※ 画像はイメージです
2×4工法(枠組壁工法)でも、500坪(約1,650㎡)を超える非住宅は建てられます。 技術基準(平成13年国土交通省告示第1540号)の仕様どおりに設計する場合は、地階を除く階数3以下、耐力壁線(耐力壁が並ぶ線)の間隔12m以下、耐力壁線で囲まれた部分の面積40㎡以下(床の補強で60㎡、形状により72㎡)などの制限がありますが、構造計算で安全を確かめれば、これらの一部は適用されません。大規模化の要点は、構造計算と、延べ1,000㎡・1,500㎡・3,000㎡で変わる防火の規定です。
当サイトの施工事例では、HACCP対応の木造食品工場(2×4工法・準耐火構造・延床1,973㎡=約597坪・2階建)や、特別養護老人ホーム(2×4工法・準耐火60分・延床3,000㎡以内の2棟構成)を2×4工法で建てています。
2×4工法の技術基準と、構造計算による適用除外
2×4工法は、規格寸法の枠材に構造用合板などを打ち付けて壁と床をつくる工法で、技術基準は告示第1540号に定められています。大規模化に関係する主な規定は次のとおりです。
| 告示第1540号の規定 | 内容 | 構造計算を行った場合 |
|---|---|---|
| 第一 階数 | 地階を除く階数は3以下 | 第九の構造計算(保有水平耐力計算と同等以上)を行えば適用を除外できる(第十二) |
| 第五第六号 耐力壁線 | 耐力壁線相互の距離12m以下、囲まれた部分の水平投影面積40㎡以下(床版の補強で60㎡、短辺/長辺の比が1/2超なら72㎡) | 第十の構造計算で確かめれば適用しない |
| 第四 床版 | 2階以上の床版を鉄筋コンクリート造・直交集成板(CLT)にする場合、床ばり・トラスを使う場合などの扱い | 構造計算で安全を確かめれば、床版の仕様規定の一部を適用しない |
| 第二 材料 | 枠組材は規格品(寸法型式204=厚さ38mm×幅89mm、206=38mm×140mm など) | ― |
※ 告示第1540号は改正が重ねられています。適用する条文は最新の告示で確認してください(日本ツーバイフォー建築協会が改正の情報を公開しています)。
つまり、大スパン・大面積の2×4は「構造計算で確かめる」ことが前提です。建築基準法でも、木造で階数3以上または延べ300㎡超の建物は許容応力度計算が必要です(第20条第1項第3号)。500坪規模なら必ず構造計算の対象になります(木造の構造計算が必要な規模は?)。
【早見表】規模で変わる規制の境目
| 延べ面積・規模 | 主にかかる規定 | 根拠 |
|---|---|---|
| 300㎡超、または階数3以上 | 許容応力度計算(構造計算)が必要 | 建築基準法第20条第1項第3号 |
| 1,000㎡超 | 1,000㎡以内ごとに防火壁・防火床で区画。耐火建築物・準耐火建築物なら不要 | 第26条 |
| 1,000㎡超(木造) | 外壁・軒裏の延焼のおそれのある部分を防火構造に | 第25条 |
| 1,500㎡超(準耐火建築物など) | 1,500㎡以内ごとに防火区画(自動式スプリンクラーを設けた部分は床面積の1/2を除いて計算。工場などで用途上やむを得ない部分は除く) | 施行令第112条第1項 |
| 3,000㎡超 | 耐火構造など、周囲への延焼を防ぐ性能。壁等で区画した部分は別の建築物とみなせる | 第21条第2項・第3項 |
| 階数4以上・高さ16m超 | 耐火構造など(告示の措置で緩和あり)、構造計算はルート2以上 | 第21条第1項、第20条第1項第2号 |
このほか、用途が特殊建築物(店舗・福祉施設・倉庫など)なら第27条、敷地が防火地域・準防火地域なら第61条の要求が別にかかります。判定は 木造の耐火・準耐火の基準|法27条・61条の用途×規模早見表 で行えます。
500坪(約1,650㎡)規模で多いのは、準耐火建築物にして防火壁を不要にし、1,500㎡ごとに防火区画する計画です。当サイトの食品工場の事例(延床1,973㎡)も準耐火構造です。
2×4工法の構造の特徴|面で支える
2×4工法は、壁・床・屋根の面(パネル)で建物を支える構造です。柱と梁の線で支える在来軸組工法と違い、地震や風の力を壁全体で受けます。
- 力が面全体に分散する:特定の部材に力が集中しにくい
- 壁で耐力を確保する:耐力壁の量と配置が構造の要
- 部材が規格化されている:枠材の寸法・くぎの種類と間隔が告示で決まり、施工の品質を揃えやすい
一方で、壁で耐力を取るため、壁の少ない大空間をつくるには、トラスや梁、構造計算による検討が必要になります。
大スパン・大面積を実現する方法
| 方法 | 内容 | 当サイトの事例 |
|---|---|---|
| 木質トラス | 屋根・床に三角形を組み合わせた架構を使い、柱のない空間をつくる | 製材工場・ストック倉庫群:LVLトラスで最大スパン約12m(延床約1,160㎡=約350坪) |
| LVLなどの梁 | LVL(単板積層材)や集成材の梁で開口部・大スパンを受ける | 食品工場:ベイマツLVLで10m超のスパン |
| 枠材の寸法を上げる | 206・208などの大きい寸法型式の枠材で、壁の耐力・断熱層を確保 | ― |
| 床をCLT・RC造にする | 2階以上の床版に直交集成板や鉄筋コンクリート造を使う(構造計算で確認) | ― |
| 防火区画・別棟扱い | 3,000㎡超は壁等で区画して別の建築物とみなす、2棟に分けるなど | 特別養護老人ホーム:3,000㎡以内の2棟構成 |
