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経営戦略17分で読めます2026-09-04

地盤調査費用の勘定科目|経費と資産計上の分かれ目と仕訳例

地盤調査費用の勘定科目|経費と資産計上の分かれ目と仕訳例

※ 画像はイメージです

はじめに|「地盤調査費」という勘定科目は存在しない

倉庫や工場を建てるときにほぼ必ず発生するのが地盤調査費と地盤改良費です。経理担当者が最初につまずくのは、「地盤調査費」という勘定科目が制度上どこにも用意されていないという点です。行き先としてありうるのは、次の4つのどれかです。

処理乗せる先経費になるか
建物の取得価額に算入建物(工事中は建設仮勘定)減価償却を通じて年々経費化
土地の取得価額に算入土地経費にならない(売却時まで残る)
構築物の取得価額に算入構築物減価償却を通じて年々経費化
その事業年度の損金支出時の費用その年に全額経費

同じ「地盤に関する支出」でも、どこに乗せるかで税負担のタイミングが変わります。とくに土地に乗ると減価償却ができないため、影響は一過性では終わりません。

なお本記事は費用の会計処理を扱います。そもそもいくらかかるのかという金額の相場は 地盤調査・地盤改良の費用はいくら?相場と判断の流れ が担当なので、予算組みの段階の方はそちらを先にご覧ください。

※ 本記事は一般的な取扱いの解説です。個別の判断は顧問税理士・所轄税務署にご確認ください。

結論|分かれ目は「その工事は誰のためか」

判断の軸は「調査か改良か」ではなく、その支出が建物のために行われたのか、土地そのものを良くするために行われたのかです。根拠は国税庁の法人税基本通達7-3-4(土地についてした防壁、石垣積み等の費用)で、本文と注書きがそのまま分かれ目を示しています。

埋立て、地盛り、地ならし、切土、防壁工事その他土地の造成又は改良のために要した費用の額はその土地の取得価額に算入するのであるが、土地についてした防壁、石垣積み等であっても、その規模、構造等からみて土地と区分して構築物とすることが適当と認められるものの費用の額は、土地の取得価額に算入しないで、構築物の取得価額とすることができる。

(注)専ら建物、構築物等の建設のために行う地質調査、地盤強化、地盛り、特殊な切土等土地の改良のためのものでない工事に要した費用の額は、当該建物、構築物等の取得価額に算入する。

読み替えると、こうなります。

支出の性格行き先
専ら建物を建てるために行う地質調査・地盤強化建物の取得価額
土地の造成・改良(埋立て、地盛り、地ならし、切土、防壁工事等)土地の取得価額
防壁・石垣等で、規模・構造から土地と区分して構築物とすることが適当なもの構築物の取得価額

建物の取得価額になるケース(実務ではこれが多い)

所有している土地に建物を建て、その基礎設計のために地盤調査を行い、結果に応じて柱状改良や鋼管杭を打つ。この一連の支出は「専ら建物の建設のために行う地質調査・地盤強化」に当たり、建物の取得価額に算入します。

つまり、地盤に投じた費用は建物の耐用年数にわたって減価償却で回収されることになります。木造倉庫なら法定耐用年数15年、木造事務所なら24年に乗って費用化されます(建物の減価償却|構造・用途別の耐用年数と木造が有利な理由)。地盤改良に数百万円かかっても、建物に乗るかぎり必ず経費化されるという意味では、悪い話ではありません。

土地の取得価額になるケース(ここが痛い)

一方、傾いた土地を平らにする、低い土地を盛って使えるようにする、擁壁を立てて敷地を確保する。これらは建物のためではなく土地そのものの価値を上げる工事なので、土地の取得価額に算入されます。土地は減価償却資産ではないため、その支出は保有している間ずっと経費にならず、売却するまで簿価に眠り続けます。

同じ現場の同じ重機作業でも、「建物の基礎を支えるための地盤強化」か「敷地全体を造成するための地盛り」かで結論が変わります。実務では見積書・請求書の工事内訳が判断材料になるため、施工者に建物基礎に係る部分と造成に係る部分を分けた内訳を出してもらうことが最も効果的な備えです。「土工事一式」でまとめられていると、社内でも税務調査でも説明ができません。

