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設計事務所に払う設計料は、国土交通省の業務報酬基準(令和6年国土交通省告示第8号)では、工事費に対する率ではなく、設計にかかる業務量(人・時間)に人件費単価を掛け、経費・技術料等を足して算定するのが標準です。実務では「工事費の5〜10%程度」という目安で語られることも多いものの、これは公的な基準ではなく一般的な目安です。
コストを抑えるVE(バリューエンジニアリング=必要な機能を保ったまま、より低いコストで実現する方法を探す手法)は、基本設計の段階で行うほど効果が大きくなります。実施設計が進んでからの変更は、告示でも標準業務とは別の「設計の変更に伴い発生する業務」として追加の報酬の対象になり得ます。
設計料はどう決まるか|業務報酬基準の考え方
業務報酬基準は、建築士法第25条にもとづき、建築主と建築士事務所が契約するときの報酬算定の目安として国が定めたものです(令和6年1月9日公布)。算定方法は2つあります。
| 方法 | 考え方 |
|---|---|
| 実費加算方法 | 直接人件費・特別経費・直接経費・間接経費・技術料等経費・消費税相当額を個別に積み上げる |
| 略算方法 | 建物の用途・規模ごとに告示の略算表で定めた標準業務量(人・時間)から直接人件費を出し、経費・技術料等を加える |
略算方法は標準業務(基本設計・実施設計・工事監理などの一般的な業務)が対象です。告示別添四は、標準業務に付随する追加的な業務の例として、次のようなものを挙げています。
- 企画・事業計画の調査検討
- 法令にもとづく許認可等に関する業務
- 補助制度の活用に関する業務
- 施工費用の検討及び算定等に関する業務
- 設計の変更に伴い発生する業務
つまり、補助金の申請支援、コスト検討、途中の設計変更は、標準の設計料に含まれていないことがあるということです。見積を比べるときは、これらが含まれているかを必ず確認してください。
設計料の一般的な目安
実務では、設計料を工事費に対する割合で見積の目安にすることが多く、工事費の5〜10%程度(工事監理を含むかで変わる)がよく使われる目安です。規模が小さい案件ほど率は高くなる傾向があります。法規チェックや構造計算、確認申請の手間が、規模に比例して減るわけではないためです。
※ 上の割合は公的な基準ではなく、一般的な目安です。実際の額は、業務範囲(意匠・構造・設備・工事監理・申請・補助金対応など)と事務所ごとの算定で決まります。
設計事務所に依頼する範囲
| 領域 | 内容 | 非住宅木造での注意点 |
|---|---|---|
| 意匠設計 | 配置・平面・外観、避難経路・採光など法規への適合 | 用途による防火・避難の要求を読み込む |
| 構造設計 | 構造計算、構造図 | 木造は階数3以上または延べ300㎡超で構造計算が必要(建築基準法第20条) |
| 設備設計 | 空調・電気・給排水・消防設備 | 用途により消防用設備が大きく変わる |
| 工事監理 | 工事が設計図書のとおりか確認し、建築主に報告 | 設計とは別契約にすることもある |
構造・設備は、意匠の設計事務所から専門の事務所に外注されることが一般的です。ただし建築士法は、延べ300㎡を超える建物の新築の設計・工事監理を、一括して他の事務所に再委託することを禁じています(第24条の3第2項)。誰がどの範囲を担当するのかは、契約前に書面で確認してください。
設計できる建築士の資格
| 木造の建物の規模(新築) | 設計・工事監理ができる建築士 | 根拠(建築士法) |
|---|---|---|
| 高さ16m超、または階数4以上 | 一級建築士 | 第3条第1項第2号 |
| 延べ1,000㎡超かつ階数2以上 | 一級建築士 | 第3条第1項第4号 |
| 学校・病院・劇場・映画館・観覧場・公会堂・集会場(オーディトリアムのあるもの)・百貨店で延べ500㎡超 | 一級建築士 | 第3条第1項第1号 |
| 上記以外で延べ300㎡超、または階数3以上 | 一級または二級建築士 | 第3条の2 |
契約で押さえること|300㎡超は書面が義務
建築士法では、設計・工事監理を受ける建築士事務所は、契約前に管理建築士等から重要事項説明(書面の交付と説明)を行わなければなりません(第24条の7)。さらに延べ300㎡を超える建物の新築では、次の事項を書面に記載して相互に交付することが義務です(第22条の3の3)。
- 作成する設計図書の種類
- 工事監理の方法(工事と設計図書の照合の方法、報告の方法)
- 担当する建築士の氏名と資格(一級・二級・木造、構造設計一級・設備設計一級の別)
- 報酬の額と支払の時期
- 契約の解除に関する事項
契約内容を変更するときも、変更内容を書面で交付します(同条第2項)。「設計変更の追加費用」でもめないためには、変更時の報酬の算定方法をこの時点で決めておくのが確実です。
VE(バリューエンジニアリング)を効かせる進め方
VEは、日本バリュー・エンジニアリング協会の定義では、価値(V)を機能(F)とコスト(C)の関係(V=F/C)でとらえ、必要な機能を最も低いライフサイクルコストで実現する手法です。単なる値引きや仕様の格下げではなく、「その部分に求められる機能は何か」から代替案を出す点が違います。
| 段階 | VEの効果 | 工務店がやること |
|---|---|---|
| 企画・基本設計 | 最も大きい。構造形式・スパン・階高・外装の方向性を変えられる | 工法(2×4・在来など)、スパン、規格材で納まる寸法を提案する |
