※ 画像はイメージです
工場は木造で建てられます。工場は建築基準法 別表第一の特殊建築物に含まれない(自動車修理工場を除く)ため、特殊建築物向けの耐火要求(第27条)はかかりません。木造の工場に準耐火・耐火が求められるかは、①敷地が防火地域・準防火地域か(第61条)、②延べ面積が1,000㎡・3,000㎡を超えるか(第21条・第26条)、③階数4以上または高さ16m超か(第21条)の3点で決まります。
建てられる工場の種類と作業場の広さは、これとは別に用途地域で制限されます(第48条・別表第二)。
【早見表】木造の工場に求められる防火性能
敷地の地域と規模の組み合わせで判定します。複数に当てはまる場合は、いちばん厳しいものを満たします。
防火地域・準防火地域(第61条、施行令第136条の2)
| 地域 | 階数・延べ面積 | 求められる性能 |
|---|---|---|
| 防火地域 | 階数3以上、または延べ100㎡超 | 耐火建築物、または同等の延焼防止性能(延焼防止建築物) |
| 防火地域 | 階数2以下かつ延べ100㎡以下 | 準耐火建築物、または同等の延焼防止性能(準延焼防止建築物) |
| 準防火地域 | 階数4以上、または延べ1,500㎡超 | 耐火建築物、または延焼防止建築物 |
| 準防火地域 | 階数3で延べ1,500㎡以下/階数2以下で延べ500㎡超〜1,500㎡以下 | 準耐火建築物、または準延焼防止建築物 |
| 準防火地域 | 階数2以下かつ延べ500㎡以下 | 外壁・軒裏の延焼のおそれのある部分を防火構造とし、その部分の開口部に防火設備(20分間火炎を出さないもの) |
階数は地階を除いて数えます。防火地域・準防火地域では屋根の構造にも基準があります(第62条)。
地域を問わずかかる規模の規制
| 条件 | 求められること | 根拠 |
|---|---|---|
| 法第22条区域(特定行政庁が指定) | 屋根を飛び火に耐える構造に。木造は外壁の延焼のおそれのある部分を準防火性能に | 第22条・第23条 |
| 延べ1,000㎡超の木造 | 外壁・軒裏の延焼のおそれのある部分を防火構造、屋根を第22条の構造に | 第25条 |
| 延べ1,000㎡超 | 1,000㎡以内ごとに防火壁・防火床で区画。耐火建築物・準耐火建築物なら不要 | 第26条 |
| 延べ3,000㎡超 | 周囲への延焼を防ぐ性能(耐火構造等)。火熱遮断壁等で区画すれば別の建築物とみなせる | 第21条第2項・第3項 |
| 階数4以上、または高さ16m超 | 特定主要構造部を耐火構造等に(周囲に有効な空地がある場合を除く) | 第21条第1項 |
| 準耐火建築物などで延べ1,500㎡超 | 1,500㎡以内ごとに防火区画(自動式スプリンクラー設置部分は床面積の2分の1を除いて計算。工場の部分は条件付きで緩和あり) | 施行令第112条第1項 |
防火壁が要らない工場(第26条第1項第2号)
延べ1,000㎡超でも、機械製作工場など火災の発生のおそれが少ない用途で、主要構造部が不燃材料で造られたもの、または施行令第115条の2の基準(階数2以下、外壁・軒裏が防火構造、内装の難燃化または自動式スプリンクラーと排煙設備 など)に適合するものは、防火壁の区画が不要です。どの工場が「同等以上に火災の発生のおそれが少ない用途」に当たるかは、特定行政庁に確認してください。
用途地域ごとの工場の制限(第48条・別表第二)
工場の制限は、建物の延べ面積ではなく「原動機を使用する工場で作業場の床面積の合計」と、事業の種類で決まります。
| 用途地域 | 工場の扱い(主なもの) |
|---|---|
| 第一種・第二種低層住居専用、第一種中高層住居専用、田園住居 | 原則として建てられない(政令で定める小規模な兼用住宅などの例外のみ) |
| 第二種中高層住居専用 | 工場は原則として建てられない(政令で定めるものを除く) |
| 第一種住居・第二種住居 | 原動機を使用する工場で作業場50㎡超は不可。準住居地域で禁止される事業の工場も不可 |
| 準住居 | 原動機を使用する工場で作業場50㎡超は不可(作業場150㎡以下の自動車修理工場を除く)。金属プレス、印刷(原動機使用)など列挙された事業の工場も不可 |
| 近隣商業・商業 | 原動機を使用する工場で作業場150㎡超は不可(日刊新聞の印刷所、作業場300㎡以下の自動車修理工場を除く)。列挙された事業の工場も不可 |
| 準工業 | 危険性や環境悪化のおそれが大きい事業(火薬類・危険物の製造など列挙されたもの)の工場は不可 |
| 工業・工業専用 | 工場の種類による制限はおおむねなし(工業地域ではホテル・学校・病院など、工業専用地域では住宅・店舗などが不可) |
用途地域で認められない工場でも、特定行政庁の許可で建てられる場合があります(第48条各項のただし書)。敷地が市街化調整区域の場合は、用途地域とは別に開発許可などの手続きが必要です(市街化調整区域に工場・倉庫は建てられる?)。
木造で準耐火・耐火をつくる方法
準耐火建築物は、主要構造部(壁・柱・床・はり・屋根・階段)を準耐火構造にするのが基本です(第2条第9号の3イ)。木造では主に次の2つを組み合わせます。
- 被覆型(メンブレン型): 柱・はり・壁を強化せっこうボードなどで覆う。仕様は告示(平成12年建設省告示第1358号ほか)や国土交通大臣の認定で決まります。しくみは メンブレン型耐火構造とは で解説しています
