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技術解説10分で読めます2026-04-10

木造事務所の建設費と坪単価 — S造との比較シミュレーション

木造事務所の建設費と坪単価 — S造との比較シミュレーション

※ 画像はイメージです

はじめに — 事務所建築に木造が増えている背景

近年、中小企業の本社屋や営業所として木造事務所を選択する企業が増えています。国土交通省の建築着工統計によると、非住宅木造の着工床面積は2020年から2025年にかけて約1.3倍に伸びており、特に事務所用途での増加が目立ちます。

その背景には、建設コストの上昇があります。鉄骨(S造)の資材価格は2020年比で約40%上昇しており、コストメリットのある木造への注目が高まっています。さらに、脱炭素経営やESG投資の観点から「木造オフィス」を選ぶ企業も増加中です。

本記事では、木造事務所の建設費を坪単価で整理し、S造との具体的な比較シミュレーションをお届けします。

木造事務所の坪単価目安

木造事務所の坪単価は、規模や仕様によって幅がありますが、概ね以下の範囲に収まります。

規模・仕様別の坪単価一覧

規模仕様グレード坪単価目安含まれる範囲
30坪以下スタンダード65〜80万円/坪本体+基本設備
30〜50坪スタンダード60〜75万円/坪本体+基本設備
50〜100坪スタンダード55〜70万円/坪本体+基本設備
100坪以上スタンダード50〜65万円/坪本体+基本設備
全規模ハイグレード+10〜15万円/坪木質内装仕上げ等

小規模になるほど坪単価は上がる傾向にあります。これは基礎工事や設備工事に一定の固定費がかかるためです。一方、100坪を超える規模では、スケールメリットが効いて坪単価は下がります。

なお、上記の金額は本体工事費と基本的な電気・給排水設備を含む目安です。外構工事、特殊設備(サーバールーム空調など)、設計料は別途となります。

S造事務所との比較

同じ規模・用途の事務所をS造で建てた場合と比較してみましょう。

比較項目木造(2×4工法)S造
坪単価(本体)55〜75万円/坪75〜100万円/坪
基礎工事費建物重量が軽く低コスト重量があり杭基礎が必要な場合も
工期(50坪の場合)約4〜5ヶ月約5〜7ヶ月
断熱工事費充填断熱で低コスト外断熱が必要で高コスト
年間冷暖房費(50坪)約36〜48万円約48〜72万円
法定耐用年数22年34年
減価償却(年間)建設費の4.5%建設費の2.9%

注目すべきは基礎工事費の違いです。木造は建物重量がS造の約1/3〜1/4と軽いため、地盤が弱い土地でも杭基礎が不要になるケースが多く、基礎工事だけで数百万円の差が出ることがあります。

建設費シミュレーション — 50坪・100坪のモデルケース

シミュレーション条件

  • 2階建て事務所
  • 6地域(東京・大阪相当)
  • 省エネ基準適合
  • 一般的なオフィス仕様(OAフロアなし)

50坪(165m²)事務所の場合

項目木造S造差額
本体工事費3,250万円4,375万円▲1,125万円
基礎工事費250万円450万円▲200万円
断熱・気密工事費200万円400万円▲200万円
設備工事費500万円500万円0円
合計4,200万円5,725万円▲1,525万円
坪単価換算84万円/坪114.5万円/坪

100坪(330m²)事務所の場合

項目木造S造差額
本体工事費6,000万円8,250万円▲2,250万円
基礎工事費400万円800万円▲400万円
断熱・気密工事費350万円750万円▲400万円
設備工事費900万円900万円0円
合計7,650万円10,700万円▲3,050万円
坪単価換算76.5万円/坪107万円/坪

100坪規模では約3,000万円の差が生まれます。この金額差は内装のグレードアップや太陽光発電の導入に充てることもでき、トータルでより高品質な建物を実現できます。

木造事務所のメリット

建設コスト以外のメリット

コスト以外にも、木造事務所には経営者にとって見逃せないメリットがあります。

断熱性能の高さによるランニングコスト削減

先述の比較表の通り、木造事務所は年間の冷暖房費がS造の約60〜70%程度に抑えられます。50坪の事務所で年間12〜24万円の差は、30年間で360〜720万円の差となります。

社員の健康面・生産性への効果

木材に囲まれた空間では、ストレスホルモン(コルチゾール)が低下するという研究結果があります。森林総合研究所の調査では、木質内装のオフィスでは従業員の集中力が約15%向上し、病欠率が約8%低下したというデータが報告されています。

企業イメージの向上

脱炭素やSDGsへの取り組みが企業評価に直結する時代において、木造オフィスは「環境配慮企業」としてのブランディングに寄与します。採用活動においても、木の温もりのあるオフィスは求職者からの評価が高い傾向にあります。

設計上の注意点

柱のない大空間の実現方法

事務所建築では、レイアウトの自由度を確保するために柱のない大空間が求められます。2×4工法では、トラス梁の採用により最大約10mのスパンを確保できます。一般的な事務所の奥行き(8〜10m)であれば、中間に柱を立てずに設計することが可能です。

さらに大きなスパンが必要な場合は、集成材やLVL(単板積層材)を組み合わせることで12m程度まで対応できます。

防火規制への対応

事務所用途の場合、以下の条件で木造が可能です。

条件要求される耐火性能
3階建て以下・3,000m²以下準耐火建築物で可
防火地域内100m²超は耐火建築物が必要
準防火地域内500m²超は準耐火建築物が必要

準耐火建築物は、石膏ボード被覆(メンブレン型)により木造でも実現可能です。追加コストは坪あたり2〜4万円程度で、S造との総額比較では依然として木造が有利です。

まとめ

木造事務所は、S造に比べて坪単価で20〜30万円程度安く建てられるだけでなく、断熱性能によるランニングコスト削減、社員の健康や生産性向上、企業イメージの向上といった多面的なメリットがあります。

50坪規模で約1,500万円、100坪規模で約3,000万円のコスト削減効果は、中小企業にとって非常に大きな差です。工務店として木造事務所の提案力を持つことは、法人顧客の開拓において強力な武器となるでしょう。

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