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木造の構造計算が必要な規模は?非住宅の基準とルートの違い

木造の構造計算が必要な規模は?非住宅の基準とルートの違い

※ 画像はイメージです

木造で構造計算(許容応力度計算=部材ごとに生じる力が材料の許容値を超えないかを確かめる計算)が必要になるのは、階数3以上、または延べ面積300㎡超の建物です(建築基準法第20条第1項第3号)。2025年4月1日施行の改正で、2階建て以下の木造の基準が「500㎡超」から「300㎡超」に引き下げられました。さらに高さ16m超または階数4以上の木造は、より高度な計算(ルート2以上)が必要です(同項第2号)。

この線引きは住宅か非住宅かでは変わりません。非住宅で変わるのは、用途ごとの積載荷重(床に載る人や物の重さ)や大きなスパン(柱と柱の間隔)など、計算の前提となる条件です。

【早見表】木造の規模と、必要な構造の確かめ方

2025年4月以降の木造建築物(高さ60m以下)の整理です。

木造の規模構造の確かめ方構造計算適合性判定(適判)根拠
平屋かつ延べ200㎡以下仕様規定(壁量計算・壁の配置・柱の小径など)不要法第20条第1項第4号
2階建て、または延べ200㎡超で、階数2以下かつ300㎡以下仕様規定。確認申請で構造関係の図書の提出が必要(新2号)不要同上、法第6条第1項第2号
階数3以上、または延べ300㎡超(高さ16m以下・階数3以下)許容応力度計算(ルート1)原則不要(大臣認定プログラムを使う場合は対象)法第20条第1項第3号、法第6条の3
高さ16m超、または階数4以上許容応力度等計算(ルート2・高さ31m以下)または保有水平耐力計算(ルート3)など必要(ルート2は、要件を備えた建築主事等・確認検査員の審査なら不要)法第20条第1項第2号、令第81条第2項、法第6条の3

※ 高さ60m超は時刻歴応答解析による国土交通大臣の認定が必要です(法第20条第1項第1号)。

「平屋・200㎡以下」「300㎡以下」「300㎡超」の3つの境目を押さえると、計画初期の判断がしやすくなります。確認申請の区分(新2号・新3号)は 4号特例の縮小はいつから? で整理しています。

住宅と非住宅で何が違うのか

構造計算が要るかどうかは規模(階数・延べ面積・高さ)で決まり、用途では決まりません。たとえば延べ250㎡の木造2階建ての事務所は、住宅と同じく仕様規定で確かめます。一方、延べ350㎡の平屋の倉庫は、住宅でも非住宅でも許容応力度計算が必要です。

非住宅で差が出るのは、計算に入れる荷重の前提です。

用途ごとの積載荷重(建築基準法施行令第85条)

積載荷重は「実況に応じて計算」が原則で、次の室は表の数値を使うことができます(単位:N/㎡)。

室の種類床の計算用大ばり・柱・基礎の計算用地震力の計算用
住宅の居室、住宅以外の寝室・病室1,8001,300600
事務室2,9001,800800
教室2,3002,1001,100
百貨店・店舗の売場2,9002,4001,300
集会室など(固定席でない場合)3,5003,2002,100
自動車車庫・自動車通路5,4003,9002,000
  • 倉庫は表にありません。実況に応じて計算し、倉庫業を営む倉庫は計算値が3,900N/㎡未満でも3,900N/㎡とします(令第85条第3項)。
  • 工場の作業場や機械室も表にないため、設置する機械・保管物の重さから実況で設定します。

大スパンと設備の重さ

店舗・倉庫・工場は柱の少ない大空間を求められることが多く、梁が長くなるほど、たわみや接合部の検討が重くなります。屋根に設備を載せる計画や、多雪区域で大きな屋根をかける計画では、積雪荷重や設備荷重が部材寸法を決めることもあります。これらは住宅の壁量計算では確かめられない項目です。

計算ルート(ルート1・2・3)の違い

ルート計算の内容主な対象(木造)根拠
ルート1許容応力度計算(各部の応力度が許容応力度以下か、屋根ふき材などの安全確認)階数3以上または延べ300㎡超で、高さ16m以下・階数3以下法第20条第1項第3号、令第82条・第82条の4
ルート2許容応力度等計算(ルート1に加え、層間変形角、各階の剛性率0.6以上、偏心率0.15以下などを確認)高さ16m超または階数4以上で、高さ31m以下令第81条第2項第2号、令第82条の2・第82条の6
ルート3保有水平耐力計算(大地震時に建物が崩壊しない耐力を直接確かめる)ルート2の条件を満たせない場合、高さ31m超など令第81条第2項第1号

