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HACCP対応の木造食品工場|施工事例(延床1,973㎡・2階建)

HACCP対応の木造食品工場|施工事例(延床1,973㎡・2階建)

※ 画像はイメージです

HACCP(ハサップ=原材料から出荷までの工程ごとに危害要因を分析し、重要な工程を重点的に管理する衛生管理の手法)に対応した食品工場を、木造で建てた事例です。 延床1,973㎡・地上2階建てで、木造枠組壁工法(2×4工法)の準耐火構造とし、ベイマツLVL(単板積層材=薄い木の板を繊維方向をそろえて重ねた部材)で10mを超えるスパン(柱と柱の間隔)を確保しました。1階に製造工場、2階に事務所を置いています。

食品工場の建物で問われるのは、構造の種類ではなく、区域の分け方・床や壁の仕上げ・結露・手洗いや排水などの衛生設備です。この記事では、事例の概要と設計の要点を、営業許可の施設基準に照らして整理します。

物件概要

項目内容
用途食品工場+事務所
構造・工法木造枠組壁工法(2×4)、準耐火構造
延床面積1,973㎡
階数地上2階建(1階:製造工場/2階:事務所)
主要部材カナダ産OSB(壁・床・野地)、ベイマツLVL
設計監理サンライズ建築事務所
採用ポイントHACCP対応/10m超スパン/高断熱・高気密

このプロジェクトのねらい

老朽化した既存の食品工場を、現在の衛生管理の考え方に合わせて建て替えるプロジェクトです。HACCPに沿った衛生管理を前提に、仕込みから出荷までの一貫した製造フローと衛生上の区域分けの明確化を最重要の要件として計画しました。

構造には木造2×4工法を採用し、エンジニアードウッド(LVLなど、木材を工場で再構成して強度や寸法を安定させた材料)を組み合わせて、製造に必要な大空間と、温湿度を管理しやすい躯体をつくっています。

設計上のポイント

1. 衛生上の区域分けと一方向の動線

  • 仕込み→製造→包装→出荷の一方向の動線
  • 清潔作業区域/準清潔作業区域/汚染作業区域の区分を明確化
  • 区域ごとの入退室・更衣の動線を建築計画に反映
  • 結露を抑える壁・天井の仕様

区域の呼び方は、厚生労働省「大量調理施設衛生管理マニュアル」の区分(汚染作業区域・準清潔作業区域・清潔作業区域)に合わせています。

2. 1階:製造工場/2階:事務所のゾーニング

製造の主な機能を1階に集約し、事務所を2階に配置しました。製造現場と管理部門を分けながら、必要な場面では行き来できる動線を確保しています。食品を扱わない室を同じ建物に置く場合は区画することが施設基準で求められており、階で分けることはその考え方とも合います。

3. 10m超のスパンを実現する架構

製造ラインを効率よく並べるため、柱の少ない大空間が必要でした。ベイマツLVLを採用し、10mを超えるスパンを木造で実現しています。製造機器のレイアウト変更にも対応しやすい空間です。スパンと架構の考え方は 木造の柱スパンは何mまで? で解説しています。

4. 高断熱・高気密の躯体

壁・床・野地にはカナダ産OSB(木片を接着剤で固めた構造用の面材)を使い、面材としての強度と気密性能を両立させました。食品工場で求められる温度・湿度の管理を行いやすい躯体です。

5. 製造エリアの仕上げ

構造は木造でも、製造エリアの床・内壁・天井は、清掃・洗浄・消毒しやすい材料で仕上げるのが原則です。構造が木造であることと、内装に木を見せることは切り離して計画します。

【早見表】この事例の設計と、営業許可の施設基準

食品の製造で営業許可が必要な場合、施設は、国の省令(食品衛生法施行規則 別表第十九=共通の基準、別表第二十=業種ごとの基準)を参酌して都道府県等が条例で定める基準に合わなければなりません(食品衛生法第54条・第55条)。共通の基準のうち建物に関わる主な項目と、この事例の計画の対応は次のとおりです。

施設基準(別表第十九)の主な項目この事例の計画
作業の区分に応じて、区画・設備の配置・空気の流れの管理で汚染を防ぐ清潔・準清潔・汚染の区域を分け、一方向の動線に並べた
食品を扱わない室が同じ建物にある場合は区画する事務所を2階に分け、製造部門と分離した
作業場所の真上は結露しにくく、換気が適切にできる構造結露を抑える壁・天井の仕様とし、高断熱・高気密の躯体で温湿度を管理しやすくした
従業者の数に応じた更衣場所を、作業場に出入りしやすい位置に設ける区域ごとの入退室・更衣の動線を建築計画に反映した
床面・内壁・天井は清掃・洗浄・消毒しやすい材料と構造製造エリアの仕上げは、所轄の保健所の基準に合わせて選定する

