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技術解説13分で読めます2026-06-30

CLT建築とは?非住宅木造での使いどころ・費用感・採用事例の考え方

CLT建築とは?非住宅木造での使いどころ・費用感・採用事例の考え方

※ 画像はイメージです

はじめに — CLTは「使いどころ」で価値が決まる

**CLT(Cross Laminated Timber/直交集成板)**は、ひき板を繊維方向が直交するように積層接着した大判の木質パネルです。壁・床・屋根として使え、中大規模・中層の木造を支える構造材として実用が広がっています。

一方で「CLTにすればコストが下がる」という誤解も見られます。CLTは材料単価が高く、使いどころを見極めて初めて費用対効果が出る材料です。本記事では、非住宅でCLTをどこに使うと効くか、費用感と採用事例の読み解き方を、数字を交えて解説します。工法全体の比較は 中大規模木造の工法比較 — 2×4・在来軸組・SE構法・CLT を参照してください。

CLTの特徴とコスト構造

項目内容
形状大判パネル(壁・床・屋根に使える)
強み面で力を受ける・寸法安定性が高い・現場工期を短縮できる
弱み材料単価が高い・運搬や揚重に重機が要る
向く用途中層・中大規模、現し(あらわし)意匠

CLTのコストで押さえるべきは、㎥(立方メートル)あたりの材料単価です。一般的な構造用集成材に対し、CLTパネルは材料費・加工費・輸送費が上乗せされ、部材コストで割高になりがちです。さらに、大判パネルゆえに揚重用のクレーン計画と搬入経路の確保が必要で、ここを軽視すると現場で想定外コストが発生します。「材料は高いが、工期短縮と施工省人化で取り返す」という構造を理解しておくことが前提です。

コストを「材料・揚重・工期」の3つに分けて見る

CLTの費用は単純な㎡単価では捉えにくく、次の3要素に分解すると判断しやすくなります。

費用要素CLTの傾向効いてくる場面
材料費(㎥単価)集成材より割高使用量が多いほど不利。「効く部位だけ」に絞ると影響を抑えられる
揚重・搬入クレーン・運搬計画が必須大判パネルを吊る重機代・敷地内のヤード確保。狭小地・市街地ほど要注意
工期・人工現場が組立中心で短縮・省人化工期短縮で賃料・金利・人件費を取り返す。ここがCLT最大の回収源

つまり、材料費の不利を工期短縮と施工省人化(人手不足対策)で相殺できるかが採否の分かれ目です。揚重・搬入の段取りが組める敷地かどうかも、費用が想定どおりに収まるかを左右します。

非住宅木造でのCLTの使いどころ(部位別の効き方)

1. 床スラブ — 最も効きやすい部位

CLTの面剛性と寸法安定性が活きるのが床(水平構面)です。大判パネルを敷くだけで広い床を一気に構成でき、根太の手間を減らせます。中層の事務所・共同住宅で「床だけCLT、壁柱は軸組や2×4」という構成は費用対効果が出やすい王道です。

2. 耐力壁 — 中層・大開口で効く

階数が増えると必要な耐力が上がり、面で受けるCLT壁が有利になります。木造3階建ての可否は 木造3階建て非住宅は建てられる? を参照。

3. 現し意匠 — 「見せる」ことが価値になる空間

CLTは構造を「現し」で見せられ、木の質感をデザインに活かしたい用途(オフィス・店舗・公共施設)で内装材費を兼ねられます。仕上げを別途張らずに済めば、割高な材料費の一部を相殺できます。

採用事例の「読み解き方」 — 数字でCLTの是非を判断する

CLTの採用事例を見るとき、見るべきは「使った/使わない」ではなくどの部位に・全体の木材使用量の何割を・いくらで使ったかです。判断軸を例で示します。

検討ケース(モデル試算)CLTの使い方コストへの影響妥当性
3階建て事務所(延床約300坪)床スラブのみCLT、壁柱は軸組材料費は増えるが工期短縮で相殺◎ 効きやすい
中層共同住宅戸境壁+床にCLT遮音・耐火で性能を稼げる○ 性能要件次第
平屋の倉庫全面CLT材料費だけ上がり旨味が薄い△ 過剰
木質を見せたい店舗天井・壁の現しにCLT内装材を兼ねれば相殺○ 意匠価値次第

