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ホテル・旅館の建物本体の坪単価は、一般的な目安で木造90〜120万円、S造(鉄骨造)110〜140万円、RC造(鉄筋コンクリート造)130〜170万円です。 客室20〜30室・延床約200坪の中規模施設なら、木造で約1.8億〜2.4億円が本体工事の目安になります(客室内装・厨房・浴場設備・外構・土地は別途)。国の統計(国土交通省「建築着工統計調査」令和7年計)では、「ホテル又は旅館」の工事費予定額は1㎡あたり木造約41.9万円(1坪あたり約138万円)でした。
宿泊施設は客室ごとの水回り・空調・遮音が必要なため、用途のなかでも坪単価が高い部類です。この記事では、構造別・規模別の費用と、旅館業法・建築基準法で押さえるべき要件を整理します。
構造別の坪単価(宿泊施設)
| 構造 | 坪単価の目安 | 工期の目安 | 特徴 |
|---|---|---|---|
| 木造2×4 | 90〜120万円/坪 | 6〜10ヶ月 | 低層の中小規模に向く |
| S造(鉄骨) | 110〜140万円/坪 | 8〜12ヶ月 | 中高層に対応しやすい |
| RC造 | 130〜170万円/坪 | 12〜18ヶ月 | 遮音・耐火に強いが、重く工期が長くなりやすい |
※ 坪単価・工期は一般的な目安で、公的統計や実績の集計値ではありません。一般的なビジネスホテル・中規模旅館の標準仕様を想定し、客室内装・厨房・浴場設備・外構・消費税は含みません。
幅の真ん中どうしで比べると、木造はS造より約16%、RC造より約30%低い水準です。他の用途と並べた一覧は 建築の坪単価一覧、3構造の比較は 木造・鉄骨造・RC造の坪単価比較 にまとめています。
【計算例】客室数別の概算建設費(木造2×4・本体工事)
| 規模 | 延床面積の目安 | 計算 | 概算建設費 |
|---|---|---|---|
| 小規模(10〜15室) | 約120坪 | 120坪 × 90〜120万円 | 約1.1億〜1.4億円 |
| 中規模(20〜30室) | 約200坪 | 200坪 × 90〜120万円 | 約1.8億〜2.4億円 |
| コテージ・グランピング棟 | 1棟あたり10〜20坪 | 10〜20坪 × 90〜120万円 | 1棟あたり約900万〜2,400万円 |
延床面積は客室の広さ・共用部・浴場の有無で大きく変わります。自社の計画での概算は 非住宅木造の建設費 概算の出し方 で試算できます。
国交省の統計で見る「ホテル又は旅館」の構造別単価(令和7年)
建築着工統計調査の令和7年計・第3表(用途別、構造別)から、建築物の用途区分「ホテル又は旅館」の工事費予定額を床面積で割った値です(1坪=約3.306㎡で換算)。
| 構造 | 棟数 | 1㎡あたり | 1坪あたり |
|---|---|---|---|
| 木造 | 1,088棟 | 約41.9万円 | 約138万円 |
| 鉄骨造 | 1,030棟 | 約72.9万円 | 約241万円 |
| RC造 | 338棟 | 約61.4万円 | 約203万円 |
- 統計では鉄骨造の平均がRC造より高くなっています。都市部の大型ホテルなど、規模・仕様の異なる建物がまとめて平均されているためで、構造だけの差ではありません。
- 木造の平均(約138万円/坪)は、上の目安(90〜120万円/坪)より高い水準です。統計は届出時点の予定額で、完成時の額とは異なることが多いと国交省は説明しており、目安表と算定範囲が同じとは限りません。計画の予算は、目安の上限寄りや統計の水準も視野に入れて組むのが安全です。
【早見表】旅館業法の構造設備基準(旅館・ホテル営業)
ホテル・旅館を営業するには、旅館業法にもとづく都道府県知事等の許可が必要で、施設は構造設備の基準に適合しなければなりません(旅館業法第3条、同法施行令第1条)。
