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CLT(Cross Laminated Timber、直交集成板)は、ひき板(ラミナ)を並べた後、繊維方向が直交するように積層接着した厚い木質パネルです。 日本では2013年12月に製造規格であるJAS(日本農林規格)が制定され、2016年4月にCLT関連の建築基準法告示が公布・施行されました(日本CLT協会)。壁・床・屋根に使え、工場で加工したパネルを現場で組み立てるため工期を縮めやすい一方、材料費が高く、揚重(クレーンでの吊り上げ)の計画が必要です。
内閣官房の集計では、CLTを活用した建築物等の竣工件数は2023年度(令和5年度)までの累計で1,202件、2024年度中に累計1,300件を超える見込みです(2024年6月末時点。内装などでの活用も1件として数えた案件数)。非住宅では、床・中層の耐力壁・木を見せる天井や壁など、効く部位に絞って使うと費用対効果が出やすくなります。
CLTのメリット・デメリット
| 内容 | 根拠・補足 | |
|---|---|---|
| メリット | 現場の工期を縮めやすい:パネルを工場で加工して搬入し、現場は組立が中心 | 日本CLT協会 |
| メリット | 軽い:鉄筋コンクリートに比べて重量は5分の1以下 | 日本CLT協会。建物が軽いと地震で働く力も小さくなる |
| メリット | 熱を伝えにくい:熱伝導率0.12 W/(m・K)(コンクリートは1.6) | 建築研究所の技術情報(省エネ計算で使う値) |
| メリット | 燃え方が予測しやすい:木材は毎分約1mmの速度でゆっくり燃え進む。燃えしろ設計で木を見せる設計ができる | 日本CLT協会、林野庁 |
| メリット | 炭素を貯蔵できる:林野庁ガイドラインの計算式で炭素貯蔵量を表示できる | 木造建築のCO2削減効果 |
| デメリット | 材料費が高くなりやすい:一般的な製材や集成材に比べ、部材の費用が割高になりがち | 使う部位を絞ると影響を抑えられる |
| デメリット | 揚重・搬入の計画が必要:大判パネルを吊るクレーンと、敷地内の置き場・搬入経路 | 狭い敷地・市街地ほど費用が上振れしやすい |
| デメリット | 現しと防耐火・遮音の両立に工夫が要る | 要求される耐火性能・遮音性能を企画段階で確認 |
| デメリット | 設計・製造・施工の体制が限られる | 設計者・パネル製造者・施工者の連携が前提 |
コストは「材料・揚重・工期」の3つに分けて見る
CLTの費用は、床面積あたりの単価だけでは判断しにくく、次の3つに分けると比べやすくなります。
| 費用の要素 | CLTの傾向 | 効いてくる場面 |
|---|---|---|
| 材料費 | 一般的な製材・集成材より割高になりがち | 使用量が多いほど不利。「効く部位だけ」に絞る |
| 揚重・搬入 | クレーンと運搬の計画が必須 | 大判パネルを吊る重機、敷地内の置き場。狭い敷地・市街地ほど注意 |
| 工期・人手 | 現場は組立が中心で短縮・省人化しやすい | 工期短縮で賃料・金利・現場経費を取り返す。ここが回収源 |
材料費の不利を、工期短縮と施工の省人化、内装材の兼用(現し)で取り返せるかが採否の分かれ目です。金額は、同じ計画をCLTあり・なしの両方で見積もって比べてください。構造別の費用感は 木造・鉄骨造・RC造の坪単価比較、概算の出し方は 非住宅木造の建設費 概算の出し方 を参照してください。
非住宅でのCLTの使いどころ(部位別)
1. 床|最も効きやすい部位
大判パネルを敷くだけで広い床(水平構面)をつくれるため、床根太の手間を減らせます。2×4工法の技術基準(平成13年国土交通省告示第1540号)でも、2階以上の床版に直交集成板を使う場合の扱いが定められており、構造計算で安全を確かめれば「壁は2×4、床はCLT」という組み合わせができます。
2. 耐力壁|中層で効く
階数が増えると必要な耐力が上がり、面で力を受けるCLTの壁が有利になります。CLTパネル工法として建物全体をCLTの壁・床で組む方法もあります。3階建ての規制は 木造3階建ての非住宅|耐火・構造計算・規模の規制早見表 を参照してください。
3. 現し|木を見せることが価値になる空間
CLTは構造をそのまま見せる「現し」にでき、オフィス・店舗・公共施設などで内装材を兼ねられます。仕上げ材を別に張らずに済めば、材料費の一部を相殺できます。ただし、防耐火・遮音の要求との両立は早めに確認します。
【判定表】CLTを使うかどうかの考え方
| 検討ケース(仮定の例) | CLTの使い方 | 費用への影響 | 判断 |
|---|---|---|---|
| 3階建ての事務所 | 床だけCLT、壁は2×4や軸組 | 材料費は増えるが、床工事の短縮で相殺しやすい | ◎ 効きやすい |
| 中層の共同住宅 | 戸境壁と床にCLT | 遮音・耐火の仕様しだい | ○ 性能要件しだい |
| 平屋の倉庫 | 全面CLT | 材料費が上がり効果が小さい | △ 過剰になりやすい |
| 木を見せたい店舗 | 天井・壁の現しにCLT | 内装材を兼ねれば相殺できる | ○ 意匠の価値しだい |
