解体費用の勘定科目と損金算入の時期|建替え・除却の処理
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はじめに|同じ解体でも、結論が3つに分かれる
「古い倉庫を壊して建て替える」。同じ工事に見えても、なぜ壊すのかによって税務上の扱いはまったく変わります。全額その年の経費になることもあれば、一円も経費にならないこともあります。
先に結論を表にします。
| 場面 | 建物の帳簿価額 | 取壊費用 |
|---|---|---|
| 自社の建物を建て替えるために壊す | 取り壊した事業年度の損金 | 同じくその事業年度の損金 |
| 土地と一緒に買い、当初から壊す目的だった | 土地の取得価額に算入 | 土地の取得価額に算入 |
| 土地を売るために壊す(譲渡所得) | 譲渡費用 | 譲渡費用 |
最も誤解が多いのは真ん中です。ここに当たると、支出はいっさい経費にならず、土地の簿価として売却まで残ります。同じ「建てる前後の支出」でも、地盤調査費用の勘定科目とは分かれ方が違うので、あわせて確認してください。
※ 本記事は一般的な取扱いの解説であり、個別の判断は顧問税理士・所轄税務署にご確認ください。
パターン1|自社の建物を建て替えるために壊す
最も多いのがこのケースです。根拠は法人税基本通達7-7-1(取り壊した建物等の帳簿価額の損金算入)です。
法人がその有する建物、構築物等でまだ使用に耐えうるものを取り壊し新たにこれに代わる建物、構築物等を取得した場合(7-3-6に該当する場合を除く。)には、その取り壊した資産の取壊し直前の帳簿価額(取り壊した時における廃材等の見積額を除く。)は、その取り壊した日の属する事業年度の損金の額に算入する。
ここで押さえるべき点は2つあります。
その1。まだ使える建物でも構いません。 通達はわざわざ「まだ使用に耐えうるものを取り壊し」と書いています。老朽化して使えなくなったから壊すのでなくても、除却損は損金になります。
その2。新しい建物の取得価額には乗りません。 「建て替えるのだから新建物の原価だろう」と考えて資産計上してしまう誤りが実務でよく起きます。旧建物の除却は旧建物の話であり、新建物とは切り離して処理します。取壊費用そのものも、原則として取り壊した事業年度の損金です。新建物のほうは自らの取得価額で 構造・用途別の耐用年数 に従って償却していきます。
なお、廃材の売却代金が出た場合、その見積額は帳簿価額から除いて計算します。
パターン2|土地と一緒に買って壊す(ここが一番痛い)
法人税基本通達7-3-6(土地とともに取得した建物等の取壊費等)は、次のように定めています。
法人が建物等の存する土地を建物等とともに取得した場合(中略)において、その取得後おおむね1年以内に当該建物等の取壊しに着手する等、当初からその建物等を取り壊して土地を利用する目的であることが明らかであると認められるときは、当該建物等の取壊しの時における帳簿価額及び取壊費用の合計額(廃材等の処分によって得た金額がある場合は、当該金額を控除した金額)は、当該土地の取得価額に算入する。
つまり、建付地を買って更地にしてから自社倉庫を建てるという王道の進め方をすると、旧建物の簿価も解体費も土地に吸収され、減価償却できないまま残ります。数百万円単位の差が出る論点です。
判断の目安は「おおむね1年以内に着手したか」と「当初から取壊し目的が明らかか」の2点です。ただし国税庁タックスアンサー No.5401(土地とともに取得した建物を取り壊した場合の土地の取得価額)は、当初は事業に使う目的で取得したものの、やむを得ない事情でその使用を諦めた場合には、1年以内の取壊しでも損金にできる旨を示しています。
したがって「1年を過ぎれば必ず損金」でも「1年以内なら必ず土地」でもありません。取得目的をどう立証するかが実質的な論点であり、取扱いが分かれやすい領域です。取得時の稟議書・事業計画・賃貸借の実績など、目的を示す記録を残してください。
パターン3|土地を売るために壊す
土地を売却するために上の建物を取り壊した場合、その取壊し費用と建物の損失額は譲渡費用になります。国税庁タックスアンサー No.3255(譲渡費用となるもの)が、譲渡費用の例として「土地などを売るためにその上の建物を取り壊したときの取壊し費用とその建物の損失額」を明示しています(所得税法33条、所得税基本通達33-7〜8)。