| 項目 | 旅館・ホテル営業の基準(施行令第1条第1項) |
|---|---|
| 客室の広さ | 一客室の床面積7㎡以上(寝台を置く客室は9㎡以上) |
| 玄関帳場(フロント) | 宿泊者との面接に適する玄関帳場、その他宿泊者の確認を適切に行う設備(省令の基準に適合) |
| 換気・採光など | 適当な換気、採光、照明、防湿、排水の設備 |
| 入浴設備 | 宿泊者の需要を満たす適当な規模(近くに公衆浴場があるなど支障がない場合を除く) |
| 洗面設備・便所 | 需要を満たす適当な規模の洗面設備、適当な数の便所 |
| 学校等の周辺 | 学校などの敷地の周囲おおむね100mの区域内では、客室等の内部を見通せないようにする設備 |
| 条例 | 都道府県等が条例で定める構造設備の基準にも適合すること |
簡易宿所営業(コテージ・一棟貸しなどで使われることがある営業の種別)は、客室の延床面積33㎡以上(宿泊者数を10人未満とする場合は3.3㎡×宿泊者数以上)など、別の基準です(施行令第1条第2項)。条例の上乗せがあるため、設計の初期に保健所と建築の所管行政庁の両方へ相談してください。
押さえるべき建築基準法のポイント
防火・耐火
ホテル・旅館は、建築基準法 別表第一(二)項の特殊建築物です。3階以上の階をホテル・旅館に使う場合や、2階部分の床面積の合計が300㎡以上の場合は、法第27条により主要構造部に所定の耐火性能が求められます(階数3で延べ面積200㎡未満のものなどの例外があります)。木造でも、石膏ボード等の被覆で準耐火・耐火の性能を確保する設計があります(準耐火構造のしくみ)。用途×規模別の判定は 非住宅木造の耐火基準 を参照してください。
また、ホテル・旅館は用途地域によって建てられない地域があります(建築基準法 別表第二)。土地の検討段階で確認してください。
客室間の遮音
建築基準法第30条の界壁の遮音基準は長屋・共同住宅が対象で、ホテル・旅館の客室間には同条の基準はかかりません。そのため、客室間・上下階の遮音性能は発注者と設計者が目標を決めて仕様に落とし込む必要があります。木造でも、界壁の構成、床の浮き構造、設備配管の縁切りで性能を高められます。詳細は 木造の防音・遮音性能は大丈夫? を参照してください。
法定耐用年数(旅館用・ホテル用)
減価償却に使う法定耐用年数は、旅館用・ホテル用で次のとおりです(減価償却資産の耐用年数等に関する省令 別表第一)。
| 構造 | 法定耐用年数(旅館用・ホテル用) |
|---|---|
| 木造 | 17年 |
| 鉄骨造(骨格材の肉厚4mm超) | 29年 |
| 鉄骨造(3mm超4mm以下) | 24年 |
| 鉄骨造(3mm以下) | 17年 |
| RC造(延べ面積に占める木造内装部分が3割超) | 31年 |
| RC造(上記以外) | 39年 |
※ 省令では「宿泊所用」は旅館用・ホテル用とは別の区分(木造22年、RC造47年など)です。どの区分に当たるかは税理士・所轄の税務署で確認してください。
耐用年数が短いほど毎年の減価償却費(費用に計上できる額)が大きくなり、開業初期の税負担を軽くできます。ただし償却できる総額は取得価額で決まっているため、効果は「費用計上の時期が早まる」ことです。詳しくは 非住宅木造の減価償却と節税 を参照してください。
木造で宿泊施設を建てる主なメリット
1. 建設費と工期を抑えやすい
上の目安では、木造はS造・RC造より坪単価が低く、工期も短い水準です。観光シーズンに合わせた開業や繁忙期前の竣工を狙いやすく、開業までの借入利息も抑えられます。
2. 木質の内装を差別化に使える
木の内装は、温泉地や自然環境の立地で施設の個性を出しやすい要素です。構造が木造であることと、内装に木を見せることは別に計画できるため、見せる場所と防火上の仕上げを設計段階で整理します。
3. 減価償却が短い
旅館用・ホテル用の法定耐用年数は木造17年で、RC造(39年)より短く、開業初期に費用計上を前倒しできます。