上表のとおり、平屋・大スパン倉庫で全面CLTは過剰になりがちで、トラスや集成材梁のほうが合理的です。逆に中層・現し・床水平構面ではCLTが効きます。自社案件で「どの部位にいくら効くか」を概算する際は 非住宅木造 建設費シミュレーター解説 で試算し、構造別の費用感は 木造・RC造・S造の坪単価比較 を起点にしてください。

費用を抑える鉄則 — ハイブリッド設計

CLTは材料単価が高いため、全部位をCLTにすると割高になります。実務では「効く部位にCLT、それ以外は2×4や集成材」というハイブリッドが費用対効果に優れます。混構造(RC・S造との組み合わせ)の考え方は 混構造で木造非住宅を建てる を参照してください。

補助金の活用

CLTの採用は、木材利用促進や中大規模木造化を後押しする補助の対象になる場合があります。とくに**林野庁「CLT建築実証事業」(非住宅木造のCLT活用が対象、一戸建て住宅は対象外)**は代表例です。実在制度の正式名称・補助率は 非住宅木造に使える補助金・助成金まとめ【2026年度】、制度背景は 公共建築物等木材利用促進法の解説 を参照してください。

CLTに関するよくある質問(FAQ)

Q. CLTにすると建設費は安くなりますか? A. 材料単価だけ見れば集成材より割高で、「CLTにすれば安くなる」わけではありません。安くなるかは、工期短縮・施工省人化・内装材の兼用(現し)でどれだけ取り返せるかで決まります。効く部位に絞って使うのが費用対効果の前提です。

Q. CLTと2×4・集成材は競合しますか?併用できますか? A. 競合ではなく併用が定石です。床はCLT、壁柱は2×4や軸組、大スパンは集成材梁、というハイブリッドが実務では多く、それぞれの得意を組み合わせて全体最適を取ります。工法全体の比較は 中大規模木造の工法比較 を参照してください。

Q. CLTは「現し(あらわし)」で見せられますか? A. 見せられます。CLTは木目の大判パネルが意匠になり、天井・壁を現しにすると内装材を兼ねられます。これは割高な材料費を相殺する有力な使い方で、オフィス・店舗・公共施設で価値になります。ただし現しは防火・遮音の納まりに配慮が要ります。

Q. CLTでも耐火建築物にできますか? A. 用途・規模・地域に応じた被覆や設計でメンブレン型の耐火構造に対応できます。現しと耐火要求は両立に工夫が要るため、企画段階で耐火ランクを確認します(非住宅木造の耐火基準)。

Q. 狭い敷地・市街地でもCLTは使えますか? A. 使えますが、大判パネルの搬入経路とクレーンの設置スペースが課題になります。揚重・ヤードが取りにくい敷地では、運搬・施工の段取りコストが上振れしやすいので、敷地条件を踏まえてパネル割りや工法を検討します。

Q. 平屋の倉庫にCLTは向いていますか? A. 一般に過剰です。平屋・大スパンの倉庫は木質トラスや集成材梁のほうが合理的で、全面CLTは材料費だけ上がりやすい構成です。CLTは中層・現し・床水平構面で効きます。

まとめ

  • CLTは面で支える大判パネルで、床スラブ・中層耐力壁・現し意匠で効く
  • 材料単価が高いため「全部CLT」は割高。効く部位に使うハイブリッドが定石
  • 採用事例は「使った/使わない」でなく部位・木材使用割合・コスト影響で読む
  • 平屋・大スパン倉庫の全面CLTは過剰になりやすい
  • 林野庁のCLT建築実証事業など、補助の対象になる場合がある

CLTは正しく使えば、中大規模木造の幅を大きく広げます。CLTの採用可否や費用感をご検討中の方は、用途・規模・部位に応じた最適な工法選択からお気軽にご相談ください。

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