※ 左の列は施行規則 別表第十九から建物に関わる項目を抜き出して要約したものです。手洗い設備・排水・便所・防虫防鼠などの項目もあります。業種ごとの基準や条例の上乗せがあるため、設計段階で図面を持って所轄の保健所に事前相談してください。施設基準の全体は 食品工場の建設費とHACCP・施設基準 のチェックリストで確認できます。

なお、令和3年(2021年)6月1日から、原則としてすべての食品等事業者にHACCPに沿った衛生管理が求められています(厚生労働省)。HACCPそのものは衛生管理の手順で、建物の寸法や仕様を直接定めるものではありません。建物に直接効くのは上の施設基準です。

木造で延べ1,000㎡を超える工場の防火

工場は建築基準法の特殊建築物ではないため、用途による耐火の要求(第27条)はかかりません。耐火・準耐火の要否は、規模(第21条)と立地(第61条)で判定します。この規模の木造工場で押さえる点は次のとおりです。

項目内容根拠
延べ1,000㎡超の木造外壁・軒裏の延焼のおそれのある部分を防火構造に、屋根を第22条の構造に建築基準法第25条
延べ1,000㎡超1,000㎡以内ごとに防火壁・防火床で区画。耐火建築物・準耐火建築物なら不要建築基準法第26条
延べ3,000㎡超周囲への延焼を防ぐ性能(耐火構造など)が必要建築基準法第21条第2項
防火地域・準防火地域準防火地域では延べ500㎡超〜1,500㎡以下(階数2以下)で準耐火建築物等、1,500㎡超で耐火建築物等建築基準法第61条

延床1,973㎡の本事例は、準耐火構造で計画しています。製造ラインの大空間を防火壁で分けずに使えるかどうかは、工場の計画に直結する論点です。用途地域と防火規制の判定は 木造の工場建設は可能?、耐火の全体像は 非住宅木造の耐火基準 を参照してください。また、木造で延べ300㎡を超える建物は構造計算が必要です(建築基準法第20条、2025年4月施行。木造の構造計算が必要な規模)。

木造2×4で計画した効果

項目内容
工期枠組壁工法は部材を工場や現場でパネル化して組み立てられるため、工期を短く計画しやすい。建替え中の操業への影響を抑えやすい
温熱性能OSBと断熱で高気密の躯体とし、空調・温湿度の管理をしやすくした
スパンLVLにより10m超の柱の少ない空間を確保
衛生性結露を抑えた仕様と、区域に応じた仕上げの調整
減価償却工場用の法定耐用年数は木造15年、RC造38年(減価償却資産の耐用年数等に関する省令 別表第一)。区分の判断は税理士に確認

建設費の目安(工場の基準に衛生分を加算する考え方)は 食品工場の建設費、構造ごとのコスト比較は 木造vs RC造vs S造:非住宅建築のコスト比較 を参照してください。

【チェックリスト】木造で食品工場を計画するときに早めに決めること

  • 製造フロー(原料の受入→下処理→加工→包装→出荷)と、区域の分け方
  • 人の動線と物の動線が交差しないか、廃棄物を清潔区域を通さずに出せるか
  • 製造ラインに必要なスパンと、将来のライン変更の見込み
  • 延べ面積と、防火壁が要らない準耐火建築物等にするか(延べ1,000㎡超の場合)
  • 防火地域・準防火地域の指定、用途地域で工場が建てられるか
  • 冷凍冷蔵設備の床荷重・電源容量(本体工事とは別に計上)
  • 保健所への事前相談の時期と、条例の上乗せ基準
  • 建替えの間の操業(仮設・段階施工・別敷地での新築)

この事例で押さえておきたい関連記事

まとめ

項目ポイント
物件食品工場+事務所、延床1,973㎡・地上2階建、木造2×4の準耐火構造
衛生計画清潔・準清潔・汚染の区域を一方向の動線に並べ、事務所は2階に分離
架構ベイマツLVLで10m超のスパン
躯体カナダ産OSBで高断熱・高気密、温湿度を管理しやすく
法規建物に効くのは営業許可の施設基準(施行規則 別表第十九・第二十と条例)。延べ1,000㎡超の木造は防火壁、または準耐火建築物等

食品工場の要件である衛生上の区域分け・大スパン・温湿度の管理は、木造でも計画できます。食品工場・加工工場の新築・建替えをご検討中の事業者様は、無料相談 からお気軽にご相談ください。

出典・参考

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