構築物として切り出せるケース

通達の本文どおり、防壁や石垣であっても、規模・構造等からみて土地と区分して構築物とすることが適当と認められるものは、構築物として計上できます。構築物は減価償却できるので、土地に乗るよりは有利です。ただし「適当と認められるもの」という評価判断が入るため、取扱いが分かれやすい領域です。金額の大きい擁壁工事があるときは、竣工前に税理士へ図面と内訳を渡しておいてください。

その年の損金にできるケース(例外)

建設計画を変更したことで不要になった調査

国税庁タックスアンサー No.5400「減価償却資産の取得価額に含めないことができる付随費用」は、建物の建設等のために行った調査、測量、設計、基礎工事等で、その建設計画を変更したことにより不要となったものの費用は取得価額に算入しないことができるとしています(法人税基本通達7-3-3の2)。

A案の配置で地盤調査をしたが、B案に変更して調査結果を使わなくなった、というケースがこれに当たります。不要になったことを説明できる記録(設計変更の議事録、変更前後の配置図)を残しておくことが前提です。

埋蔵文化財の発掘調査

工場用地等の造成に伴う埋蔵文化財の発掘調査等の費用も、土地の取得価額に算入せず損金に算入することができます(法人税基本通達7-3-11の4)。ただし、文化財が埋蔵されている事情を考慮して通常より低い価額で土地を取得したと認められる場合は、この限りではありません

仕訳例

建物が完成するまでは、調査費も改良費もいったん建設仮勘定に集め、竣工時に行き先へ振り替えるのが一般的です。

場面借方貸方
支払時建設仮勘定 300,000/仮払消費税等 30,000普通預金 330,000
竣工時(全額が建物)建物 300,000建設仮勘定 300,000
竣工時(造成分を按分)建物 1,800,000/土地 1,200,000建設仮勘定 3,000,000

計画変更で不要になった調査費を落とすときは、建設仮勘定から雑損失等へ振り替えます。

なお消費税では、土地そのものの譲渡は非課税ですが、地盤調査・地盤改良・造成といった工事や役務の提供は課税取引です。支出が土地の取得価額に算入される場合でも課税仕入れとして処理されます。「土地に乗るから消費税も非課税」と読み替えないでください。

判断が分かれる論点

以下は個別事情で結論が変わるため、断定できません。必ず顧問税理士に確認してください。

  • 取得を見送った候補地の調査費:購入しなかった土地の調査費の整理は事案によって異なります。
  • 建物直下と敷地全体が一体施工された改良工事の按分:合理的な按分方法があるかで結論が変わります。
  • 擁壁を構築物として切り出せるか:規模・構造の評価が入るため一律の答えはありません。
  • 個人事業主の場合:本記事は法人税の通達が根拠です。取得価額の考え方は共通ですが適用条文が異なります。

よくある質問

Q. 地盤改良費は「修繕費」になりませんか。 A. 新たに建物を建てるための地盤強化は既存資産の維持管理ではないため、修繕費ではありません。

Q. 建物に乗せた地盤改良費は、固定資産税の家屋評価にも影響しますか。 A. 法人税の取得価額と固定資産税の家屋評価は別の計算です。家屋の評価は再建築価格方式で行われ、工事費そのものではありません(倉庫・工場の固定資産税はいくら?家屋の三要件と償却資産税との違い)。

Q. 補助金を受けて建てる場合、地盤改良費も圧縮記帳の対象になりますか。 A. 地盤改良費が建物の取得価額に算入されていれば関係してきます。考え方は 圧縮記帳とは?補助金で建てたときの仕訳と償却資産税への影響、使える制度そのものは 非住宅木造に使える補助金・助成金まとめ【2026年度】 を参照してください。

まとめ

  • 「地盤調査費」という勘定科目はなく、建物・土地・構築物・損金のどこに乗せるかを判断する
  • 分かれ目は専ら建物のための工事か、土地の造成・改良か(法人税基本通達7-3-4とその注書き)
  • 土地に乗ると減価償却できないため、工事内訳を分けて出してもらうことが最大の備え
  • 建設計画の変更で不要になった調査費は取得価額に算入しないことができる(タックスアンサーNo.5400)

建設費全体の見立てからであれば 非住宅建築の坪単価一覧【2026年版】 が起点になります。既存建物を壊してから建てる計画の方は 解体費用の勘定科目と損金算入の時期|建替え・除却の処理 を、地盤改良費が乗った建物をどう償却するかは 建物の減価償却と耐用年数 をあわせてご確認ください。

※ 本記事は一般的な取扱いの解説であり、個別の判断は顧問税理士・所轄税務署にご確認ください。

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