平屋・大スパンの倉庫は、木質トラスや集成材の梁のほうが合理的な場合が多く、CLTは中層・現し・床で効きます。工法全体の比較は 中大規模木造の工法比較、RC造・S造との組み合わせは 混構造で木造非住宅を建てる を参照してください。
【チェックリスト】CLTを採用する前の確認事項
- CLTを使う部位(床・壁・屋根・現しの天井)と、その理由を決めた
- 同じ計画をCLTあり・なしで見積もり、材料費の増加と工期短縮の効果を比べた
- 敷地にクレーンの設置場所と、パネルの搬入経路・置き場を確保できる
- 求められる耐火性能(耐火・準耐火)と、現しにする部分の扱いを確認した
- 共同住宅・宿泊施設などで、遮音の性能と納まりを確認した
- 設計者・CLTパネルの製造者・施工者の体制と、パネル製作の期間を工程に入れた
- 補助金を使う場合、公募要領の対象・補助率・申請時期を確認した
補助金の活用
林野庁の「CLT建築実証事業」は、CLTを活用した建築物の設計・建築や部材の性能の実証などを支援する事業で、2026年度(令和8年度)も実施団体のサイトで公募が行われています。対象となる建築物・補助率・募集期間は年度・募集回ごとの募集要領で確認してください。2026年度の要件は、ほかの制度とあわせて 非住宅木造の補助金2026 にまとめています。制度の背景は 公共建築物等木材利用促進法の解説 を参照してください。
よくある質問
Q. CLTにすると建設費は安くなりますか。 A. 材料費だけを見れば割高になりがちで、「CLTにすれば安くなる」わけではありません。工期短縮・施工の省人化・内装材の兼用でどれだけ取り返せるかで決まります。CLTあり・なしの両方で見積もって比べてください。
Q. CLTと2×4・集成材は併用できますか。 A. できます。2×4工法の技術基準(告示第1540号)にも、2階以上の床版に直交集成板を使う場合の規定があります。床はCLT、壁は2×4や軸組、大スパンは集成材の梁、という組み合わせが考えられます。
Q. CLTでも耐火建築物にできますか。 A. できます。強化せっこうボードなどで覆うメンブレン型の耐火構造や、国土交通大臣の認定を受けた構造を使います。林野庁の森林・林業白書(令和6年度)は、2024年4月の改正建築基準法等の施行で、延べ3,000㎡超の大規模木造建築物でも燃えしろ設計ができるようになったとしています。耐火の要否は 木造の耐火・準耐火の基準 で判定してください。
Q. 狭い敷地や市街地でも使えますか。 A. 使えますが、大判パネルの搬入経路とクレーンの設置場所が課題になります。敷地条件に合わせてパネルの大きさ(パネル割り)や工法を検討します。
Q. CLTの施工会社はどう探せばいいですか。 A. 日本CLT協会の相談先企業・会員紹介から探せます。探し方と確認点は 中大規模木造の工法比較 で解説しています。
まとめ
- CLTはひき板を直交に積層接着した大判パネル。2013年12月にJAS、2016年4月に関連告示
- 活用した建築物等は2023年度までの累計で1,202件(内閣官房の集計)
- メリットは工期短縮・軽さ・断熱性・燃え方の予測しやすさ。デメリットは材料費・揚重・現しと防耐火の両立
- 床・中層の耐力壁・現しで効く。2×4の床にCLTを使う組み合わせも告示で扱いがある
- 採否は、CLTあり・なしの見積比較と、揚重・耐火・遮音の確認で判断する
※ 本記事は一般的な説明です。個別の計画は、最新の法令・告示、公募要領と設計者・所管行政庁にご確認ください。
出典・参考
- 一般社団法人日本CLT協会「CLTとは」 https://clta.jp/clt/
- 内閣官房 CLT活用促進のための政府一元窓口「CLTの活用状況について」(2024年6月末時点) https://www.cas.go.jp/jp/seisaku/cltmadoguchi/kaigi/dai15/siryou1.pdf
- 林野庁「令和6年度 森林・林業白書」第1部第3章第2節 https://www.rinya.maff.go.jp/j/kikaku/hakusyo/r6hakusyo_h/all/chap3_2_2.html
- 平成13年国土交通省告示第1540号(枠組壁工法の技術的基準)|一般社団法人日本ツーバイフォー建築協会 https://www.2x4assoc.or.jp/technology/confirmation/1540-1541.html
- 建築研究所「平成28年省エネルギー基準に準拠したエネルギー消費性能の評価に関する技術情報(住宅)」第三章第三節(Ver.24、2025年4月) https://www.kenken.go.jp/becc/documents/house/3-3_250401_v24.pdf
- 林野庁「建築物に利用した木材に係る炭素貯蔵量の表示に関するガイドライン」 https://www.rinya.maff.go.jp/j/mokusan/mieruka.html
- 内閣官房 CLT活用促進のための政府一元窓口「CLT支援制度」 https://www.cas.go.jp/jp/seisaku/cltmadoguchi/shien.html
- CLT活用建築物等実証事業(実施団体のサイト) https://cltjisshou.org/

