄骨鉄筋コンクリート造・鉄筋コンクリート造 | 47年 |
耐用年数が短いほど毎年の減価償却費(費用に計上できる額)が大きくなります。ただし償却できる総額は取得価額で決まっているため、効果は「費用計上の時期が早まる」ことです。区分の判断は税理士に確認してください。詳しくは 非住宅木造の減価償却と節税 を参照してください。
家賃補助と寮を持つ場合の比べ方
人材確保の手段として、住宅手当・家賃補助と自社寮の整備はよく比べられます。
- 家賃補助:初期投資は不要ですが、毎月の固定費として続きます。
- 自社寮:初期投資が必要ですが、建物は資産として残り、減価償却で費用化でき、寮費の収入も得られます。
【計算例】家賃補助の累計を出してみる
仮に1人月3万円の家賃補助を30人に出す場合、3万円 × 30人 × 12か月 = 年1,080万円です。10年続けば約1.1億円になり、上の計算例の標準規模(20〜30室・約1.1億〜1.5億円)と同じ桁になります。実際の比較では、寮の維持管理費・修繕費・固定資産税、寮費の収入、入居率も入れて試算してください。採用・体制づくり全体は 工務店が非住宅に参入するための人材・体制づくり も参照してください。
寮の計画で先に決めること
| 決めること | 判断の軸 | 費用への影響 |
|---|---|---|
| 入居対象 | 新入社員中心か、単身赴任者か、外国人材か | 部屋の広さと共用部の構成が変わる |
| 個室か相部屋か | 定着を優先するなら個室 | 1人あたりの面積が変わる |
| 水回りの配置 | 各室に設けるか、共用にするか | 設備費が最も大きく動く。寄宿舎か共同住宅かの扱いにも関わる |
| 食堂の有無 | 自炊か、給食か(常時30人以上なら規程上の食堂) | 厨房設備と面積が加わる |
| 階数 | 2階建てまでか、3階以上か | 3階以上は寝室の制限と耐火性能の要求が加わる |
| 将来の転用 | 賃貸住宅への転用を見込むか | 間取りと設備の作り方が変わる |
将来、賃貸住宅として貸す可能性があるなら、着工前に間取りと水回りをそれに合わせておく方が安く済みます。寄宿舎から共同住宅への変更は、界壁の遮音・防火など求められる基準が変わる点にも注意が必要です。
よくある質問(FAQ)
Q. 木造で何階建てまで寮を建てられますか? A. 2階建てまでが計画しやすい規模です。3階以上に寝室を置く場合は、事業附属寄宿舎規程の制限(第9条)と建築基準法第27条の耐火性能の両方がかかるため、木造3階建て非住宅は建てられる? もあわせて確認してください。
Q. 寄宿舎と共同住宅はどちらで建てるべきですか? A. 入居者層と費用で選びます。共用の水回りを使う寄宿舎は設備費を抑えやすく、各戸に水回りを持つ共同住宅は独立性が高く、将来の賃貸転用もしやすくなります。界壁の遮音の基準は共同住宅にかかる点も考慮してください。
Q. 退去後にアパートとして貸せますか? A. 共同住宅として計画しておけば転用しやすくなります。投資の視点は 自社ビルを木造で建てる も参考になります。
Q. 寮費はどう決めればよいですか? A. 福利厚生として近隣の賃料より低く設定する企業が多い一方、給与課税の扱いが関わることがあります。寮費の設定は税理士に確認してください。
まとめ
| 項目 | ポイント |
|---|---|
| 坪単価の目安 | 木造75〜100万円、S造90〜120万円、RC造110〜150万円(本体工事) |
| 総額の目安 | 20〜30室・約150坪で木造約1.1億〜1.5億円 |
| 建築基準法 | 寄宿舎は寝室の採光1/7、防火上主要な間仕切壁を準耐火構造に。遮音の基準はない |
| 事業附属寄宿舎規程 | 寝室1人2.5㎡以上、3階以上の寝室の制限、片廊下1.2m以上、30人以上で食堂 |
| 届出 | 工事着手14日前までに計画を労働基準監督署長へ(常時10人以上の事業など) |
| 法定耐用年数 | 寄宿舎用・住宅用で木造22年、RC造47年 |
社員寮・社宅・宿舎の新築・建替えをご検討中の企業様は、概算費用の試算からお気軽にご相談ください。
出典・参考
- 建築基準法(e-Gov法令検索)第27条・第28条・第30条・別表第一: https://laws.e-gov.go.jp/law/325AC0000000201
- 建築基準法施行令(e-Gov法令検索)第19条(居室の採光)・第114条(界壁・間仕切壁): https://laws.e-gov.go.jp/law/325CO0000000338
- 労働基準法(e-Gov法令検索)第95条・第96条・第96条の2: https://laws.e-gov.go.jp/law/322AC0000000049
- 事業附属寄宿舎規程(e-Gov法令検索): https://laws.e-gov.go.jp/law/322M40002000007
- 減価償却資産の耐用年数等に関する省令(e-Gov法令検索)別表第一: https://laws.e-gov.go.jp/law/340M50000040015
- 坪単価・工期・延床面積の目安:公的な統計ではなく、一般的な目安(民間の情報)です

