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ホームコラム圧縮記帳とは?補助金で建てたときの仕訳と償却資産税への影響
経営戦略15分で読めます2026-09-04

圧縮記帳とは?補助金で建てたときの仕訳と償却資産税への影響

圧縮記帳とは?補助金で建てたときの仕訳と償却資産税への影響

※ 画像はイメージです

はじめに|補助金がそのまま課税されると資金が足りなくなる

補助金を使って倉庫を建てたとします。交付された補助金は、法人税では収益(益金)です。一方、建てた建物は資産に計上され、費用になるのは減価償却を通じて何十年もかけてから。

つまり、受け取った年に補助金の分だけ利益が跳ね上がり、その年に課税されるという事態が起きます。補助金は建物に化けて手元に残っていないのに、税金だけ現金で払うことになる。これでは補助した意味が薄れます。

そこで用意されているのが圧縮記帳です。根拠は法人税法42条《国庫補助金等で取得した固定資産等の圧縮額の損金算入》です。

※ 本記事は一般的な取扱いの解説であり、個別の判断は顧問税理士・所轄税務署にご確認ください。

圧縮記帳は「免除」ではなく「繰延べ」

ここが最も誤解される点です。圧縮記帳は税金を消す制度ではありません。

補助金と同額を圧縮損として損金に落とす代わりに、その資産の帳簿上の取得価額を同額だけ引き下げます。取得価額が下がれば、以後の減価償却費も下がります。今年払わずに済んだ税金は、将来の償却費が細る形で少しずつ戻ってくる。課税のタイミングをずらす制度だと理解してください。

木造倉庫(法定耐用年数15年・定額法の償却率0.067)を1億円で建て、補助金3,000万円を受けた場合の比較です。

項目圧縮記帳なし圧縮記帳あり
交付年度の益金3,000万円3,000万円
交付年度の圧縮損なし▲3,000万円
建物の取得価額1億円7,000万円
年間の減価償却費約670万円約469万円

交付年度の課税所得は3,000万円分軽くなりますが、その後は毎年約201万円ずつ償却費が少なくなります。構造・用途別の耐用年数は 建物の減価償却|構造・用途別の耐用年数と木造が有利な理由 にまとめました。

適用の3要件

法人税法42条1項の要件は、大きく次の3つです。

要件内容
国庫補助金等の交付を受けたこと国・地方公共団体等からの補助金・助成金
交付の目的に適合した固定資産の取得等をしたこと補助対象として申請した資産であること
その事業年度終了の時までに返還を要しないことが確定していることここが実務の関門

3つ目でつまずくケースが多いため、国税庁は法人税基本通達10-2-1(返還が確定しているかどうかの判定)で線を引いています。

  • 「交付の条件に違反した場合には返還しなければならない」
  • 「一定期間内に相当の収益が生じた場合には返還しなければならない」

こうした一般的条件が付いていること自体は、返還不要が確定しているかどうかの判定には関係しないとされています。多くの補助金に付いている収益納付条項があるからといって、圧縮記帳ができなくなるわけではないということです。

そして同通達の注書きは、補助金等に係る予算の執行の適正化に関する法律15条の規定により交付すべき補助金等の額が確定し、その旨の通知を受けた国庫補助金等は、返還を要しないことが確定した国庫補助金等に該当するとしています。実務上は、この額の確定通知が届いているかどうかが目安になります。

交付が事業年度をまたぐ場合には、特別勘定を設ける取扱い(法人税法43条)があります。工期と補助金の交付時期がずれる建設案件では頻繁に起きるので、着工前に税理士へスケジュールを共有してください。使える補助制度そのものは 非住宅木造に使える補助金・助成金まとめ【2026年度】 を参照してください。

2つの経理方法と仕訳例

直接減額方式

損金経理により資産の帳簿価額を直接減らす方法です。建物1億円・補助金3,000万円のケースは次のようになります。

場面借方貸方
補助金の受入れ普通預金 30,000,000国庫補助金収入 30,000,000
建物の取得建物 100,000,000普通預金 100,000,000
圧縮記帳固定資産圧縮損 30,000,000建物 30,000,000