スパンの目安と、スパンを決める条件は 木造の柱スパンは何mまで? で整理しています。
使える木質材料
| 材料 | 特徴 | 主な使用部位 |
|---|---|---|
| LVL(単板積層材) | 薄い単板を繊維方向をそろえて積層接着。JAS規格品 | まぐさ、梁、トラス |
| 構造用集成材 | ひき板を積層接着した大断面材。JAS規格品 | 梁、柱 |
| 木質接着成形軸材料・木質複合軸材料 | 告示第1540号で使用が認められている材料区分(I形の梁など)。国土交通大臣の認定品を使う | 床梁、屋根の垂木など |
| CLT(直交集成板) | ひき板を直交に積層接着した大判パネル。JAS規格品 | 床版など(CLT建築とは?) |
在来軸組工法・SE構法との比べ方
| 比べる点 | 2×4工法 | 在来軸組工法 | SE構法 |
|---|---|---|---|
| 力の受け方 | 壁・床の面 | 柱・梁と耐力壁 | 柱・梁を金物で接合した骨組み |
| 技術基準 | 告示第1540号 | 建築基準法施行令 第3章第3節 | 提供会社の仕様(構造計算で確認) |
| 向く空間 | 壁の多い事務所・福祉施設・共同住宅。トラス・梁で大空間も | 間取りの自由度が必要な建物 | 柱の少ない大空間 |
| 断熱 | 枠の間に断熱材を充填しやすい | 筋かいとの取り合いに注意 | 仕様による |
| 施工体制 | 枠組壁工法の施工に慣れた会社 | 一般的 | 登録施工店 |
坪単価・工期は、用途・規模・仕様で変わるため、工法名だけでは比べられません。同じ計画で見積を取って比べてください。用途別の坪単価の目安は 建築の坪単価一覧、工法全体の比較は 中大規模木造の工法比較 にまとめています。
【チェックリスト】2×4で500坪超を計画するときの確認事項
- 用途(特殊建築物か)・敷地の防火指定から、耐火・準耐火の要否を判定した
- 延べ面積が1,000㎡・1,500㎡・3,000㎡のどこに当たり、防火壁・防火区画をどこに入れるか決めた
- 防火区画の位置と、間取り・設備の配置が両立するか確認した
- 必要なスパンと、トラス・LVL梁・CLT床などの架構を決めた
- 告示第1540号の仕様規定のうち、構造計算で適用除外にする規定を構造設計者と整理した
- 2×4工法の構造計算に慣れた構造設計者と、確認申請のスケジュールを決めた
- パネル・トラスの製作工場、搬入経路、クレーンの配置を施工計画に入れた
- 複数の工場でパネルを製作する場合、品質管理の方法を揃えた
よくある質問
Q. 2×4工法で4階建ては建てられますか。 A. 告示第1540号の仕様規定では地階を除く階数3以下ですが、告示の第九に定める構造計算を行えば、階数の規定を適用除外できます。あわせて第21条の耐火の要求(階数4以上)と、構造計算ルート2以上が必要です。木造4階建ては建てられる? も参照してください。
Q. 2×4工法で柱のない大空間はつくれますか。 A. 木質トラスやLVLの梁を使い、構造計算で確かめればつくれます。当サイトの事例では、LVLトラスで最大スパン約12mの工場・倉庫を建てています。
Q. 延べ3,000㎡を超える計画は2×4でできますか。 A. 3,000㎡を超えると第21条第2項で耐火構造などの要求がかかります。壁等で区画して別の建築物とみなす方法や、棟を分ける方法もあります。当サイトの特別養護老人ホームの事例は、3,000㎡以内の2棟構成です。
まとめ
- 2×4工法でも、構造計算と防火の設計で500坪超の非住宅を建てられる
- 告示第1540号の仕様規定(階数3以下・耐力壁線12m/40㎡など)は、構造計算で一部を適用除外できる
- 防火の境目は1,000㎡(防火壁)・1,500㎡(防火区画)・3,000㎡(耐火など)。準耐火建築物にすれば防火壁は不要
- 大空間は木質トラス・LVLの梁・CLT床などで計画する
- 当サイトの事例:食品工場 延床1,973㎡(約597坪)、特別養護老人ホーム 3,000㎡以内の2棟構成
※ 本記事は一般的な制度の説明です。個別の計画は、最新の法令・告示と所管の特定行政庁・指定確認検査機関にご確認ください。
出典・参考
- 平成13年国土交通省告示第1540号(枠組壁工法又は木質プレハブ工法を用いた建築物の構造方法に関する技術的基準)、令和2年8月28日改正版の全文|一般社団法人日本ツーバイフォー建築協会 https://www.2x4assoc.or.jp/technology/confirmation/file/1540_r020828-kaisei.pdf
- 一般社団法人日本ツーバイフォー建築協会「平成13年 国土交通省告示 第1540号の改正に係る告示」 https://www.2x4assoc.or.jp/technology/confirmation/1540-1541.html
- 建築基準法(第20条、第21条、第25条、第26条、第27条、第61条)|e-Gov法令検索 https://laws.e-gov.go.jp/law/325AC0000000201
- 建築基準法施行令(第112条)|e-Gov法令検索 https://laws.e-gov.go.jp/law/325CO0000000338
- 国土交通省「ここまでできる木造建築のすすめ 防・耐火の法規制」 https://www.mlit.go.jp/jutakukentiku/house/content/001876987.pdf