- 燃えしろ設計: 集成材などの断面を、燃えて炭化する分(燃えしろ)だけ大きくして木を見せる方法。必要な燃えしろ寸法は告示で材料と要求時間ごとに決められています
準耐火の仕様は、外壁・間仕切壁・床・屋根ごとに要求時間が違い、開口部の防火設備も必要です。使う仕様が告示の構造方法か、大臣認定品かを設計段階で確定させてください。
延焼防止建築物という選択肢
2019年6月施行の改正で、防火地域・準防火地域では、耐火建築物・準耐火建築物にしなくても、主要構造部・防火設備・消火設備の組み合わせで同等の延焼防止時間を確保した建築物が認められるようになりました(施行令第136条の2第1号ロ・第2号ロ)。外壁や開口部の性能を高めて内部の木造部分を見せる、といった設計が可能になります。性能の計算方法は告示で定められています。
工場ならではの設計上の注意点
- 床の積載荷重は実況で設定: 工場の作業場は施行令第85条の表にない室です。設置する機械や保管物の重さから設定し、重量物は基礎・土間を別に検討します
- 大スパン: 柱の少ない作業空間は、集成材の梁・トラスや木と鉄骨の混構造で計画します。スパンが大きいほど構造計算と接合部の検討が重くなります(延べ300㎡超は許容応力度計算が必要。木造の構造計算が必要な規模)
- 振動: プレス機やコンプレッサーなどは、防振ゴムや機器基礎の独立(建物の構造体と縁を切る)を設備設計と合わせて検討します
- 火気・危険物: 危険物の貯蔵・処理を伴う工場は、用途地域の制限(別表第二)や消防法の規制が別にかかります。木造で計画できるかは計画初期に所管行政庁・消防署へ確認します
消防用設備(工場は消防法施行令 別表第一の(十二)項イ)は、延べ150㎡以上で消火器、500㎡以上で自動火災報知設備、700㎡以上で屋内消火栓設備が必要です。詳しくは 非住宅の消防設備の設置基準 を参照してください。
【チェックリスト】木造工場の計画前に確認すること
- 用途地域は? → 作業場の床面積の上限と、禁止される事業に当たらないか
- 防火地域・準防火地域・法第22条区域のどれか?(都市計画図・自治体の窓口で確認)
- 延べ面積は500㎡・1,000㎡・1,500㎡・3,000㎡のどこを超えるか
- 階数は3以上か、高さは16mを超えるか
- 防火壁で区画するか、準耐火建築物にして防火壁をなくすか
- 危険物・指定可燃物を扱うか
- 機械の重さ・振動、必要なスパンは決まっているか
よくある質問
Q. 準防火地域で延べ400㎡・平屋の木造工場は準耐火が必要ですか。 A. 準耐火建築物にする必要はありません。外壁・軒裏の延焼のおそれのある部分を防火構造とし、その部分の窓などに防火設備を設けます(施行令第136条の2第3号)。
Q. 防火地域・準防火地域の指定がない場所で、延べ1,200㎡の木造平屋工場は建てられますか。 A. 建てられます。延べ1,000㎡を超えるため、外壁・軒裏の延焼のおそれのある部分を防火構造とし(第25条)、1,000㎡以内ごとに防火壁で区画するか、準耐火建築物にします(第26条)。
Q. 工場の中に事務所を設けても工場の扱いですか。 A. 工場に付属する事務所は工場の一部として扱われるのが一般的ですが、規模や使い方によっては別の用途とみなされることがあります。確認申請の前に所管の特定行政庁・確認検査機関に確認してください。
まとめ
- 工場は特殊建築物ではない(自動車修理工場を除く)。耐火・準耐火の要否は地域(第61条)・規模(第21条・第26条)・階数と高さで決まる
- 準防火地域でも階数2以下・延べ500㎡以下なら、外壁・軒裏の防火構造と開口部の防火設備で建てられる
- 延べ1,000㎡超は防火壁で区画するか、準耐火建築物にする
- 用途地域の制限は作業場の床面積と事業の種類で決まる
建設費は 工場の建築費・坪単価 にまとめています。食品を扱う工場は衛生ゾーニングと設備が加わります(食品工場の建設費)。用地が市街化調整区域や農地の場合は、建築の前に土地側の手続きが必要です(市街化調整区域に工場・倉庫は建てられる?/農地に倉庫を建てるには)。
※ 本記事は一般的な制度の説明です。地域指定や条例、特定行政庁の取扱いで結論が変わるため、個別の計画は最新の法令と所管の特定行政庁・指定確認検査機関にご確認ください。
出典・参考
- 建築基準法(第2条、第21条〜第23条、第25条、第26条、第27条、第48条、第61条、第62条、別表第一、別表第二)|e-Gov法令検索 https://laws.e-gov.go.jp/law/325AC0000000201
- 建築基準法施行令(第85条、第112条、第115条の2、第136条の2)|e-Gov法令検索 https://laws.e-gov.go.jp/law/325CO0000000338
- 消防法施行令(第10条、第11条、第21条、別表第一)|e-Gov法令検索 https://laws.e-gov.go.jp/law/336CO0000000037
- 国土交通省「建築基準法の一部を改正する法律(平成30年法律第67号)について」(2019年6月25日施行分を含む) https://www.mlit.go.jp/jutakukentiku/build/jutakukentiku_house_tk_000097.html