以後、建物は7,000万円を基礎に 耐用年数省令の年数 で償却します。補助金は対価を得て行う取引ではないため、消費税では不課税です。建物の取得は課税仕入れなので、両者を混同しないでください。

積立金方式

剰余金の処分により圧縮積立金を積み立て、税務上だけ損金とする方法です。貸借対照表に資産が取得価額のまま残るため、金融機関に見せる財務諸表の見え方が変わります。融資を受けながら設備投資を続ける会社では、こちらを選ぶ判断もあります。

どちらを選ぶかは会社の会計方針の問題であり、一律の正解はありません

償却資産税には効きません

補助金で建てた会社が最も見落とすのがここです。

まず前提として、建物そのものは固定資産税の「家屋」として課税され、償却資産の申告対象ではありません。しかも家屋の評価は再建築価格方式で行われるため、そもそも取得価額とは無関係です。圧縮記帳をしてもしなくても、家屋の税額は変わりません(倉庫・工場の固定資産税はいくら?家屋の三要件と償却資産税との違い)。

影響が出るのは、家屋に含まれない構内舗装・外構・受変電設備・生産設備といった償却資産のほうです。そして重要な点として、

固定資産税(償却資産)の申告では、圧縮記帳前の取得価額で申告する

というのが一般的な取扱いです。圧縮記帳は法人税・所得税の制度であり、地方税には同じ制度がないためです。北上市や東京都主税局をはじめ、多くの自治体の「償却資産申告の手引き」に明記されています。

結果として、補助金で設備を導入した会社では法人税は圧縮後・償却資産税は圧縮前という二重管理が発生します。固定資産台帳に圧縮前の取得価額を残しておかないと、翌年1月の申告時に数字を作り直す羽目になります。これは国税庁ではなく各市町村の所管なので、表現や運用は所在地の手引きで必ず確認してください。

個人事業主の場合

個人事業主にも同趣旨の制度があります。国庫補助金等の交付を受けて固定資産の取得・改良に充てた場合、一定の要件のもとでその充てた部分の金額を総収入金額に算入しないことができます(所得税法42条・43条、国税庁タックスアンサー No.2202「国庫補助金等を受け取ったとき」)。確定申告書に「国庫補助金等の総収入金額不算入に関する明細書」を添付することが条件です。

法人の圧縮記帳とは条文も名称も異なるので、書籍やウェブの法人向け解説をそのまま当てはめないでください。

判断が分かれる論点

  • 他の税制優遇との併用:特別償却・税額控除・少額減価償却資産の特例などとの併用可否は制度ごとに異なります。
  • 直接減額方式と積立金方式のどちらを採るか:会計方針と資金調達の方針で判断が分かれます。
  • 返還不要が確定した時期:額の確定通知が目安ですが、補助金ごとの条項次第です。
  • 補助対象が建物と設備にまたがる場合の圧縮額の配分:合理的な配分方法の選び方は事案によります。

まとめ

  • 圧縮記帳は課税の免除ではなく繰延べ。取得価額が下がり、以後の減価償却費が減る(法人税法42条)
  • 要件は「交付」「目的適合」「事業年度終了時までに返還不要が確定」の3つ
  • 収益納付などの一般的条件が付いていること自体は判定に影響しない。目安は額の確定通知(法基通10-2-1)
  • 経理方法は直接減額方式積立金方式。財務諸表の見え方が変わる
  • 固定資産税(償却資産)は圧縮前の取得価額で申告。国税と地方税で数字が分かれる

建て替えを伴う計画なら 解体費用の勘定科目と損金算入の時期|建替え・除却の処理、地盤にかかった費用の扱いは 地盤調査費用の勘定科目|経費と資産計上の分かれ目と仕訳例 をご覧ください。投資額そのものの見立ては 非住宅建築の坪単価一覧【2026年版】、読みにくい地盤改良費の見積りは 地盤調査・地盤改良の費用はいくら?相場と判断の流れ が起点になります。

※ 本記事は一般的な取扱いの解説であり、個別の判断は顧問税理士・所轄税務署にご確認ください。

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