| 実施設計 | 中程度。仕上げ・設備・納まりの見直し | 概算見積を入れ、予算との差を早めに示す |
| 着工後 | 小さい。変更は手戻り・追加費用になりやすい | 設計変更の手続きと費用負担を確認してから進める |
集合住宅や福祉施設のように同じ部屋が繰り返される建物では、1住戸(1室)あたりの仕様の見直しが戸数分効くため、基本設計段階のVEの効果が大きくなります。「この仕様ならいくら下がるか」を、根拠の見積と一緒に提案してください。
VEの結果として設計図書を描き直す場合、その作業は告示の「設計の変更に伴い発生する業務」に当たり得ます。誰の要望によるVEか、追加の設計料が発生するかを、提案の前に設計事務所とすり合わせておきましょう。
設計事務所の選び方
- 非住宅木造の実績: 住宅の実績が豊富でも、非住宅木造は防火・避難・構造計算の論点が違います。同じ用途・規模の実例を見せてもらいましょう
- 構造設計の体制: 自社で木造の構造計算ができるか、外注先はどこか。採用する工法(2×4・金物工法など)に慣れているか
- 所在地と監理の頻度: 遠方の事務所は交通費が加わり、現場確認の頻度も限られます。監理の頻度と費用を先に確認します
- 施工者との連携スタイル: 施工側の意見を設計に取り入れる事務所の方が、VEが通りやすくなります
連携をスムーズにする5つのポイント
- 初回打合せの資料を揃える: 施主の要望、予算の上限、敷地情報、想定する工法・仕様をまとめて渡す
- 定例の打合せと議事録: 基本設計・実施設計の段階ごとに頻度を決め、決定事項を議事録で共有する
- VEは基本設計段階で: 上の表のとおり、早いほど効果が大きく手戻りが少ない
- 施工図と設計図の整合: 設備配管と構造部材の干渉は頻出。着工前に施工図を設計者にチェックしてもらう工程を入れる
- 工事監理の範囲を明確に: 現場確認の頻度、構造躯体の確認、竣工時の確認の有無を契約書面に残す
【チェックリスト】設計契約の前に確認すること
- 業務範囲(意匠・構造・設備・工事監理・確認申請・補助金対応)のうち、どこまでが設計料に含まれるか
- 延べ300㎡超の新築なら、第22条の3の3の事項を記載した書面を交わすか
- 重要事項説明を受けたか(担当建築士の資格・報酬・解除条件)
- 構造・設備を外注する場合、その事務所名と担当範囲
- 設計変更・VEによる描き直しの報酬の算定方法
- 基本設計完了・実施設計完了・確認申請提出の予定日
- 工事監理の頻度と報告方法
よくあるトラブルと回避策
| トラブル | 原因 | 回避策 |
|---|---|---|
| 設計変更の追加費用 | 変更時の報酬の決め方が無い | 契約書面で変更時の算定方法を決め、変更のたびに書面で合意する |
| スケジュールの遅延 | 図面の完成時期があいまい | 基本設計・実施設計・申請の予定日を契約時に決める |
| 施工しにくい設計 | 基本設計に施工者の意見が入っていない | 基本設計段階で施工者レビューを工程に入れる |
| 予算超過 | 仕様が少しずつ上がる | 実施設計の途中で概算見積を入れ、VEで調整する |
契約段階の注意点の全体は 工事請負契約で注意すべきこと にまとめています。
まとめ
- 設計料は業務報酬基準(令和6年国交省告示第8号)では業務量ベースで算定するのが標準。「工事費の5〜10%」は一般的な目安にとどまる
- コスト検討・設計変更・補助金対応は追加的な業務として別料金になることがある
- 延べ300㎡超の新築は、設計・工事監理契約の書面交付が義務(建築士法第22条の3の3)。一括再委託も禁止
- VEは基本設計段階で行う。繰り返しの多い集合住宅・福祉施設ほど効果が大きい
非住宅木造の構造計算の全体像は 非住宅木造の構造計算、確認申請の費用は 建築確認申請の費用は誰が払う? を参照してください。設計体制を含めたご相談は 無料相談 からどうぞ。
※ 本記事は一般的な制度の説明です。報酬額や業務範囲は個別の契約で決まります。具体的な契約は、最新の法令・業務報酬基準と契約相手の説明でご確認ください。
出典・参考
- 建築士法(第3条、第3条の2、第22条の3の3、第24条の3、第24条の7、第25条)|e-Gov法令検索 https://laws.e-gov.go.jp/law/325AC1000000202
- 建築基準法(第20条)|e-Gov法令検索 https://laws.e-gov.go.jp/law/325AC0000000201
- 国土交通省「設計、工事監理等に係る業務報酬基準について」 https://www.mlit.go.jp/jutakukentiku/build/jutakukentiku_house_tk_000082.html
- 国土交通省「新しい業務報酬基準(令和6年国土交通省告示第8号)について」説明資料(PDF) https://www.mlit.go.jp/jutakukentiku/build/content/001726736.pdf
- 国土交通省「業務報酬基準ガイドライン」(PDF、告示別添四を収録) https://www.mlit.go.jp/jutakukentiku/build/content/001726104.pdf
- 公益社団法人日本バリューエンジニアリング協会「VEとは」(業界団体) https://www.sjve.org/vecan/ve
- 設計料の割合:公的な基準ではなく、一般的な目安(民間の情報)です