旧来の「高さ13m・軒高9m」の基準は、2025年4月施行の改正で高さ16mに改められました。階数3以下・高さ16m以下であれば、天井の高い倉庫や体育館的な建物でもルート1の範囲に収まります。

構造計算適合性判定(適判)

適判は、確認申請とは別に都道府県知事(または指定構造計算適合性判定機関)が構造計算を審査する手続きです(法第6条の3)。

  • ルート1は原則として適判の対象外です。ただし国土交通大臣の認定を受けたプログラムで計算した場合は対象になります
  • ルート2・3は対象です。ルート2は、構造計算の専門的な要件を備えた建築主事等・確認検査員が審査する場合は適判を省けます(法第6条の3第1項ただし書、令第9条の3)

適判が入ると手続きと期間が増えるため、どの機関に申請するかも含めて早めに設計者と決めておきます。

誰が設計できるか(建築士法)

木造の建物設計できる建築士根拠
高さ16m超、または階数4以上一級建築士建築士法第3条第1項第2号
延べ1,000㎡超かつ階数2以上一級建築士同第4号
学校・病院・集会場・百貨店などで延べ500㎡超一級建築士同第1号
上記以外で、延べ300㎡超または階数3以上一級または二級建築士同法第3条の2

一級建築士が設計する建物のうち、法第20条第1項第1号・第2号(木造では高さ16m超または階数4以上など)に当たるものは、構造設計一級建築士の関与(自ら設計するか、法適合の確認を受けること)が必要です(建築士法第20条の2)。

構造計算を外注するときの確認事項

構造計算を外部の構造設計事務所に依頼する場合は、費用の総額だけでなく次の点を確かめます。費用は規模・ルート・架構の複雑さで大きく変わるため、複数の事務所に同じ条件で見積を取るのが確実です。

  • 木造の許容応力度計算の実績があるか(RC造・S造が中心の事務所もあります)
  • 計算ルート、適判の要否、申請先の機関について見解を示してくれるか
  • 確認審査での質疑(指摘への回答)への対応が見積に含まれるか
  • 基礎・地盤の検討を含むか(基礎設計の違い も参照)

【チェックリスト】計画初期に決めておくこと

  • 階数と延べ面積は? → 平屋200㎡以下/300㎡以下/300㎡超のどれか
  • 最高高さは16mを超えるか? → 超えるならルート2以上と構造設計一級建築士の関与
  • 用途は? → 積載荷重の表にある室か、実況で設定する室(倉庫・作業場)か
  • 最大スパンと、屋根・床に載る設備の重さは?
  • 多雪区域か?(特定行政庁の指定を確認)
  • 適判が要るか、要るならどの機関に出すか
  • 構造設計者は誰か、木造の実績はあるか

よくある質問

Q. 木造2階建て・延べ250㎡の事務所に構造計算は必要ですか。 A. 許容応力度計算は不要です(階数2以下・300㎡以下のため)。ただし新2号建築物なので、壁量計算などの仕様規定を満たし、構造関係の図書を確認申請に添付します。

Q. 平屋の倉庫でも構造計算が必要になりますか。 A. 延べ面積が300㎡を超えれば必要です(法第20条第1項第3号)。平屋かどうかは関係ありません。

Q. 2025年3月以前の「500㎡まで構造計算不要」は今も使えますか。 A. 使えません。2025年4月以降に工事に着手する建物には改正後の基準(300㎡超で構造計算)が適用されます。

まとめ

  • 木造で許容応力度計算が必要なのは階数3以上または延べ300㎡超(2025年4月施行)。用途では変わらない
  • 高さ16m超・階数4以上はルート2以上、構造設計一級建築士の関与が必要
  • 非住宅で変わるのは積載荷重・スパン・設備荷重など計算の前提。倉庫・作業場は実況で設定する
  • 適判の要否は、ルートと計算方法(大臣認定プログラムの使用)、審査する機関で決まる

※ 本記事は一般的な制度の説明です。個別の計画は、最新の法令と所管の特定行政庁・指定確認検査機関にご確認ください。

出典・参考

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