譲渡費用は譲渡所得の計算上、収入金額から差し引かれます。事業の損金・必要経費とは別のルートなので、混同しないでください。
個人事業主の場合
個人事業主が業務の用に供している固定資産を取り壊した場合、その損失は資産損失として必要経費に算入されます(所得税法51条1項)。
ただし注意点があります。不動産所得を生ずべき業務が事業的規模に至らない場合には、資産損失として必要経費に算入できる金額はその年の不動産所得の金額が限度とされます(所得税法51条4項)。貸倉庫を数棟持っているだけといった規模のときに効いてくるため、ここは事案ごとに確認が必要です。
損金算入の「時期」
法人税基本通達7-7-1は「その取り壊した日の属する事業年度」と書いています。契約した日でも支払った日でもありません。
決算をまたぐ解体工事では、期末時点でどこまで進んでいたかが問われます。着手しただけで取壊しが完了していない場合の扱いは事案によるため、期をまたぐ工事は事前に税理士へ相談してください。
なお、まだ壊していなくても、使用を廃止して今後通常の方法で事業の用に供する可能性がないと認められる固定資産は、帳簿価額から処分見込価額を控除した金額を除却損とすることができます(有姿除却、法人税基本通達7-7-2)。「壊す予算が今期は取れない」という場合の選択肢になります。
仕訳例
簿価200万円の旧倉庫を、解体費300万円(税抜)で取り壊し、廃材売却なしの場合。
| 場面 | 借方 | 貸方 |
|---|---|---|
| 建替えのための取壊し(パターン1) | 固定資産除却損 2,000,000/解体費(または修繕費)3,000,000/仮払消費税等 300,000 | 建物 2,000,000/普通預金 3,300,000 |
| 土地取得目的の取壊し(パターン2) | 土地 5,000,000/仮払消費税等 300,000 | 建物 2,000,000/普通預金 3,300,000 |
解体工事は役務の提供なので、いずれの場合も消費税は課税仕入れです。土地の取得価額に算入されても、消費税の扱いは変わりません。この考え方は 地盤調査費用の勘定科目|経費と資産計上の分かれ目と仕訳例 の造成費と同じ構造です。
固定資産税との関係
固定資産税は1月1日時点の状況で課税されます。建物を12月中に取り壊して更地になっていれば、その年度の家屋分は課税されません。翌年1月に持ち越せば1年分課税されます。
住宅を壊すと土地の税負担が跳ね上がるという話がよく知られていますが、あれは住宅用地の特例の話です。倉庫や工場の敷地はもともとその特例の対象ではないため、更地にしたことで土地の税額が急増するという心配は基本的にありません。家屋の課税判定そのものは 倉庫・工場の固定資産税はいくら?家屋の三要件と償却資産税との違い にまとめています。
判断が分かれる論点
- 取得目的の立証:1年以内に壊しても損金にできるか(No.5401のただし書き)は、記録の内容次第です。
- 期をまたぐ解体工事の帰属年度:どの時点で「取り壊した日」とみるかは事案によります。
- アスベストの調査・除去費用:解体に伴うものと、建物を使い続けながら行うものとで整理が変わります。後者は資本的支出か修繕費かという別の論点になります。
- 不動産所得が事業的規模かどうか:資産損失の必要経費算入の限度に影響します。
まとめ
- 解体費用の結論はなぜ壊すかで3つに分かれる
- 建替えのための取壊しは、旧建物の簿価も取壊費用も取り壊した事業年度の損金(法基通7-7-1)。新建物の取得価額には乗せない
- 土地とセットで買い、おおむね1年以内に壊すなど当初から取壊し目的が明らかなら土地の取得価額(法基通7-3-6)
- 売るために壊したなら譲渡費用(タックスアンサーNo.3255)
- 個人事業主は資産損失として必要経費(所法51①)だが、事業的規模でない不動産所得は限度あり
補助金を使って建て替える場合は 圧縮記帳とは?補助金で建てたときの仕訳と償却資産税への影響 を、使える制度そのものは 非住宅木造に使える補助金・助成金まとめ【2026年度】 をご覧ください。建設費の見立ては 非住宅建築の坪単価一覧【2026年版】、更地にした後の地盤の見立ては 地盤調査・地盤改良の費用はいくら?相場と判断の流れ が起点になります。
※ 本記事は一般的な取扱いの解説であり、個別の判断は顧問税理士・所轄税務署にご確認ください。