4. 増改築・用途転換の検討がしやすい
低層の木造は間仕切りの変更や改修がしやすく、需要の変化に応じた客室の変更も検討しやすい構造です。ただし用途を変える場合は、建築基準法上の用途変更の手続きや防火規制の確認が必要になることがあります。
補助金は、木材利用や省エネに対する助成が宿泊施設でも使える場合があります。非住宅木造に使える補助金・助成金まとめ で最新の制度を確認してください。
木造・S造・RC造でホテルを建てたときの比較
| 項目 | 木造 | S造(鉄骨) | RC造 |
|---|---|---|---|
| 坪単価の目安 | 90〜120万円 | 110〜140万円 | 130〜170万円 |
| 工期 | 短い | 中間 | 長い |
| 階数の適性 | 低層が得意。4階以上は耐火・構造計算の条件が加わる | 中高層まで | 高層まで |
| 遮音性 | 界壁・床の仕様で確保する | 同左 | 躯体の重さで素の性能が高い |
| 法定耐用年数(旅館・ホテル用) | 17年 | 17〜29年 | 31〜39年 |
| 意匠 | 内装に木を見せやすい | 仕上げ次第 | 重厚感 |
客室の遮音は、構造の違いより仕様の作り込みで決まります。 界壁の構成、床の浮き構造、設備配管の縁切りを軽視した計画は、構造にかかわらず苦情につながります。
事業計画の観点
- 低層・客室数が中規模まで → 木造を軸に検討する価値が高い
- 中高層・繁華街の狭小地 → S造またはRC造
- 温泉地・自然環境立地で意匠性を出したい → 木造の内装が効く
構造は「安いから」ではなく、立地と階数、そして事業計画の回収期間から決めるのが順序です。
まとめ
| 項目 | ポイント |
|---|---|
| 坪単価の目安 | 木造90〜120万円、S造110〜140万円、RC造130〜170万円(本体工事) |
| 総額の目安 | 20〜30室・約200坪で木造約1.8億〜2.4億円 |
| 国の統計 | ホテル又は旅館の工事費予定額は木造約41.9万円/㎡(令和7年計)。目安より高い水準 |
| 旅館業法 | 一客室7㎡以上(寝台を置く客室は9㎡以上)など。条例の上乗せに注意 |
| 耐火・遮音 | 3階以上や2階300㎡以上は法第27条の耐火性能。客室間の遮音は法の基準がなく設計で決める |
| 法定耐用年数 | 木造17年、RC造39年(木造内装3割超は31年) |
宿泊施設の新築・建替えをご検討中の事業者様は、概算費用の試算からお気軽にご相談ください。
出典・参考
- 旅館業法施行令(e-Gov法令検索)第1条(構造設備の基準): https://laws.e-gov.go.jp/law/332CO0000000152
- 旅館業法(e-Gov法令検索)第3条: https://laws.e-gov.go.jp/law/323AC0000000138
- 建築基準法(e-Gov法令検索)第27条・第30条・別表第一・別表第二: https://laws.e-gov.go.jp/law/325AC0000000201
- 減価償却資産の耐用年数等に関する省令(e-Gov法令検索)別表第一: https://laws.e-gov.go.jp/law/340M50000040015
- 国土交通省「建築着工統計調査」令和7年計 第3表(用途別、構造別)(e-Stat): https://www.e-stat.go.jp/stat-search/files?page=1&layout=datalist&toukei=00600120&tstat=000001016965&cycle=7&year=20250&month=0&tclass1val=0
- 国土交通省「建築動態統計調査【建築着工統計調査】用語の定義」(工事費予定額の性格): https://www.mlit.go.jp/toukeijouhou/chojou/kentyasetumei.pdf

